その肩こりに、病気が潜む可能性も?「肩こりの種類」
2016-12-08 12:00:56
執筆:井上 愛子(保健師・看護師)
多くの日本人が悩まされている症状のひとつである「肩こり」。
病名ではなく、肩や首、背中の上部を中心とする痛みや不快感をまとめて「肩こり」と呼びますが、病気の症状の1つとして肩こりが起こることもあります。
どのような病気が考えられるのか、詳しくみていきましょう。
肩こりとは
人間の身体は首や腰に負担がかかりやすいものです。姿勢を保つために首から肩にかけての筋肉が緊張して血行が悪くなり、重く感じるのが肩こりです。
首すじ、首のつけ根から、肩、背中にかけて張ったような感じ、凝った、重くてだるい、痛いといった症状が現れて、頭痛や吐き気をともなうこともあります。
肩こりに関係する代表的な筋肉は、首の後ろから肩、背中にかけての「僧帽筋(そうぼうきん)」という幅の広い筋肉です。整形外科の病気以外でも肩こりは生じます。
肩こりの分類
肩こりを訴えるものを分類すると、「原因となる疾患名がついていない肩こり」「整形疾患が原因となる肩こり」「整形以外の疾患に関連した肩こり」の3つになります。
一つずつ詳しく見ていきましょう。
原因となる疾患名がついていない肩こり
・ストレス
精神的なもの、クーラーによる冷えすぎ、同じ姿勢でいることなど
・姿勢
猫背、なで肩、ストレートネック、長時間のコンピューター作業、同じ肩に鞄を掛けるなど
・運動不足
身体を動かさないと筋力や血流が低下する
・眼精疲労
スマートフォンやパソコンを使った作業、視力があわない眼鏡など
・歯の問題
虫歯、歯のかみ合わせが悪い
整形疾患が原因となる肩こり
・肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)
四十肩、五十肩のこと。発症した年齢で呼び名が変わる。加齢により肩の関節が炎症を起こした結果、腕が上がらなくなる病気。
・頸椎(けいつい)症
頸部脊椎(けいぶせきつい)症と同義。老化からはじまる加齢性(変性)疾患。中高年に好発。首や肩の痛みからはじまる。手足のしびれを感じることも。
・頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニア
頸椎症に広い意味では含まれる。
・変形性頸椎(へんけせいけいつい)症
慢性的に肩こりや首の痛みを生じる。症状が進むと頸椎椎間板ヘルニアの恐れあり。
・頸肩腕(けいけんわん)症候群
レントゲン検査等で明らかな異常が認められないにも関わらず、首、肩、腕に痛みやしびれがある。
・頸椎捻挫(けいついねんざ)
むちうち症。頚のレントゲンでは正常で変化がないもの。
・胸部出口症候群(きょうぶでぐち)
心臓から続く血管が、胸郭を出た所で神経とともに圧迫されておこる病気。
整形以外の疾患に関連した肩こり
・高血圧症(低血圧でも起こりうる)
血圧以外の原因によって起こっているケースが多い。
・狭心症
胸の痛みや圧迫感しめつけ感のほかに、左肩から腕にかけての痛みが出る場合がある。
・更年期障害
肩こりの他、ほてりやのぼせ、発汗、動悸などもおこる。
・うつ病
気のせいかなという程度の肩こり、頭痛などのからだの症状からはじまり徐々に悪化していく。
・貧血
筋肉への酸素供給が減ることで、筋肉内に疲労物質がたまって起こる。
肩こりへの対処と予防
肩こりは早めの対処と予防が大切です。自分でできる対処法として次のものがあります。肩こりに悩んでいる方は、試してみてください。
同じ姿勢を長く続けない
蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くしたり、筋肉の緊張をやわらげる
適度な運動や体操をする
入浴などの方法でリラックスする
枕の高さを合ったものに変えるなど、就寝時の姿勢を改善する
マッサージを行う
筋肉を強化するために、運動を行う
市販されている薬を使う(シップ薬、筋弛緩(きんしかん)薬、非ステロイド性消炎薬など)
市販されている装具(頸椎カラー)などを使う
原因となる病気が明らかであれば、その治療が優先されます。まず、整形外科医に相談しましょう。
たかが肩こり、されど肩こりです。仕事でパソコンに向かうことが多く、プライベートでもスマホが大多数の現代、肩や目は酷使される一方ですし、加齢も加わります。
生活改善を行い、辛いときには、我慢せずに整形外科などで診察を受けましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
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情報提供元: mocosuku