「和食はヘルシー」は本当?管理栄養士が解説
2016-10-19 18:30:42
執筆:桜 イクミ(管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト)
平成25年12月、日本の和食が「ユネスコ世界無形文化遺産」に登録されました。以来、もともと欧米で人気のあった和食は、世界中から注目されるようになりました。
とくに、見た目の美しさや自然志向とともに、ヘルシーなイメージを強くもたれているのが特徴です。
実際に和食はどのような点がヘルシーなのでしょうか。
和食の特徴
日本は国土が細長く豊かな自然が広がっているため、各地域に根差したさまざまな食材や、素材を活かした食習慣があります。そのため、ひとくちに和食といっても、型にはまった食事を示しているわけではありません。
それでも、比較的共通しているのは「一汁三菜」という食事スタイルと、「うま味」を利用して調理していることです。
また、食事を通して自然の美しさや四季を表現していること、そしてそのために食材だけでなく、食器などに装いをこらしているのも特徴です。さらに、年中行事とも密接に関わっていて、家族や地域の絆を深める役割も果たしてきました。
こうした和食の豊かな食文化が認められ、ユネスコ世界無形文化遺産に登録されったのです。
和食がヘルシーな4つの理由
和食のどのような点がヘルシーなのでしょうか。次の4つの「理由」が挙げられます。
その1:脂質が少なく、過剰なエネルギーを控える
欧米型の食事は伝統的に肉類を中心とした食事で、脂質も多く、エネルギー(カロリー)も高いです。
比べて和食は、米などを中心とする穀類、野菜類、魚介類といったエネルギーが低い食材を好んで使用している点が、肥満や糖尿病など、過剰なエネルギー摂取による病気を生んでいる飽食の現代ではヘルシーです。
しかも、生食、煮る、ゆでる、焼く、和えるなど多様な調理法が充実しています。
このような調理法を上手く活用することで、油の使用量を抑えて、結果的にエネルギーを少なくすることができます。
その2:一汁三菜という基本スタイル
和食には「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」という基本スタイルがあります。
「一汁三菜」とは、主食のごはんに加えて、汁物が一品と、主菜一品と副菜二品をそろえた献立の構成のことです。具体的には、汁物は味噌汁やすまし汁など、主菜は魚・肉・卵・大豆製品を用いた料理、副菜は野菜・海藻類・きのこ・いも類などを使用した料理のことです。
ちなみに古来、三菜は「なます・煮物・焼き物」を指していました。このような現代版一汁三菜をそろえることで、栄養学的には、三大栄養素と呼ばれる炭水化物・タンパク質・脂質を理想的なバランスでとることができます。
これが、ヘルシーといわれる理由の一つです。
また、副菜は単なる「脇役」ではありません。和食の副菜は充実していて、多くの食材をとることができ、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどをしっかりと補える利点をもっています。
その3:素材を活かしたうま味の利用
和食の味を特徴づける技術のひとつに「うま味」の活用があります。
おもに昆布や鰹節、煮干しなどを使用した「だし」には、必ずうま味成分が入っています。このように、だしを料理に使用することで、素材の味を活かしておいしくいただくことができますし、何より調味料の量を減らすことができます。
過剰な調味料の摂取を抑えることは、塩分や糖分の量を減らし、高血圧やその他の生活習慣病の予防につながるので、ヘルシーに料理を仕立てることができます。
その4:腸内環境を改善する発酵食品
発酵食品には、殺菌作用や、腸内の悪玉菌と善玉菌のバランスを整え、腸内環境を改善する作用があります。
世界の料理にも、チーズ、ヨーグルト、キムチ、ザーサイなど必ず有名な発酵食品がありますが、和食の場合は醤油や味噌などの調味料や納豆などが、代表的な発酵食品といえます。
和食も完ぺきにヘルシーではない!
このように世界も認めたヘルシーな和食ですが、実は弱点があります。
今、その改善を叫ばれているのが「塩分」の問題です。和食といえば、これまた必ず登場する「塩、醤油、味噌」などの調味料が、塩分の摂りすぎに一役買っているのです。
ちなみに、世界保健機構(WHO)の食塩摂取目標は1日5グラムですが、2015年に厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」では、2014年現在で、成人一日あたりの塩分平均摂取量は、男性10.9グラム、女性9.2グラムでした。とくに年配になるほど塩分摂取量が増え、いわゆる「濃い」味つけが好まれています。
こうした傾向は、今後、和食や日本人の食生活が変わっていく必要があるところでもあります。
近頃コンビニやスーパーでは醤油や味噌などに「減塩」とうたわれる商品を見かける機会が多くなりました。
これらが広く世の中に定着し、塩分の摂りすぎがクリアされたと時、和食はいよいよ完ぺきにヘルシーなものだ、と言えるようになるかもしれません。
<執筆者プロフィール>
桜 イクミ(さくら・いくみ)
管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト
株式会社 とらうべ 社員。病院での栄養管理・栄養指導の経験を経て、現在は企業で働く人の食と健康指導を行っている。
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情報提供元: mocosuku