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「身も心も疲れた…」 ココロとカラダ、疲れに違いは?

2016-11-27 12:00:43


執筆:井上 愛子(保健師・看護師)
「疲れ」ときいて思い浮かぶのもの。
一つは、だるさや肩こり、頭痛、腰痛、眠気などの「身体的な疲れ」です。
そしてもう一つは、イライラ、気分が滅入ってしまうといった「精神的な疲れ」です。
この身体的な疲れと精神的な疲れは、まったく別物なのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。

「疲れ」は生体の3大アラームのひとつ


まず疲労は、実際の疲労(疲れ)と疲労感(感じる疲れ)に分けられます。
さらに、実際の疲労は、病気以外の生理的疲労と、病的疲労とに分けられています。
この生理的疲労と病的疲労について解説します。

生理的疲労


カラダとココロの疲れは、ほんらい健康な状態であれば、休養・睡眠によって回復が可能なものです。
日々の生活で仕事や家事など活動を行ったあとは、必ず休養をとっていますよね。仮に何日も休みなく活動を続けたとしたら、生命や健康を維持することはできなくなるでしょう。
その意味で生理的疲労は、痛み・発熱と並んで「生体の3大アラーム」と言われていて、人間が健康を維持するための防御反応です。
そして、回復可能な疲れという視点からすると、カラダの疲れもココロの疲れも同じ働きをもっていると言えます。

病的疲労


病的疲労は、何らかの病気があってその症状として疲労が現れること(たとえば心臓病を持っている人は疲労が生じやすい)や慢性疲労症候群などがあります。

精神状態が影響する「疲れ」


取り組んだことへの成果や達成感が得られたときや軽い運動をしたあとに、スッキリした心地よい疲労を感じること、
また、うれしいことや楽しいことがあって気持ちが高揚しているときに、いつもと同じ仕事や家事に向かうと「疲れ」を感じず「心地よい!」とさえ感じた経験があるかと思います。
反対に、嫌なことがあったり気持ちが沈んだりしているときや、気がすすまないまま仕事に向かうと、働いた時間が短かったにもかかわらず、すごく疲れたと感じることがあります。
このように「疲れ」の感覚は、心理的(主観的)な側面がとても大きく影響することが特徴です。
この意味でいいますと、「実際の疲労(疲れ)」と「疲労感(感じる疲れ)」は、必ずしも同じではないといえるでしょう。

疲労が起こる2つの原因説


疲労の原因については、現在も原因を特定するための研究がすすめられていますが、大きくは2つのことが挙げられています。
1.活動によって体内に疲労物質が溜まるという説
2.外から加わったストレスがホルモンによる調節機能を乱し、自律神経のバランスが崩れるという説
どちらも疲労が起こる働きの一部を説明することはできますが、全体の解明までには至っていません。
たとえば、1の疲労物質についても、以前は「乳酸」が原因物質と考えられていましたが、最近ではこれに否定的な見解が主流で、それに替わって「トリプトファン」と「活性酸素の影響」が有力な学説となっています。

カラダとココロ双方の休息を求めるサイン


疲労は、カラダとココロが休息を求めるサインです。
身体的・肉体的疲労(カラダの疲労)は、カラダを酷使したときや同じ姿勢を続けた場合、睡眠が不十分していたり、栄養が足りなかったりすると起こります。
いわば、ガソリンの切れた車が動かないのと同じように、カラダもエネルギー不足ではパフォーマンスを発揮することができないというわけです。
精神的疲労(ココロの疲労)は、家族や職場の人間関係でのストレス、仕事・プライベートの悩み、ショックな出来事などから生じます。
しかし身体的疲労とも無関係ではなく、ストレスを感じているときには交感神経が優位になって内臓や筋肉が働き続けているため、身体へも疲れがたまっていきます。
また反対に、身体の疲れが自律神経のバランスやホルモンバランスを乱すことで精神状態にも影響を与えます。そして、どちらの疲労も、回復には睡眠の力が必要不可欠です。
同じように、軽いストレッチや適度に身体を動かすこと、栄養をしっかり取ることも、カラダにもココロにも、両方の回復につながります。

放っておくと…病気との関連


休養しても回復しないだるさや倦怠感の裏には、病気が潜んでいることがあります。
身近な例でいうと、風邪やインフルエンザにかかったときに起こる倦怠感や発熱症状は、身体に侵入したウイルスを排除するために免疫機能を活性化させることで起こります。
ほかにも、顔色が悪い・めまいがするなどでは貧血や更年期障害も想定されます。とくに更年期障害の場合、閉経前後の女性ホルモンバランスの変化によって、だるさや疲れ、不眠などの症状が出ることもよく知られています。
さらに、心配される病気として「うつ病」などの精神疾患、慢性肝炎や肝硬変、胃がん、大腸がん、糖尿病、慢性腎盂腎炎などがあります。これらの病気の症状には、だるさや倦怠感が現れることがしばしばあります。
病気に特徴的な症状が現れる前に、身体の不調として疲労感が先行して現れることもあるので、休んでも回復しないだるさや倦怠感があるときには放置しないことが大切です。
また、定期的に健康診断をうけることも重要です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

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情報提供元: mocosuku

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