うつ伏せ、仰向け、横向き。良い寝方はどれ?
2016-11-04 18:30:32
執筆:南部 洋子(助産師、看護師)
朝、目が覚めたとき、すっきり起きれる時とぐったりしてしまう時がありますよね。
こんな朝の目覚めに関係しているが、寝ているときの姿勢です。
はたして「良い寝方」とはどのような姿勢なのでしょうか?すっきり目覚めたいあなたのために「良い寝方」について解説しようと思います。
睡眠時の姿勢はぐっすり寝るためのポイント
ヒトが生きていくうえで必要不可欠な睡眠。体調が悪い時でも、とにかくぐっすり眠れば元気が出る、ということは多いものです。
逆に、ゆっくり眠れなかったりすると頭痛、倦怠感、食欲不振など不定愁訴が起きてしまいます。
睡眠をしっかりとるためのポイントの1つに「眠っているときの姿勢」があります。
多くの人は、子どものころからの習慣で、大人になっても同じ体勢で寝ている場合が多いようです。たとえば、入眠時の姿勢。いつも同じ姿勢になっていませんか?
この入眠時の姿勢について、「自分の癖」と思っている方も多いことでしょう。ところが、実は腰や膝の痛みなど、身体の具合で同じ姿勢になっているのかもしれません。
また、睡眠時の環境も同じ姿勢になる要因のひとつです。枕や布団の硬さによっては、体勢が固定されてしまう場合もあるのです。
意外に知られていない!?寝返りの効果
健康な人であれば、寝ている間に寝返りをしています。
1日に20~30回が健康的とされていて、それより多くても少なくても「熟睡できていない」と考えてよいでしょう。
ヒトは同じ姿勢で長時間寝ていると、体重がかかる部位の血管が圧迫されて血流が滞りやすくなります。
寝返りは、このときにかかる重力を分散させて、身体にかかる負担を防いでいるのです。また、肩や腰にかかる力を分散させ、肩こりや腰痛を防いでいるともいえます。
さらに、寝返りには熱や湿度を逃がして、布団内の温度調節する働きもあります。くわえて、寝返りが睡眠リズムを作るきっかけにもなっています。
なぜならば「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の切り替わりの時に寝返りを打つことが多いからです。
寝る時の正しい姿勢は…
ここまでお話したように、健康であれば誰しも寝返りを打っています。ですから、ずっと同じ姿勢で寝ているわけではありません。
ではその中でも正しい睡眠時の姿勢は、仰向け・うつ伏せ・横向きのどれなのでしょうか?
その答えは、仰向けです。
血液の循環が無理なく行われ、また呼吸も深く良質な睡眠に適しています。
仰向けで寝る場合、手足は、スムースに放熱できるので、広げた状態が理想的です。
しかし、口を大きく開けたまま仰向けで寝ると舌が落ちて気道を圧迫してしまうことがあります。そのため、いびきや睡眠時無呼吸症候群、風邪の原因になりやすく、注意が必要です。
うつ伏せの効果と注意点
うつ伏せ寝は、顎関節症が睡眠時の姿勢と関係があると指摘されています。
仰向けで寝た場合、顎にかかる負担が約5kgであるのに対し、うつ伏せでは約8~kgの負担重量がかかってしまいます。つまり、顎関節症や歯並びの乱れにもうつ伏せ寝は、影響があるということです。
また子どものうつ伏せ寝は、「乳児突然死症候群」の発症率が高まるということで、危険だとされています。
ところが、大人のなかにも「うつぶせ寝が好き」「うつぶせのほうがよく眠れる」という人もいます。
実際「うつぶせ寝健康法」という方法もあるくらいで、次のような効果があります。注意事項もあわせてみていきましょう。
<うつ伏せの効果>
・いびきが少なくなる
顔が下を向くことで、舌の付け根が下がらず気道が確保でき、いびきを少なくすることができます。それにより、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善される可能性もあります。
・腰痛の改善になる
腰痛がある場合、背中への負担が減り、腰痛が楽になり寝やすくなります。
<うつぶせ寝をする場合の注意事項>
・身体に負担をかけない枕選びを行う
枕は、頭を支えるだけでなく上半身を支えられるような枕を選びましょう。首に無理は負担がかからないように、また柔らかすぎる枕を選ぶと呼吸が苦しくなったりします。
このように、うつ伏せには効果が期待できることもありますが、健康に良いからといって、無理にすることはやめましょう。「苦しい」「寝にくい」という感じた場合は、身体に負担がかかっています。
無理のない状態で行うことが基本です。
横向きの効果と注意点
腰痛がある場合、横向きで寝ることが多いようです。横向きで足の曲げる角度で、腰の楽な位置が決められ負担なく寝ることができます。
また睡眠時無呼吸症候群がある場合は、舌が落ちにくいので適しているといえるでしょう。
さらに、お腹が大きくなった妊婦でもシムス位(横に寝て、上になった方の足を軽く曲げて前に出して寝る姿勢)があり、適しています。
消化器系に不調がある場合は、右向きに寝ると腸の働きを助けることになりますし、血圧が低い場合は左向きに寝ると全身の血液が心臓に戻りやすくなりますので、この寝方がラクでしょう。
ただし、横向きの場合、寝返りが少ない人は左右どちらかの時間が長くなって、負担が偏ってしまいます。
これが影響して、身体の歪みの原因になる可能性があります。
気持ちよく眠るためには寝具も大切
寝具もぐっすり眠るためには重要なアイテムです。
たとえば、布団と身体の間に熱がこもり過ぎると眠りが浅くなりがちですし、寒いとなかなか寝付けません。季節にあった掛布団をかけましょう。
枕も大事です。
自分に合っているのかどうか不安な場合は、専門店で適切な枕を計測し、合った枕に交換するのもひとつの方法でしょう。
目覚めたときにすっきりとした快適な気持ちになれない人や、いびきがあるといわれたことがある人は、検討してみましょう。
人生の3分の1を占める睡眠時間。「正しい姿勢は仰向け」といいましたが、大事なことは、自分の一番落ち着く姿勢で寝ることです。普段意識することのない睡眠時の姿勢。
この機会に見直して、自分にあった姿勢で寝る習慣をつけたいものですね。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
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情報提供元: mocosuku