メタボの原因? 「脂質異常症」とはどういう病気か
2017-01-31 21:30:09
執筆:桜 イクミ(管理栄養士)
医療監修:株式会社とらうべ
生活習慣病ともいわれる「脂質異常症」。
名前は知っていても、どんな病気なのかよく知らない方も多いかもしれません。
今回は、脂質異常症についてわかりやすく解説したいと思います。
脂質異常症は危険?
脂質異常症とは、血液検査のコレステロールや中性脂肪などの脂質の値が基準から外れている状態です。
メタボリックシンドロームの診断基準の項目にも入っていて、生活習慣病ともいわれています。
脂質異常症になると、血液がどろどろになってスムーズに流れにくくなります。自覚症状がないことが多く、長期間続いて悪化すると、血管内に余分な脂肪やコレステロールが蓄積していきます。
その結果、血管が硬くもろくなり、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす動脈硬化のリスクとなります。
脂質異常症の種類とは?
脂質異常症の種類には、コレステロールに異常をきたすものと、中性脂肪値に異常をきたすものがあります。
1.コレステロールの異常
本来コレステロールは、ヒトの細胞膜や脂肪の消化にかかわる胆汁酸やホルモンの材料です。
LDLコレステロールとHDLコレステロールの2種類があり、LDLコレステロール値が高いと高LDLコレステロール血症に、HDLコレステロール値が低いと低HDLコレステロール血症のリスクとなります。
・高LDLコレステロール血症
LDLコレステロールは、肝臓のコレステロールを身体中に運んでいます。LDLコレステロールが過剰に血液中に増加すると、身体中のコレステロールも増えることになります。
その結果、動脈硬化のリスクになります(高コレステロール血症)。
このことから、LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれています。高LDLコレステロール血症は、食べ過ぎや運動不足、肥満、脂っこい食事、肉類や乳製品などに多く含まれる飽和脂肪酸の摂り過ぎ、食物繊維の不足などが原因となります。
・低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールには、身体中の血管の壁から余分なコレステロールを肝臓に運ぶ働きがあり、動脈硬化の予防につながることから、善玉コレステロールといわれます。
HDLコレステロールが少なくなると、低HDLコレステロール血症となり、動脈硬化のリスクが上がります。
HDLコレステロールは、肥満や喫煙で減り、運動や適度な飲酒で増えます。
2.中性脂肪の異常
中性脂肪は、エネルギーを貯蔵したり、体温維持をする働きがあり、ホルモンの材料にもなるので、ある程度は必要です。一方で体脂肪のもとにもなり、過剰に蓄積されると肥満の原因となります。
・高トリグリセリド(中性脂肪)血症
血液中の脂肪である中性脂肪は、運動不足、食べ過ぎ、アルコールの飲みすぎ、脂質や糖質の摂り過ぎなどが原因です。中性脂肪が消費されないと、脂肪細胞の中に蓄えられて、皮下脂肪や内臓脂肪が増える原因になります。
コレステロールにも中性脂肪にも生命活動において重要な役割がありますが、生活習慣などの影響で、健康を害するリスク要因にもなるのです。
脂質数値の基準値とは?
脂質の異常は、採血の結果から確認ができます。それぞれの基準値は以下です。
LDLコレステロール
基準値は60~119mg/dl。120mg/dl以上で高値。
HDLコレステロール
基準値は40mg/dl以上。39mg/dl以下で低値。
中性脂肪
基準値は30~149mg/dl。150mg/dl以上で高値。
生活上の注意点
脂質異常症は、食事や運動習慣などの見直しを行うことで、改善することが多々あります。
この機会に次の生活習慣を見直してみましょう。
1.食べ過ぎ・肥満を予防
肥満を改善すると、脂質の値も改善することが多くあります。体重を把握し、肥満の場合は改善に努めましょう。
また、日頃から食べ過ぎや、甘い物や炭水化物に含まれる糖質や脂っこい料理、脂質の多い食事をしている方、アルコールやジュースなどが多い方は量を見直してみましょう。
2.夜遅い食事には注意
活動量の低い夜遅くに食事をすることで代謝が低下し、脂質異常症の原因となります。
夕食の量や内容を変えるだけで、脂質の値をコントロールしやすくなります。残業などで夜遅くに食事をする場合は、ごはんや麺類などの炭水化物は控えめに、脂っこい食事を控え、消化の良い食事を心がけましょう。
3.脂肪の質を考える
脂質の種類にも目を向けてみましょう。肉の脂身や乳製品、卵などの摂り過ぎは脂質異常症につながります。偏らないようにし、魚類や大豆製品も意識して摂りましょう。
間食に脂質の多いスナック菓子や洋菓子などをよく食べる方も要注意です。
4.野菜・海藻類・きのこ類はしっかりと
食物繊維が豊富な野菜、海藻類、きのこ類は、脂肪やコレステロールの吸収を抑えます。これらの摂取不足も脂質異常症に影響します。
毎食必ず小鉢1皿以上の野菜、海藻類、きのこ類をとるように心がけましょう。また、食事の一口目は、野菜から摂りましょう。
5.運動もあわせて行いましょう
食事と運動を一緒に行った方が早期の改善が期待できます。有効といわれているのが毎日30分以上の有酸素運動。
まずは、生活の中で歩くことを増やすところから始め、慣れてきたら1日8千~1万歩を目指してみましょう。また、休日も散歩をしたり、気分転換に好きなスポーツをするのもよいですね。
<執筆者プロフィール>
桜 イクミ(さくら・いくみ)
管理栄養士・健康運動指導士・フードスペシャリスト
株式会社 とらうべ 社員。病院での栄養管理・栄養指導の経験を経て、現在は企業で働く人の食と健康指導を行っている
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku