「突然死」はいきなりやってくる… 原因や予防法は?
2016-11-12 18:30:50
執筆:井上 愛子(保健師・看護師)
これまで普通に働いていた人が突然亡くなった…
ある日、何の前触れもなく訪れる突然死。そこにはどのような原因があるのでしょうか。
「健康そうに見えたのに…」
そんな人でも起こりうる突然死について詳しく説明をしていきます。
突然死、大半は心臓によるもの?
「突然死」とは、事故やケガなどによる死亡を除いたもので、症状が現れてから24時間以内に予期せず亡くなることをいいます。別名「急死」とも呼ばれています。
この突然死の原因は、心臓によるものがほとんどです。これ以外には、脳の血管障害、呼吸器疾患、消化器疾患などがあります。
心臓が原因の場合、急な症状が現れてから1時間以内と短時間で亡くなるため、「瞬間死」ともいわれています。
「そんなにすぐに亡くなってしまうなんて!?」と驚かれたかもしれません。
日本では年間約10万人の突然死があり、このうち半数以上が心臓の異常が原因といわれています。突然死は身近に起こりうるものなのです。
心臓を止める原因とは
突然死で起こる心臓の異常、心臓を停止してしまう直接の原因は、「心室細動(しんしつさいどう)」という不整脈がほとんどだといわれています。
不整脈というのは心臓のリズムが乱れている状態なのですが、これがどうして危険なのでしょう。
心室細動は、心臓から全身に血液を送るポンプの役割をする心室が細かくけいれんした状態です。けいれんした状態になるとポンプ機能を果たせず、血液を送ることができなくなります。
全身の中でも、とくに脳への血液が送られなくなると数秒で意識を失い、そのままの状態が数分続くと死に至るのです。
「心室細動」はどうして起こる?
心室細動を起こす病気はさまざまありますが、その中でも有名なのが「心筋梗塞」です。この心筋梗塞を例にあげてご説明しましょう。
心臓が動くために必要な酸素や栄養を運ぶ血管を「冠状動脈(かんじょうどうみゃく)」といいます。この大切な血管は細く、血管の内側が狭くなる「動脈硬化」によって血栓が詰まりやすくなります。
そして血管が詰まってしまうと血液の流れが途絶え、心筋が死んでしまいます。この状態が心筋梗塞です。
そして、心筋梗塞が発生することによって命に関わる不整脈「心室細動」が引き起こされるのです。
心臓の病気を起こしやすくする「動脈硬化」とは?
突然死の原因となる心臓の病気(心筋梗塞や狭心症など)を起こしやすくする最大の原因は「動脈硬化」です。
動脈硬化によって血管の壁が厚くなり、血管は硬くなった状態になっています。その結果、血流を悪くしたり、血管に血栓が詰まってしまったり、血管が壊れやすくなってしまうのです。
そして動脈硬化へのリスクを高めるのが、高血圧・糖尿病・脂質異常症です。
さらに、タバコ、肥満、食事、運動不足、ストレスなどの要因が加わることで、そのリスクがより高くなるとされています。
眠っているうちに亡くなってしまう!?
突然死はどのようなときに起こりやすいと思いますか?日中に多いと思う方もいるかもしれませんが、もっとも多いといわれているのは、実は就寝中です。
次いで入浴中、休養・休憩中、排便中となっています。
また、突然死の原因となる心筋梗塞の発作は朝方にピークがあることが知られています。
あなたは大丈夫?動脈硬化にリスクは早くから
「今まで大きな病気もしていないし、まだまだ若いから自分は健康だ」と思っている人は要注意です。動脈硬化は中高年になってから起こると考えている人も多いかもしれません。
しかし実際には、なんと0歳の時点ですでに主な動脈には「硬化」の初期病変がみられるといわれています。
さらに30歳ごろになると、「動脈硬化」が現れるようになるといわれています。
20~30歳ごろから、「内壁」とよばれる血管の内側の壁の中にコレステロールを中心とした脂肪の沈着がすでに始まり、どんどん大きくなります。
血管の内側(中心)に向かって脂肪の沈着は盛り上がっていきますから、50~60歳になると血管自体が狭くなってしまいます。
もちろん自覚症状なんてありませんから、知らずしらずのうちに進行していることがあるのです。
突然死を防ぐための予防策
動脈硬化は自覚症状もなければ、目で直接見ることもできません。そのため、定期的な健康診断、人間ドックを受診し、自分の状態を知ることが大切です。
そして、規則正しい生活習慣をすることで、動脈硬化のリスクとなる高血圧・糖尿病・脂質異常症を予防することができます。
またストレスは血管を収縮させ、血圧を上昇させ心臓に負担をかけることで心筋梗塞の発症のリスクを上げるといわれています。
仕事で忙しい、残業続きで十分に休めていない、疲れがとれないといったことはありませんか?
若い働く世代にも起こりうる突然死の背景には、ストレスが大きく関わっています。十分な睡眠・休養と、規則正しい食事や運動習慣が今からできる予防策になります。
他人事とは思わずに、自分の健康は自分で守るためにも自分の身体と生活を見直すきっかけにしましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
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情報提供元: mocosuku