11月15日は口腔がん検診の日。月に1度はセルフチェックを
2016-11-15 12:00:55
執筆:井上 愛子(保健師・看護師)
日本は「先進国の中で口腔(こうこう)がんの死亡数が唯一、増加している国」だということはご存じでしょうか?
口の中にできる口腔がんは、進行すると舌や顎、頬の大部分を切除する手術が必要になることもあります。
そして、早期発見・早期治療のために欠かせないのが、定期的な検診です。
11月15日は「口腔がん検診の日」。
そこで今回はこの口腔がんについて、詳しくご説明していきます。
そもそも口腔がんとは
口腔がんとは、口の中に発生する癌の総称です。
口腔がんの種類には「舌がん」「歯肉がん」、舌の下部分にできる「口腔底がん」、口角の後ろなどにできる「頬粘膜がん」、上あごにできる「口蓋(こうがい)がん」、唇と皮膚の境目などにできる「口唇がん」などがあります。
初期の場合は自覚症状がほとんどありません。そして、痛みがでたり、食べた物がしみる、口内炎が治りつらいといった症状がでたときには、すでにがんが進行している可能性があります。
ところが、このような症状を歯周病や口内炎のためだと思い込み、がんの可能性に気がつかない人は少なくありません。
そのほかにも、首のリンパ節が腫れたり、舌や粘膜に潰瘍やしこりができる、しびれがある、話したり飲み込みづらいといった症状がでることもあります。
口腔がんの原因と治療
口腔がんが発生する原因として、虫歯や歯周病などで口の中の粘膜に慢性的な刺激があることや、細菌の感染があげられます。
また、過度の喫煙や飲酒も引き金になると考えられています。
治療法としては「手術療法」「放射線治療」「抗がん剤治療」の3種類があります。早期であれば、入院せずに簡単な手術で治すことも可能です。
実際に口腔がんの5年生存率は60~80%といわれていて、早期に発見し治療を行えば生活に支障なく過ごすこともできるのです。
しかし治療が遅れると舌や顎の骨を切り取る手術が必要となり、これまで通りに食事や会話をすることが難しくなります。
口腔がん患者の死亡数が増加している理由
普段当たり前のように呼吸をし、食事をしている口。
そこにがんができ、大きな手術を余儀なくされることは生活に大きな支障を来すだけでなく、社会でのコミュニケーションに少なからず困難や苦労が生じることが想像できます。
しかしながら、口腔がんの認知度はほかのがんに比べて低く、口の中にがんができること自体知らない人も少なくありません。
アメリカなどの先進国では、口腔がんの早期発見・早期治療に向けた取り組みが積極的に行われているため、死亡率が減少傾向にあります。
一方で日本は、残念ながらまだまだ遅れているのが現状なのです。
年に1度は口腔がん検診の受診を
普段から口の健康を気にかけていますか?
口腔がんを予防するためには、まずは日頃から歯医者さんに通い、虫歯や歯周病などのトラブルがないかをチェックしてもらうことが大切です。
口腔がん検診には、「ベルスコープ」と呼ばれる機械を使って行います。口の中に青色の光をあてて異常の有無を確認し、写真を撮影していきます。
口腔がん検診の所要時間の目安は30分程度。費用は施設により異なりますが、5,000円~10,000円程度です。
地域や年齢によっては補助がでる場合もあるため、最寄りの市役所などの窓口や、歯科医院で相談してみましょう。
「全身の健康の原点」といわれる口。月に1回はセルフチェックを行って、トラブルがないか口の健康をチェックしましょう。
そして年に1度は口腔がん検診を受けましょう。受診するのを忘れないためには「口腔がん検診の日」である11月15日をめやすにするとよいですね。
歯医者さんを定期的に受診する習慣をつけて、お口のトラブルを予防しましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
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情報提供元: mocosuku