じつはスゴイ「足湯の効果」を詳しく紹介
2017-03-11 18:30:17
執筆:吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
医療監修:株式会社とらうべ
ここ数年、足湯が人気です。この頃では、高速道路のサービスエリアや道の駅などでも見かける機会が増えてきました。
この足湯、健康面では何か良い効果は期待できるのでしょうか?
今回は、この「足湯の効果」について解説していきます。
足湯はじつは昔からある
足湯とは、文字通りひざ下から足先にかけてのみ、お湯に浸かる部分浴です。
「足湯」と聞くと、温泉地や休憩所などにあるというイメージが強いかもしれません。
ただ、医療や介護の現場では「足浴」として、以前から全身浴ができない患者さんに対して行われていました。
全身浴は、全身にかかる水圧も大きく、とくに心肺機能が弱い方にとっては負担がかかることがあります。一方で、足湯(足浴)は、身体に負担がかからず、手軽に行える方法です。
また、全身に対してさまざまな健康上の効果ももたらします。
次からどんな効果が期待できるのか、説明していきましょう。
足湯の健康効果
足の中でもふくらはぎは、下半身にたまった血液を心臓に送り返す働きがあることから、「第二の心臓」とも呼ばれている場所です。
そのため、足湯のときにふくらはぎもお湯に浸かるようにすることで、足だけでなく、全身にも良い効果をもたらすと考えられています。
具体的には次のような健康効果が期待できます。
全身に対する保温効果
足湯をすることで、足先の血液を温めることができます。さらに、温まった血液は、ふくらはぎのポンプによって全身に送られます。
そのため足だけではなく、全身にも温かい血液が巡り、カラダ全体を温めることができます。
これまでの実験で、42度のお湯に15分間足浴すると、足浴後25分経っても体温を高く保持できることがわかっています。
睡眠を促す効果
身体の保温効果を期待するためには、42度で15分間というお話をしましたが、この時間を短くすると、睡眠を促す効果が期待できることがわかっています。
ヒトは、深部体温(カラダの内部の温度)が急激に下がることでスムーズに眠りにつくことができます。
42度のお湯で10分間未満の足湯を行うと、足湯後、深部体温が速やかに下がり、眠りにつきやすくなることがわかっています。
足のむくみを解消する
ふくらはぎや足先は、重力によって血液が下に向かって流れるため、血液中の老廃物がたまりやすく、むくみやすい場所です。
そこで足湯をすることで、温められた部分から血行が良くなり、溜まっていた老廃物が流されるため、むくみ解消の効果が期待できます。
免疫機能をアップさせる
ある実験(※)によると、足湯を続けることで、「NK(ナチュラルキラー)細胞」が活性化したことが分かりました。NK細胞は、がん細胞やウィルスなどを攻撃する働きがあり、免疫機能にとって重要な役割を果たしています。そのため、足湯をすることで、細胞レベルの免疫機能が向上するのではないか、という指摘があります。
リラックス効果
足湯には、副交感神経の働きを高め、全身をリラックスさせる効果があります。
また、公共の場所に設置されている足湯の場合、しばらくの時間その場に滞在するため、その場にいる人たちとの会話が生まれることも、ストレス解消につながると考えられます。
こんな方におすすめ!
このように、足湯にはさまざまな効果が期待できます。また、最初にお話したように、身体への負担が少なくてすむことも魅力のひとつです。
そのため、とくに次のような方におすすめできます。
・高齢者や心肺機能が弱い方
全身浴の場合、胸やお腹に水圧がかかって血圧や呼吸数が上昇することがわかっています。その点、足湯はこのような心配がなく、高齢者や心肺機能が弱い人にとっても安心して楽しめる入浴法です。
・風邪などで入浴が難しい方
風邪など、免疫力が低下している時に全身浴をすると、湯冷めをしてかえって悪化させることがあります。そのため、このような時には、無理せず足湯や手湯などの入浴法をおすすめします。
・産後のお母さん
体力が低下している産後は、細菌に対する抵抗力も落ちています。そのため、産後1カ月はシャワーは可能ですが、入浴はできません。しかし、「それでもお風呂でリラックスしたい」というお母さんたちは多いはず。そんなときは、足湯をしてみましょう。カラダもココロもリラックスできることでしょう。
足湯の注意点:レジオネラ症
ここまでお話してきたように、足湯にはさまざまな効果が期待できますが、注意したい点もります。
それは、「レジオネラ症」への感染です。
レジオネラ症は、「レジオネラ属菌」を吸い込むことによって発症する感染症です。レジオネラ症は、「レジオネラ肺炎」と「ポンティアック熱」という2種類があります。
ポンティアアク熱の場合は、1~2日間の潜伏期間の後、発熱、倦怠感、頭痛といった症状が現れますが、その後自然に治癒していきます。
しかし、レジオネラ肺炎の場合は、2~10日間の潜伏期間の後、倦怠感、頭痛、筋肉痛の症状に加えて、せきや痰、高熱、悪寒などの症状が現れ、適切な治療が行われないと、死に至ることもあります。
レジオネラ属菌は、循環式の浴槽などの人工的な水循環の中で繁殖することがわかっています。
そのため、24時間の循環式風呂などはレジオネラ属菌が発症しやすく、温泉施設などでもきちんとした衛生管理が求められています。ところが、足湯の場合は十分な衛生管理が行き届いておらず、過去に行われた調査では、対象施設の25%でレジオネラ属菌が発見されたことが報告されています。
レジオネラ症は健康な人でも発症しますが、免疫力の低いときに発症する確率が高くなることが分かっています。
足湯に入っただけで即感染するというわけではありませんが、体調が悪いときや抵抗力が落ちているときには、ご自宅での足湯をおすすめします。
またレジオネラ肺炎は、適切な治療を受けることで死のリスクを軽減できる病気です。
そのため、もし公共の足湯施設を利用した数日後に体調が悪化した場合は、病院を受診するようにしましょう。
【参考】
(※)
『細胞性免疫能とストレスホルモン分泌に対する湯田温泉の足湯入浴の影響(第57回日本体力医学会中国・四国地方会)』(http://ci.nii.ac.jp/naid/110004821415/en)
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku