高齢出産はリスクが高いというけれど…専門家が解説
2016-11-23 12:00:36
執筆:青井 梨花(助産師・看護師・タッチケアトレーナー)
昨今、メディアでも高齢出産のニュースが取り上げられるようになり、高齢で出産することも珍しくない時代になりました。
しかし一方で、「高齢出産=ハイリスク」と聞いたことがある人もいらっしゃるでしょう。
実際に高齢出産のリスクにはどのようなものがあるのか。
今回は、これから妊娠を考える世代にもぜひ知っておいて欲しい情報をお伝えしたいと思います。
高齢出産とは?
以前に比べて女性の社会進出が進み、晩婚化傾向にあることから初産年齢も高くなってきています。
日本産婦人科学会では、現在35歳以上の初産婦を「高年初産」と定義しています。
1990年代から全国に周産期医療センターがつくられるようになりました。高齢出産をはじめとするハイリスク妊娠に対し、集中的に厳重な管理がなされてきたことから、事なきを得ることがたいへん多くなっているといえます。
しかし医療の高度化がすすんでも、やはり高齢での妊娠出産は、危険をともなうリスクが大きくなるのです。
ですから、妊娠を計画する以前からこの事実を知っておく必要があるでしょう。
では具体的にどのようなリスクがあるのか、詳しく見ていきましょう。
妊娠出産時のリスクとは?
高齢にともない、高血圧や糖尿病、子宮筋腫などの病気を持っていながら妊娠するケースがみられるようになってきました。
これらの症状が十分にコントロールされていない状態で妊娠に至ると、妊娠にともない持病が悪化することも考えられ、また持病が妊娠出産に影響する場合があります。
また、妊娠初期の流産率が高いともいわれています。
原因は不明なことが多いですが、赤ちゃん側の染色体異常によるものも考えられます。これは「精子も卵子も加齢により老化する」ことが要因のひとつともいわれます。
そのほか「妊娠性高血圧症候群」や「妊娠性糖尿病」などの合併症を起こすことがあります。
また「常位胎盤早期剥離(じょうたいたいばんそうきはくり)」を起こすリスクもあります。これは赤ちゃんとお母さんをつないでいる胎盤が、赤ちゃんが生まれるより先にはがれてしまい、母児ともに危険が及ぶものです。
さらには妊娠中の合併症の影響から、早めに出産にするケースや、子宮の中で充分育たず早産になるケースもあります。そしてそのことから低出生体重児が生まれることも考えられます。
ほかには、いわゆる「ダウン症」などの染色体異常が赤ちゃんに起きる確率が高くなるということもわかっています。
分娩時にもリスクが伴います。
高年初産だととくに産道が硬いことが多く、子宮口も開きにくいためお産が長引くことがあります。
お産が長引くと体力も消耗しますし、体力を消耗すれば陣痛も弱くなります。さらに出産までに時間がかかり、そのため薬などを使用して、陣痛を誘発したり、促進する処置をおこなうこともあります。
また微弱陣痛だと、出産直後すみやかに子宮が収縮せずに弛緩出血を起こしやすくなります。
ほかにも産道が硬いと切れやすく、その結果、出血量が多くなるケースなども。出血量が多いと産後貧血となり、産後の回復にも影響します。
リスクは妊娠出産時だけではない
高齢出産というと、どうしても妊娠出産までに目が向けられがちです。
ところが、出産は決してゴールではありません。
もちろん個人差もあるものの、産後の回復に時間がかかることもあります。また、骨盤底のダメージがあるにもかかわらず、産後早期に無理をすると、将来に尿漏れや子宮脱などを合併しやすいともいわれます。
社会的側面から高齢出産後に考えられるリスクもあります。
高齢出産だと親も高齢なことが多く、産後サポートが得られにくいことがあります。場合によっては、育児をしながら親の介護も必要になるというダブルケアのケースもあるのです。
いろいろな側面からリスクをお伝えしました。
しかしながら、高齢出産は必ずしも「リスクばかりだ」ということではありません。
ライフスタイルが多様化するこの現在は、いろいろな選択肢があります。
「いつかは子ども持ちたい」「子どもを持つ選択肢も考えておきたい」という考えを持っているのであれば、まずは“卵子も精子も老化するのだ”ということを知っておきましょう。
また高齢出産にともなうリスクを理解することは、今後のライフプランを考えるときに、より選択の幅が広がることにつながるでしょう。
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母
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情報提供元: mocosuku