冬でも氷をガリガリガリガリ…「氷食症」
2016-12-20 12:00:56
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
氷食症は文字通り、氷を食べられることがやめられない病気です。
まだ原因不明とされていて、貧血のせいとも強迫性障害(精神疾患の一つ)ともみられています。
この氷食症、一体どのような病気なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
氷食症の症状:貧血説の立場から
とにかく氷を食べずにはいられないのが、氷食症の症状です。
ですから結果としてお腹を下し、以下ののような貧血の症状が次第に出てきます。
疲れやすくなる
頭痛
食欲不振
息切れ
動悸
顔色の悪さ
めまい
立ちくらみ
記憶力の低下
寝起きや寝つきの悪さ
さらに、食欲不振による栄養不足が高じると、肌荒れや爪の反り返り、あるいは貧血がひどくなって突然倒れたり、日常生活に支障をきたしたりするようにもなります。
氷食症の原因:貧血説と強迫説
氷食症のおもな原因は、鉄分の不足によって起こる貧血だと言われています。
しかし「なぜ鉄分が足りないと氷が食べたくなるのか」については、まだよく判ってはいないとのこと。
貧血によって赤血球の量が減り、赤血球の働きが低下して酸素不足になり、自律神経が乱れて体温調節がうまくいかず、口の中の温度が上がって、暑くなった口の中を冷ますのに、ついつい氷を食べてしまうという仮説もあるそうです。
また、自分ではおかしいとわかっていてもやめることができない行為を「強迫行為」といいますが、繰り返される氷食を強迫行為とみなし、精神疾患の一つ、強迫性障害とする立場もあります。
氷食症の治療と予防
貧血予防の立場からは、一般の貧血と同じように鉄分の多い食材を摂取することや、バランスのとれた食生活をするという食事へのケアが挙げられます。
そのためにも、消化器科や婦人科に受診して、血液検査をして貧血かどうかを確かめる必要があります。たとえば、鉄欠乏性貧血だった場合、胃潰瘍、大腸がん、子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあります。
こうした疾患の治療や貧血に対しては鉄剤の処方など、さまざまな治療法があります。
また強迫性障害の立場からは、治療には心療内科や精神科を受診します。
そこでは抗うつ剤のSSRIを用いた薬物療法が有効とされています。ただし、うつ病よりも投与量は多くなることがあります。また、強迫性障害の人には完全主義者(潔癖な人)が多いので、認知行動療法を受けて、自動思考(無意識的な考え方のクセ)を修正していくこともすすめられています。
とりわけ、強迫性障害に有効な「暴露反応妨害法:EPR」があります。
いずれにしても、中途半端な治療は再燃や再発につながることから、自分の回復の程度を主治医によく効い、充分に回復するまで治療を続けることが再発防止にとって重要とされています。
氷食症と現代社会
氷食症は冷蔵庫が発明され、製氷機ができるまではなかった病気といわれています。
その意味では、文明の利器が作り出した病気ということもできます。一方、強迫性障害も、清潔で便利で危険にさらされない日常生活で起こりやすいことが指摘されています。
現代の便利な生活自体が、こうした病気を造り出しているかもしれない可能性は、今後、ぜひ解明してもらいたいところです。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku