「うつ病」と間違えやすい、べつの病気
2017-05-20 18:30:26
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
うつ病の基本症状である「抑うつ症状」。
いわゆる気分が落ち込んでしまう状態が続くことですが、この抑うつ状態はうつ病だけでなく、ほかの病気の症状として現れることもあります。
ですから、専門医は診断を慎重に見極める必要があると考えています。
なぜならば治療法が違ってくるからです。
うつ病と間違えられやすいのは、どのような病気なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
うつ病と間違えやすい病気:不安障害
かつては神経症(ノイローゼ)と呼ばれていた不安障害は、考え方のクセや人間関係など心理・社会的なストレスが引き金になって発病するといわれます。
また、性格的に神経質でこだわりやすい真面目な人が、こうした疾患にかかりやすいとも言われてきました。
うつ病の病前性格も真面目で、執着的な人が多いと言われ、うつ病にもかかりやすいとされています。
うつ病と間違えやすい病気:心身症
心身症は、ストレスなど心理・社会的な原因によって身体的な症状や病変が起こっている病気です。
いわゆる気の病いが身体の不調に転じている疾患です。
ストレスやこれに伴って生じる抑うつ状態が、蕁麻疹、気管支喘息、偏頭痛、胃・十二指腸潰瘍など、身体の病気に現れていれば心身症となり、そうでなければうつ病の可能性が疑われます。
うつ病と間違えやすい病気:統合失調症
かつては精神分裂病といわれた「統合失調症」。
急性期には「妄想」「幻覚」などの陽性反応が起きることと、慢性期になると、「意欲の減退」「感情の平板化」など陰性症状をきたすことはよく知られるようになりました。
昨今、統合失調症の発病時期と慢性期に「抑うつ状態」になることが指摘されていて、とくに、初期段階でうつ病との鑑別は難しいという専門医の意見もあります。
昔は「精神分裂病」と「内因性うつ病」は精神疾患を二分する典型的な精神病でしたが、最近では、統合失調症に抑うつ状態が診られたり、うつ病に妄想がみられたりと、まるで症状も非定型化しているような印象を受けます。
うつ病と間違えやすい病気:認知症
高齢者のうつ病は認知症と区別がつきにくいことは、専門医からも指摘されているところで、「もの忘れがひどい」「ぼんやりして、質問しても答えが返ってこない(反応が鈍い)」など、うつ病の症状なのか、認知症の症状なのかを鑑別するのは難しいとのこと。
アルツハイマー型の認知症では、最初にもの忘れから始まって、次第に抑うつ状態になり、脳血管性認知症では、初期や経過中に抑うつ状態がみられるなど、認知症の種類によって抑うつ状態のでかたも違ってくるようです。
とくに、脳血管性認知症はうつ病との間違われやすいとされています。
うつ病と間違えやすい病気:慢性疲労症候群
原因不明の強い疲労感が長期間継続する「慢性疲労症候群」。
強い疲労感のほかに、身体的には、微熱、リンパ節のはれ、関節痛などが出ると同時に、精神面では、ものわすれや思考力の低下、睡眠障害などとともに、抑うつ状態などうつ病の症状があらわれます。
うつ病と間違えやすい病気:パーキンソン病
脳細胞に変性が起こり、動作が遅くなる、手足が震える、歩行が遅くなるなど症状が現れるパーキンソン病。
顔の表情が乏しくなったり、話し方が単調になってしまうなど、その症状がうつ病と間違われることがあるそうです。
うつ病と間違えやすい病気:そのほか
以上のほか、脳卒中などの脳血管障害、糖尿病、腎臓病、甲状腺の病気、パーソナリティ障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、アルコール依存症なども、うつ病と似た症状が起こることがあって、うつ病と間違われやすい病気とされています。
うつ病と双極性障害(躁うつ病)
精神疾患の世界的基準となっている、アメリカ精神医学会発行の『DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き;最新版)』は、19年ぶりに2013年に改訂されました。
以前のDSM-Ⅳと比べると大きく変化したところがいくつかあります。
中でも、DSM-Ⅳまでは、同じ「気分障害」に分類されていたうつ病と躁うつ病が、「抑うつ障害群」と「双極性障害および関連障害群」という違ったカテゴリーに分類されています。
これもまた、双極性障害(躁うつ病)をうつ病とは違った病気として診断・治療していくという動向だと解されます。素人には間違われやすいかもしれません。
【参考】
・アステラス製薬株式会社『なるはど病気ガイド・うつ病と間違われやすい病気(https://www.astellas.com/jp/health/healthcare/depression/preliminary02.html)
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku