「社会的失明」、加齢による加齢黄班変性について
2016-12-16 21:30:55
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
加齢による「加齢黄班変性(かれいおうはんへんせい)」は、早い人になると40歳代から発病します。欧米では成人失明原因の第1位で、珍しくない病気です。
日本ではあまりなじみがなく、患者も少ないと考えられていました。しかし、人口の高齢化と生活の欧米化により、近年は著しく増加の傾向にあり、目下のところ失明原因の第4位です。
加齢黄班変性による失明は「社会的失明」と言われて、網膜中心の視力障害をおこすものの、全く光を感じないという状態ではありません。
今回は、その加齢黄班変性についてご紹介たいと思います。
真中だけが歪んで見える
網膜には「黄班」という、ものを見るために大事な部分があります。大きさ、色、立体性距離など、光情報の大半をここで識別しています。黄班に異常をきたすと、ものの見え方に支障がでます。
加齢黄班変性は、網膜に新しい血液を送っている脈絡膜から脈略膜新生血管が伸びてくることが原因で発生します。この血管があるかないかで2つのタイプに分かれます。
「萎縮型」と「浸出型」と呼ばれ、浸出型が多いのが日本人の傾向です。
浸出型は、網膜色素上皮の細胞内に溜まった老廃物を吸収しようとして、脈略膜新生血管が伸びてきてしまいます。
そして脈略膜新生血管が破れて出血したり、血液の成分が漏れ出したりして組織内に溜まると、網膜を押し上げます。このような状態が浸出型です。
治療せずに放置しておくと、視力の低下、見え方の異常が急速に進むこともあります。
医学的には、失明は光を全く感じない状態をいいますが、「社会的失明」は、矯正視力0.1以下の状態です。
加齢黄班変性では、光は感じますが、日常生活の不便さや自立の程度から判断して、全盲とは分けて「社会的失明」と呼ばれています。
加齢による加齢黄班変性の最新治療法
脈略膜新生血管の拡大を抑えて縮小させ、視力を維持・改善することが治療の目的となります。
このことで視力が正常になることはありませんが、薬物療法が行われています。
薬物治療は、6週あるいは4週ごとに、血管内皮の増殖を阻害する薬を、目の中(硝子体腔)に2~3回注射します。その後、定期的に診察して、脈略膜新生血管の活動がみられれば、再度注射を繰り返します。
また光線力学療法と合せて治療を行うことがあります。光線力学的療法は、ビスダインという光感受性物質を点滴して、その後に、非常に弱い出力で専用レーザーを病変部に照射する治療法です。
眼科で治療を受けますが、治療費については薬物療法は厚労省無認可の薬剤なので、保険はきかないようです。光線力学療法は保険適応ですが、薬剤が高いので高額の治療費がかかるといわれています。
以前は脈絡膜新生血管を取り去ったり、黄班を移動させる手術が行なわれていましたが、薬物療法や光線力学療法の普及で、最近ではほとんどこれらは行われなくなりました。
誘因を排除する予防法は禁煙
加齢黄班変性は、歳を取るにつれて誰にでも起こりうる病気ですが、発症のリスクを高めるものに、喫煙、肥満、日光浴などが挙げられています。
とくに喫煙は酸化ストレスが目に蓄積されやすく、炎症を起こしやすいと言われていますので、発症予防や進行を遅らせるためには、禁煙は非常に大事なことです。
また緑黄色野菜は、加齢黄班変性の発症を抑えると考えられていますし、肉よりも魚中心の食事のほうがいいようです。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku