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金銭や物品目的ではない窃盗常習犯 「クレプトマニア」

2016-12-29 21:30:47


執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
クレプトマニア(窃盗症) は「窃盗症」ですが、物やお金が欲しくて盗み、癖となる「盗癖」とは違います。盗むこと自体が目的となってしまうプロセス依存症です。
女性に多く、人間関係などの葛藤やストレスが発症の契機となるので、条件からすると主婦は要注意です。繰り返しているうちに見つかって警察に逮捕され、犯罪者として裁かれることもあります。
自らが不幸な境遇で育ったことが、 クレプトマニアになる要因として挙げられていますが、逆にその本人が家族に不幸をもたらす加害者にもなってしまうのです。本人の治療はもとより家族へのケアも大切なこととなります。
今回はこのクレプトマニアについて、詳しく見ていこうと思います。

クレプトマニアとは?


クレプトマニアは窃盗症と訳されます。米国精神医学会が発行する『DSM-5:精神疾患の分類と診断の手引き』では、次の4つの症状が挙げられています。
A.個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される
B.窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり
C.窃盗に及ぶ時の快感、満足、または解放感
D.その盗みは、怒りまたは報復を表現するためのものではなく、妄想または幻覚への反応でもない

このように、個人的に使ったり本人にとって金銭価値があるわけではないのに、盗む衝動が抑えられず、繰り返してしまうのがクレプトマニアなのです。プロセス依存症の一つです。

症状がある人はどれくらいいる?


日本ではまとまった統計はないものの、万引き者の5%以下とされ、女性の方が多く、青年期後半からの発症が多いとみなされています。
万引き常習者の中の病的レベルの人と言えます。条件からすると主婦はリスクが高いですね。
アルコール依存など物質使用障害、ギャンブル依存症、双極性障害、不安障害、強迫性障害、過食症などとの合併を持つ場合も多いとされています。

「物を盗んでいる時だけ、生きている実感がもてた」


これは、あるクレプトマニアの心境です。
最初はスリルを求めて手を染めた万引きも、繰り返すにつれ行為がエスカレートし、ついには盗むこと自体が目的化します。そして、逮捕され収監されて、「これで盗まずに済むと安堵する」ということもしばしばです。

クレプトマニアになる原因


窃盗癖が始まるとき、強いストレスが背景にある場合が多く、喪失体験や重要な関係性の破綻、葛藤などが引き金になります。性的虐待・性的葛藤、生理(月経)との関連も指摘されています。
また親子関係で傷つくことが多い、無視された、望まれなかったなど、生育歴の影響も窃盗行為の反復に影響していると言われます。
遺伝的には、強迫性障害、気分障害、薬物依存などの血縁者がいる場合も多いとのことです。

治療とケア


まずは、クレプトマニアが病気であることを自覚すること、窃盗行為のメリットとデメリットを考えさせ、本当に望んでいることは何かを理解し、悪循環を断つよう促されます。
薬物療法や心理療法も行われますが、クレプトマニア・アノニマスなどの自助グループの活動が有効とされています。
もちろん、家族の理解と協力も重要です。
本人の嗜癖に家族が傷ついている場合も多いので、家族へのケアも必要となります。
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

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情報提供元: mocosuku

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