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今、妻が退職したら税金はどうなる?

2017-05-03 07:00:00

夫の視点から見た場合

まずは、夫の視点から見ていくことにします。

税務上、夫の扶養に入るかどうかチェック

妻が退職した場合、真っ先に思いつくのが、夫の扶養に妻が入るかどうか、です。
つまり、税金の視点で言いますと、夫が税務上『配偶者控除』(注1)を受けられるかどうか、ということです。
もし『配偶者控除』が受けられるならば、夫は勤め先に報告して、それ以後の夫の給与計算にて、扶養親族に妻の分(1人分)を追加して源泉所得税を計算してもらうようにします。
毎月の給与から天引きされる源泉所得税が少なくなりますので、その分手取り額も増えます。

では、『配偶者控除』を受けられるかどうか、どのように判断するのでしょうか?
ここで大きなポイントになるのが、『合計所得金額が38万円』以下かどうかです。

妻が退職した時点で、その年の妻の給与収入が103万円以下ならば、
[給与収入103万円以下]-[給与所得控除65万円](注2)=[給与所得38万円以下]
となるため、夫が配偶者控除を受けることができる可能性があります。

 

ただし仮に給与収入が103万円以下であっても、妻が退職金をもらっている場合には、その退職金の額によっては、『合計所得金額38万円』を超えてしまい、配偶者控除を受けられないこともありますので(注3)ご注意ください。(他の所得がある場合も同様です。)

ではここで、簡単な例を使いながら、『配偶者控除』を受けられるかどうか見ていきます。
(以下、【例1】~【例4】での収入は、いずれも妻が退職した年のものと仮定して話を進めます。)

【例1】 退職した妻の給与収入100万円のみで、退職金その他は0円
→給与収入のみの場合は、単純に103万円以下かどうかで判断。
103万円>[給与100万円]なので、配偶者控除OK。

【例2】 退職した妻の給与収入110万円のみで、退職金その他は0円
→給与収入のみなので、上記【例1】と同じく103万円以下かどうかで判断。
103万円<[給与110万円]なので、配偶者控除NG。
(ただし、年末調整で配偶者特別控除(注4)は受けられます。)

【例3】 退職した妻の給与収入100万円+退職金100万円(勤務年数3年)
→給与収入以外にも収入がある場合は、合計の所得金額が38万円以下かどうかで判断。
[給与100万円]-[給与所得控除65万円]=[給与所得35万円]
([退職金100万円]-[退職所得控除40万円]×3年)×50%<0=[退職所得0円]
38万円>[合計所得金額35万円]なので、配偶者控除OK。

【例4】 退職した妻の給与収入100万円+退職金300万円(勤務年数3年)
→給与収入以外にも収入があるので、上記【例4】と同じく、合計の所得金額が38万円以下かどうかで判断。
[給与100万円]-[給与所得控除65万円]=[給与所得35万円]
([退職金300万円]-[退職所得控除40万円]×3年)×50%=[退職所得90万円]
38万円<[合計所得金額125万円]なので、配偶者控除NG。

夫が法人経営者あるいは個人事業主の場合

もし夫が法人経営者あるいは個人事業主の場合、状況に応じて、次の事項を検討してみてもいいかもしれません。

・夫が法人経営者の場合、退職後の妻は法人の使用人として働いてもらい、法人から給与を支給する
→その法人の節税につながり得る

・夫が個人事業主の場合、退職後の妻は専従者として働いてもらい、専従者給与を支給する
→個人事業主である夫の節税につながり得る

ただし、これらを検討する際には、専門的な判断やタイミング等がありますので、必ず専門家に相談してから具体的な対策をたてるようにしましょう。

妻の視点から見た場合

 

次に、妻の視点から見ていくことにします。

退職した妻の確定申告

 

退職した妻が再就職をして年末まで在籍すれば、再就職先で年末調整をしてもらえます。
一方、再就職をしなかった場合、退職した元勤務先では年末調整を行っていないはずですので、確定申告が必要になります。
(なお元勤務先の給与から源泉徴収されていて、退職後に収入がない場合には、確定申告することで還付される可能性があります。)

住民税の納付をご自身で行う場合があるので注意

例えば平成29年7月に妻が退職したとして、元勤務先の給与から住民税が天引きされていた場合で、その後も再就職しなかった場合について見ていきます。

まず、平成29年8月~平成30年5月分の給与から天引きされるべきだった住民税について。

この住民税は平成28年の所得に基づいて計算されたものになります。
この住民税については

① 最後の給与から一括して天引き
② 再就職する場合は、再就職先の給与から天引き
③ 妻自身で納付する
の3パターンのいずれかで納税することになります。
今回の例は再就職しなかった場合ですので、①か③になります。
もし③を選択された場合には、ご自身で納付を行うことになりますのでご注意ください。

以上は平成28年の所得に基づく住民税の取り扱いでしたが、それでは、平成29年の所得に基づく住民税、すなわち平成29年1月~退職月の7月までの給与にかかる分の住民税の取り扱いはどうなるのでしょうか。
その場合は、平成30年6月から、妻自身で住民税の納付を行うことになります。
(年間の住民税額を、4期に分けて納付することが多いです。例えば6月、8月、11月、翌1月など。)

以上のように、住民税は後払いの性質のあるものですので、妻が退職した後であっても、十分に注意が必要です。

(注1)その年の12月31日の現況で、配偶者(本記事では妻)が次の4つの要件の全てに当てはまる場合に受けられる所得控除。
(1)民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しません。)
(2)納税者と生計を一にしていること。
(3)年間の合計所得金額が38万円以下であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

(注2)給与所得控除は給与収入額により異なる。詳しくは下記の通り。
給与収入162.5万円以下→65万円
給与収入162.5万円超180万円以下→給与収入金額×40%
給与収入180万円超360万円以下→給与収入金額×30%+18万円
給与収入360万円超660万円以下→給与収入金額×20%+54万円
給与収入660万円超1000万円以下→給与収入金額×10%+120万円
給与収入1000万円超→220万円

(注3)『(退職金-退職所得控除額【下記*参照】)×50%』(一般的な場合)で計算した『退職所得』が0円より多い場合で、その他の所得も併せて合計所得金額が38万円を超える場合、仮に年間給与収入が103万円以下であっても、配偶者控除は受けられない。
【退職所得控除】
勤続年数20年以下→40万円×勤続年数(80万円未満の場合は、80万円)
勤続年数20年超→70万円×(勤続年数-20年)+800万円
なお、障害退職の場合、上記計算額+100万円

(注4)下記の要件をすべて満たした時に受けられる所得控除
(1)控除を受ける人(本記事では夫)のその年における合計所得金額が1千万円以下であること。
(2)配偶者(本記事では妻)が、次の五つの要件全てに当てはまること。
イ 民法の規定による配偶者であること。(内縁関係の人は該当しません。)
ロ 控除を受ける人と生計を一にしていること。
ハ その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ 他の人の扶養親族となっていないこと。
ホ 年間の合計所得金額が38万円超76万円未満であること。


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情報提供元: michill (ミチル)

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