ネットで手に入れたアノ薬…4割が危険なニセモノ(偽造医薬品)だった!
2016-12-15 21:30:34
執筆:座波 朝香(ヘルスケアライター・助産師)
医療監修:株式会社とらうべ
2016年11月24日(水)、EDの治療薬を国内で正規に販売をしている製薬会社4社による合同のプレスセミナーが開催されました。
セミナーでは、今年で2回目となる「偽造ED治療薬」に関する合同調査の結果が報告され、国内でインターネットから入手したED治療薬を専門的に鑑定した結果、その4割がニセモノ(偽造医薬品)だったという衝撃的な事実が明らかになりました。
診断されていない潜在患者を含めると、1000万人以上にものぼるとされている日本のED(勃起障害)患者。
ネットで購入した薬にどんな危険がはらんでいるのか、合同調査の結果を詳しくご紹介しましょう。
偽造医薬品とはどんな薬?
日本で正式に流通している薬は、「医薬品医療機器等法」という法律によって、品質や効果などの安全性が守られています。一方、インターネットで販売される薬にはそういった縛りがありません。
そのためどんなところでつくられているか、製造や保管による品質も全く保証されておらず、日本の正規ルート以外で手に入れた薬が、ニセモノである可能性があるというのが現状です。
そのような「偽造医薬品」について、WHOは、「故意にまたは不正に申請医薬品に似せて製造されたものである」と定義づけています。
購入前に本物を見抜き選ぶことは可能?
ED治療薬については、「バイアグラ(ファイザー)」で有名な「PDE5阻害剤」に効果があると認められ、日本では1999年から製造・販売されています。
それ以降、日本で承認されている正規品は、「バイアグラ」のほか、「レビトラ(バイエル薬品)」「シアリス(イーライリリー、日本新薬※販売のみ)」の3種類とその後発薬(ジェネリック)です。
今回の合同調査では、ネット上で入手できるED治療薬の成分が調べられ、4割が偽造医薬品であることが判明しました。さらに、真正品と偽造医薬品には、具体的に以下のような違いがあることも明らかにされました。
1.有効な成分を全く含んでいない薬
2.効果とは関係のない成分が含まれている薬
3.不純物が混入している薬
・製造設備の安全性や衛生管理がされていないような劣悪な環境で製造されることがあり、例えば含まれているはずのない覚醒剤の成分が混入していることもあった。
4.効果を発揮するために認められている用量を超えてしまっている薬
・正規品「レビトラ」では成分量が「5mg」「10mg」「20mg」であるのに対し、国内外とも存在しないはずの「100mg」が製造・販売されている。
・正規品「バイアグラ」では成分量が「25mg」「50mg」であるのに対し、国内で認可されていない「100mg」や国内外とも存在しないはずの「300mg」が製造・販売されている。
・正規品「シアリス」では成分量「5mg」、10mg」、「20mg」に対し、国内外ともに存在しないはずの「50mg」「100mg」が製造・販売されている。
5.形状の違う薬
・正規品「レビトラ」が「錠剤」であるのに対し、国内外にも存在しない「カプセル剤」が製造・販売されている。
今回の調査の結果によると、ネットで入手したED治療薬のうち4割が、このような偽造医薬品だったということです。
4や5に関しては、認可されている正規品の規格を把握していれば、表示や形状により気付けることができるかもしれません。ところが、1~3などでは、実際の成分を外見で判断することはできませんし、そもそも表示と内容が異なるものもあります。
ですから、個人で正規ルート外から入手した薬は信用できず、本物を見極めることもできないということなのです。
「偽造薬品の危険性」重大な健康被害も
EDは、勃起力の低下による性の機能障害のひとつで、昔は「インポテンス」などと呼んでいました。
ED(勃起不全)は、「勃起の発現あるいは維持できないために満足な性交ができない状態(国際性機能学会定義)」という医学的な定義があります。陰茎の海綿体の血管を十分に開いて血流を助けることで、充分な勃起を促すというのが、治療薬のしくみです。
偽造品には、認められた用量以上の成分が含まれています。そのため、血管を広げる作用が必要以上に発揮されてしまい、急激に血圧が下がり、意識障害をおこす可能性があります。
また、通常では含まれないはずの成分が混入されていれば、その成分によって予測できない症状が起こるかもしれません。日本でも、偽造のED治療薬を飲んだことによる死亡例も出ています。
問題が起こる確率が低いものと思っていても、実際に偽造品だったときのリスクは重大なものです。性の満足どころか生命がキケンにさらされてしまうのです。
ナゼ危険なものが手に入ってしまうのか?
レジットスクリプト社(※)の岡沢宏美氏によると、現在、医薬品を販売する日本語のサイトは、約2,000~3,500にものぼります。そして、そのうち99%以上が薬機法(旧:薬事法)に違反して広告しているなど、ほとんどが不正に販売を行っているサイトだということです。
さらに1年間に1,900件以上のサイトを閉鎖してもなお、不正サイトは減っていかないのが現状だということです。
また偽造医薬品を研究している木村和子教授(金沢大学)は、「偽造医薬品は、最近始まった問題ではないが、ED治療薬が世の中に登場して以降、勢いがついた」と発表していました。
EDは性に関する悩みですから、ED治療薬を求めている人にとって、相談や受診をすることはハードルが高いのかもしれません。そのため、インターネットによる偽造品販売業者は、このような悩みの特性を利用して、EDに悩む人たちをターゲットにしているともいえるかもしれません。
※不正医薬品販売サイトの監視や調査を行っている「公共の安全」を目指す企業。
「インターネットで薬を購入するリスク」VS「受診することのメリット」
偽造医薬品の内容を知る限り、インターネットでのED治療薬の使用は大きなリスクです。受診をして安全かつ効果的に治療するメリットの方がずっと大きいといえるでしょう。
EDの原因のひとつに、生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)があります。加齢にともなって生活習慣病が増えることで、EDに悩む男性も増えてきます。
またEDに悩む男性のパートナーにとっても大きな問題です。
恥ずかしいこと、単なる個人的な性の悩みなどと片付けてしまうことに対して危機意識をもって、適切に治療を受けることが重要でしょう。
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通。
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku