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5月8日は世界赤十字デー。ちなみに「赤十字」をご存じですか?

2017-05-07 18:30:27


執筆:吉村 佑奈(助産師・保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
毎年5月8日は「世界赤十字デー」ということをご存じでしょうか。
世界赤十字デーは、国際赤十字組織の創設者であるアンリー・デュナンの誕生日にちなんで作られた記念日です。
ところで「赤十字」とはなんなのでしょう?
名前を知っていても、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、「赤十字」について、詳しくご紹介したいと思います。

国際赤十字組織の誕生と活動内容


国際赤十字組織は、スイス人のアンリー・デュナンが行った活動から誕生した組織です。
アンリー・デュナンはもともと実業家でした。
しかし、1859年のイタリア統一戦が行われた激戦地の様子を目の当たりにし、敵・味方関係なく、戦争で傷ついた人たちを助けるための活動を始めました。
その後、彼の考えに賛同するメンバー4人を加えて1863年に結成されたのが「赤十字国際委員会(ICRC)」です。
さらに1年後の1864年、ヨーロッパ外交会議で最初のジュネーブ条約(赤十字条約)が採択され、正式に国際赤十字組織が誕生しました。
ICRCや世界各地の国際赤十字組織は、2度の世界大戦やさまざまな紛争を経験する中で、戦争で負傷した兵士だけでなく、戦争捕虜や戦争によって離れ離れになった家族、さらには一般市民へと支援の対象や活動範囲を広げてきました。
また、活動内容も負傷者の救護やボランティアの派遣、支援物資の調達などの活動から、報復した戦闘員が人道的に扱われているかなど、戦争が国際的なルールのもとで行われるように監視・警告する活動まで多岐にわたっています。
さらに、赤十字組織は、戦争などの人災だけでなく、地震や津波といった天災の被災者支援も行っています。

赤十字7原則とは


1965年に行われた第20回赤十字国際会議の中で「国際赤十字・赤新月運動の基本原則」が宣言されました。
これは「赤十字7原則」ともいわれ、現在もこの7原則に基づいて活動が行われています。

(1)人道(Humanity)
 人間のいのちと健康、尊厳を守るため、苦痛の予防と軽減に努めます。
(2)公平(Impartiality)
 いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を優先します。
(3)中立(Neutrality)
 すべての人の信頼を得て活動するため、いっさいの争いに加わりません。
(4)独立(Independence)
 国や他の援助機関の人道活動に協力しますが、赤十字としての自主性を保ちます。
(5)奉仕(Voluntary Service)
 利益を求めず、人を救うため、自発的に行動します。
(6)単一(Unity)
 国内で唯一の赤十字社として、すべての人に開かれた活動を進めます。
(7)世界性(Universality)
 世界に広がる赤十字のネットワークを生かし、互いの力を合わせて行動します。

※引用元:※出典「ICRCホームページ」http://jp.icrc.org/movement/

「赤十字」マークは1つではない


ところで「赤十字のマーク」と言われた時、すぐに思い浮かびますでしょうか?
赤十字マークは、赤十字の組織・施設や彼らに保護されている負傷者を守るために作られたマークです。
ジュネーブ条約では、赤十字マークをつけている施設や組織・救護員を攻撃することを禁じていて、遠くの戦闘員から攻撃されないように、白地に赤という目立つマークになっています。
日本でよく知られているのは白地に赤の十字が書かれているマークですね。
これはアンリー・デュナンの祖国であるスイス国旗の配色を反転させて作られたものです。
ただ、十字がキリスト教を連想させるということで、イスラム教の国では白地に赤い月が描かれている「赤新月」というマークが使われることが多いようです。
さらに、2007年には、白地に赤いひし形が描かれている「レッドクリスタル」と呼ばれるマークも追加されました。
レッドクリスタルのひし形の枠は赤字ですが、中は白抜きになっていて、各国独自のマークが入れられるようになっています。

日本での活動:日本赤十字社


赤十字の組織は、世界190か国以上で展開されています。
日本も例外ではなく、「日本赤十字社」が活動を行っています。
日本赤十字社は、1877年・西南戦争の際に創られた「博愛社」という救護団体を前身としています。
その後、1887年に日本がジュネーブ条約に調印したことから、現在の名前に変わりました。
日本赤十字社は、「わたしたちは、苦しんでいる人を救いたいという思いを集結し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守ります。」という使命と国際赤十字組織が掲げる7原則に基づき、活動を行っています。
日本赤十字社は、国内外でさまざまな活動を行っています。
その一例として、国内で行われている東日本大震災に関連した活動を挙げてみましょう。
日本赤十字社では、世界中の赤十字組織から集められた義援金をもとに、生活再建、福祉サービス、教育支援、医療支援、災害対応能力強化、原発事故強化などの分野で被災者支援を行ってきました。
ほかにも台風や大雨災害時の救護班や災害医療チーム、こころのケアチームの派遣、救護物資の配布、地域医療・災害医療を行う赤十字病院を通しての人材育成などの取り組みなども行われています。
国際赤十字組織を設立したアンリー・デュナンは、その功績が評価され、1901年にノーベル平和賞を受賞しました。
5月8日は世界赤十字デー。
これをきっかけに赤十字の取り組みや平和について考えてみるのもよいかもしれませんね。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
助産師・保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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