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都会で働く人は知っておくべき「遠距離介護」

2016-10-08 12:00:30


執筆:Mocosuku編集部
「実家の親を介護しなければならなくなったら」。
そう不安を抱く都心暮らしの人は多いのではないでしょうか。
特に実家が都心から離れていればいるほど、行き来しながらの介護は難しく、仕事をやめて実家で介護することも選択肢に入ってきます。いわゆる「介護離職」です。
それは現在企業側の問題点として話題になることは多いですが、実は本人や家族にとってもリスクが高いのが実情です。
そうした人たちに新たな可能性を見出す選択肢が、「 遠距離介護 」です。

「遠距離介護」は介護のアウトソーシング


「介護離職」をせずに、離れた実家の親などの介護を進める。それが「遠距離介護」です。
そしてそれは、実家周辺の介護サービスの事業者を中心に介護をアウトソーシング(外注)することを指します。ただ、すべてを外注するのではなく、必要な介護全体を把握し、そのなかで自分でできることとできないことを整理していくことが大切です。
実際に自分が現場で介護に関わることができないわけですから、介護に必要な実際の介助は、現地の介護事業者に依頼することになります。そして家族は、それ以外にもすべきことがあります。
まず、日々のコミュニケーション。介護される側の体調や気分などを把握するのも、立派な介護のひとつです。
電話やメールなどで日々連絡し、何気ない会話をしながらでも、親の状態を常に把握することが大切です。
次に、現場で行われる介護をコーディネートすること。介護事業者にはケアマネージャーというコーディネートのプロがいますが、そのなかでも医療面の判断や介護を受ける側の気持ちなど、家族でしか判断・把握できない要素が、介護プランのなかには多く存在します。
離れているからこそ、積極的に介護プランを提案し、少しでも快適に、かつ介護事業者もストレスなく介護できる段取りや情報の準備をしましょう。
そして、お金を稼ぐこと。
お金があればある程度の介護の品質を保証することはできるのです。しっかり仕事をして金銭面を安定させる、というのも「遠距離介護」における重要な要素と言えるでしょう。

仲が良くない親子だからこそ「遠距離介護」


実は「遠距離介護」にはメリットもあります。それは、仲が良くない親子が無理に顔を合わせずに介護ができる、ということです。
「親の介護を子どもがするのは当たり前」と言われますが、世の中の親子がすべて良好な関係ではなく、なかには在宅介護を経て親子関係が悪くなり、結果、施設介護にした、という例もあります。
「遠距離介護」はそういう親子が一定の距離を保ちながら介護ができる道でもある、と頭に入れておくのもいいでしょう。
もちろん離れているとはいえ、親が介護されている訳ですから、日々何かしらの変化や問題が起き、その現状把握や連絡確認、次の行動への判断など、介護に割かれる時間も労力も少なくはなく、「遠距離介護」ならではの苦労や悩みがあるのもまた事実です。

介護離職のリスクは多種多様


冒頭でも触れましたが、遠距離に暮らす親の介護に直面したときに考えるのが、「介護離職」です。そのリスクについて整理していきましょう。
「介護離職」とは「介護をするための時間を確保するために職を離れる」ことです。離職先が正社員雇用であった場合、よほどの問題がない限り中長期的な収入は保障され、社会保障なども充実していたわけです。それを多少の退職金と引き換えに、ほぼ全て失うということになります。
収入を確保するために、再びパートやアルバイトの仕事をはじめる場合もありますが、正社員雇用に比べ収入も少なく、雇用の安定性もありません。
いずれにしても、収入が大幅に減少し、蓄えがなければ不安定化することになります。
そして介護を経験した人、現場を知る人がほぼ間違いなく口にするのが「介護にはお金がかかる」という実態です。「介護離職」のケースの大半は、自宅で介護をする「在宅介護」になるわけですが、訪問介護などの介護費、おむつなどの日用品にかかる費用、食費などが、これまでの生活に加わります。
しかも介護には終わりが見えません。いつまで続くか分からない介護において、収入は少しでも多い方がいいのは明らか。そのなかで収入源を絶つリスクは、非常に大きいことがわかるでしょう。
ならば「また正社員雇用を探す」と言っても、特に中高年で離職する場合など、その年齢で正社員で雇用されるのは非常に厳しいでしょう。一度やめてから後戻りできないのも、「介護離職」につきまとう大きなリスクと言えます。

「介護離職」は企業の損失でもあるため、働く人は「 遠距離介護 」がしやすいの?


近年は「介護離職」が企業側の損失でもあるという考えから、企業側も介護に理解を示し、大企業を中心に「介護休業制度」などを導入、「遠距離介護」がしやすい環境がで少しずつ出来てきました。
また「遠距離介護」を専門にサポートするNPO法人『パオッコ』などのサポート組織もあり、「 遠距離介護 」の経験者の話を聞いたり、専門家によるアドバイスを受けることもできます。
介護は誰にとってもふいに訪れます。それに備え「遠距離介護」について深く勉強しておくのもいいかもしれません。
【参考】
NPO法人 パオッコ http://paokko.org/

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情報提供元: mocosuku

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