宇宙環境での生活実現を彷彿とさせる食関連の取り組み3つ
2020-10-23 19:30:40
月面など、人類が宇宙で生活する日は着々と近づいています。しかし、地球環境とは大きく異なる環境において、「食」はどのように営まれていくのでしょうか。その宇宙での食生活の一端を感じ取ることができ、イメージが膨らむ取り組みやアイテムの開発などが行われています。
そこで今回は、地球と宇宙の食の課題を解決する共創プログラム「SPACE FOODSPHERE」に参画している企業の取り組みやアイテムを3つ紹介します。
■「SPACE FOODSPHERE」とは
「SPACE FOODSPHERE(スペースフードスフィア)」は、リアルテックホールディングス株式会社と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構が、多種多様な50以上の企業、大学、研究機関等のキーマン、プロフェッショナルたちと共に取り組んでいる、地球と宇宙の食の課題解決を目指す共創プログラムです。
月面基地における「循環」「地産」「QOL向上」の実現を目的として、2040年代に月面基地に1,000人が居住することを想定し、分野横断的、かつ有機的な連携による研究開発や事業創出に向けた活動を推進しています。
すでにさまざまな企業や団体が製品を開発しているのを目の当たりにすると、未来の宇宙での生活を彷彿とさせ、期待が高まります。
■「SPACE FOODSPHERE」の取り組み・アイテム3選
今回は、その「SPACE FOODSPHERE」に参画する企業の取り組みや、開発したアイテムを3つ紹介します。
1.月面の砂と同組成の模倣土から作るガラス(東洋製罐グループ)
総合包装容器メーカーの東洋製罐グループが、食器を想定したガラスを開発しました。
東洋製罐グループは、SPACE FOODSPHEREにおいて、宇宙環境での生活を容器の領域でサポートすることを検討しています。
月面で使うモノは月面から材料を得て作る。いわゆる容器の地産地消ならぬ「月産月消」を目指し、容器に活用するガラスを月面の砂と同組成の模倣土から作り上げました。
このガラス化の成功により、地球の枯渇資源を使用することなく、ガラス容器を月で生産できる可能性があることが判明。ガラス容器は、高温で溶かすことで繰り返し再生できるため、高いリサイクル率の実現もしているそうです。
生成に成功したガラスが、光沢のある濃い黒色をしているのは、鉄分が多く含まれているからだといいます。
ガラスの生成過程において鉄などの不純物を取り除く地球上の技術を応用することで、宇宙空間でガラスだけではなく鉄も生成できる可能性があるそうです。
将来的には、太陽光の熱などを使ってガラスを作るなど宇宙ならではの製造方法の模索や実験を行い、新たなイノベーションを目指すといいます。
2.宇宙日本食「マヨネーズ」(キユーピー)
キユーピーもSPACE FOODSPHEREに参画しています。
2020年9月、JAXA認証 宇宙日本食「マヨネーズ」が、野口聡一宇宙飛行士の携行品として、JAXAから公表されました。
このマヨネーズは、野口聡一宇宙飛行士の約6ヵ月間に渡る国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションの携行品として使用されるといいます。
キユーピー マヨネーズはすでに2007年6月、日本国内で製造された初の「宇宙日本食」の一つとしてJAXAから認証されて以来、13年間提供を続けています。
今回の宇宙日本食「マヨネーズ」は、中身は「キユーピー マヨネーズ」と同じ。おいしさを長く維持できるよう、植物油に溶け込んでいる酸素を除去した「おいしさロングラン製法」で製造し、製造工程中の酸素を減らすなど、数々の工夫がされています。
キャップとボトルには、面ファスナーが装着されており、使用時にキャップをボトルに貼り付けたり、宇宙船内に貼り付けたりすることで、無重力空間でも扱いやすいようになっているといいます。
宇宙でも日本の味を味わえるというのは、宇宙飛行士にとってもありがたいでしょう。
3.月面で利用可能な調味料プリンター「Colony(コロニー)」(ルナロボティクス)
株式会社ルナロボティクスは、調味料プリンターの開発を行う会社です。
2020年8月26日に開催された一般社団法人SPACE FOODSPHERE主催「SPACE FOODSPHERE CONFERENCE 2020」において、月面で利用可能な、無数の味を距離を越えて創り出す調味料プリンター「Colony(コロニー)」の最新実機デモが初展示されました。
「Colony(コロニー)」は、複数のカートリッジ(調味料)をポンプで組み上げブレンドするもの。これまでのキッチン家電、トースター・電子レンジ・炊飯器などは「火加減」のみを扱うものですが、この調味料プリンターcolony(コロニー)は世界初の「味付け」に特化した家電だといいます。
さまざまなコラボで無限の可能性も秘めています。
例えば、カット食材にcolonyの調味料をかけてチンするだけで美味しいごはんができる「colony × 電子レンジ」、colonyで出した調味料をかけて加熱するだけで数10種の本格的なメニューを提供する「colony × ミールキット」、地球に居る家族と、月面に居るパパがcolonyとホログラムで同じ食事と食卓を共有する「colony × ホログラム」などのアイデアがあるそうです。
調味料プリンターという新しい家電は、ぜひ地球でも使いたいものですが、月面での利用もできるというのは驚きですね。
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宇宙での食生活がイメージされる3つの取り組みやアイテムをご紹介してきました。月面で暮らす日が訪れるのは、そう遠い未来ではない気がしてきますね。
【参考】
SPACE FOODSPHERE (https://spacefoodsphere.jp/)
情報提供元: マガジンサミット