E START

E START トップページ > マガジン > 行き過ぎたダイエットが招く「摂食障害」を知ろう

行き過ぎたダイエットが招く「摂食障害」を知ろう

2016-11-24 18:30:26


執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
健康ブームといわれる昨今、さまざまなダイエット方法が紹介されています。
しかし、行き過ぎたダイエットは拒食症や過食症などの「摂食障害」を引き起こす危険性をはらんでいます。
ご自身も、また周囲の大切な人も摂食障害に陥らないために、原因や対策についてご説明したいと思います。

摂食障害の代表的な病気「拒食症」と「過食症」


精神的な問題によって食行動に異常をきたしてしまう病気を総称して摂食障害といいます。
摂食障害に分類される病気にはいくつかあります。その中で、最も代表的なのは「拒食症」と「過食症」です。

拒食症


専門的には「神経性無食欲症(別名;神経性やせ症、思春期やせ症)」といいます。
「やせたい」という強い願望から、必要以上のカロリー制限や運動などの過激なダイエットを行うことで、「低体重(標準体重の80%以下)」を引き起こす病気です。自分の容姿に関心の強い10代の女性に多い病気です。
拒食症は大きく2つのタイプに分けられます。
ひとつは、徹底的に食べないことによって体重が減少していく「摂食制限型」、もうひとつは、過食をしては吐く、あるいは下剤を服用するといった不適切な排泄行為(代償行動)を繰り返しながら体重を減少させていく「過食・排出型」です。

過食症


専門的には「神経性大食症(別名;神経性過食症)」といいます。
過食症は、過食と不適切な排泄行動をくりかえす病気です。拒食症の「過食・排泄型」と似ていますが、低体重を招かないという点で、大きく異なります。
ただ、過食症もその背景にはやせることへの強いこだわりがあり、拒食症と同じような過激なダイエットを行います。
ところが、さまざまなストレスが過食(むちゃ食い)という形となって現れるため、結果的に体重を落とすことができなかったり、気持ちとは裏腹に体重が増加してしまうことさえあります。
そのため、行き場のない気持ちが抑うつや不安などの精神症状となって現れることも珍しくありません。
このように、拒食症も過食症もその背景には、やせることへの強い気持ちがあるという点では共通しています。
そして、実際に拒食症から過食症へと移行することも少なくありません。

摂食障害の原因


摂食障害は、ダイエットをきっかけに発症するといわれています。
しかし根本的な原因はもっと複雑で、いくつかの要因が絡み合っているといわれます。
そのうちのひとつが本人の性格です。自尊心が低く、ストイックな人に多いといわれています。
このような人がダイエットを行うと、「体重が減ること=自分への評価が上がること」になってしまい、摂食障害に陥ると考えられています。
ただし、このような性格なら誰でも発症するわけではありません。遺伝的要因や家庭環境も影響しているだろうといわれています。
また「やせることは良いこと」とされるような社会風潮も、大きく影響しています。

摂食障害は自分で気がつくことはできない!?


拒食症も過食症も、自分の体型を正確に認識できない「ボディーイメージの障害」といわれています。
そのため、すでにカロリー制限などによってかなりやせているにもかかわらず、体重が増えることに対する恐怖心をぬぐうことができません。
さらに、周りからどんなに指摘や注意をしても「自分は太っている。もっとやせなきゃ!」という気持ちを捨てることができず、さらに過激なダイエットにのめりこんでいきます。
そのため、自分の状態が病気だと自覚して、受診することは決して簡単なことではありません。
実際に、拒食症を発症して入院していても、「自分は病気じゃない」と思っている患者さえいるほどです。ですから、周りのサポートが非常に重要になります。

摂食障害の症状と周りができる対策とは?


拒食症の場合、低体重に伴って低栄養状態に陥るため、むくみや低体温、低血圧、徐脈(脈拍数の減少)、産毛の増加といった症状が現れます。
また、女性の場合は女性ホルモンのバランスが乱れて無月経になったり、骨粗しょう症を引き起こすこともあります。
さらに悪化すると意識障害が出て、生命に危険が及ぶこともあります。
周囲からわかりやすい目安としては、見た目と行動の変化があるでしょう。どんどんやせているにもかかわらず本人にその自覚がなかったり、さらにやせようとダイエットを続けているようなときには注意が必要です。
また体重が減って体力が落ちているはずなのに、活動的だという特徴もあります(過活動)。
さらに、食行動にも変化が現れます。極端な食事制限を続けたり、偏食がある場合には注意しましょう。
また、周囲からの指摘を受けることに対して強い抵抗感を見せ、隠れて食事をしたり、盗み食いに走ることもあります。
過食・制限型の場合は、排泄行動のために、食後にトイレにこもることもあります。
そして何度も自己誘発嘔吐(自分で指を口にいれて嘔吐しようとすること)をくり返していると、手や指にタコができることがあります(吐きダコ)。これも、不適切な排泄行動のサインのひとつです。
このようなサインや行動をよく観察し、おかしいと感じた時には、病院に付き添うようにしましょう。
一方、過食症の場合は体重が減らない分、拒食症よりもわかりにくいかもしれません。
ただ、精神症状が強くあらわれる傾向があります。
以前に比べて、抑うつや不安の症状があったり、気分が変わりやすくなるなどの変化がある場合には注意しましょう。
また、拒食症同様、行動にも変化が現れます。
短い時間に大量に食べたと思ったら、排泄行動のためにトイレにこもるということをくりかえします。そして手や指に吐きダコができたり、盗み食いや隠れ食いをすることもありますから、行動をよく観察するようにしましょう。
拒食症も過食症も、カラダだけでなくココロにも大きな負担がかかります。
精神症状が悪化すると、自殺企図や自傷行為といった生命に危険が及ぶ行動もとりかねません。
今回、ご説明したような症状がみられる場合は、すぐに心療内科や精神科を受診するようにしましょう。
<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。
株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆

関連記事

情報提供元: mocosuku

人気記事