物流2024年問題で私たち消費者ができることは?
2023-11-29 09:00:02
2024年4月1日より、働き方改革関連法においてトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されます。これに伴う物流にまつわる諸問題を「物流2024年問題」と呼び、物流業界は対応策を講じています。
今回は、物流2024年問題への対応策を講じている企業の一つであるネスレ日本株式会社にインタビュー。さらに、消費者ができることについて、サステナビリティ消費者会議代表を務める消費生活アドバイザーの古谷由紀子さんにお話をうかがいました。
■ネスレ日本がモーダルシフトをさらに促進
ネスレ日本は従来より、自社製品などの輸送に関してモーダルシフトというトラック等などの自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する取り組みを行ってきました。
モーダルシフトの貨物鉄道や船舶を用いた輸送は、一度に大量輸送が可能となることから、トラック輸送よりも環境負荷が小さいだけでなく、トラックドライバーの負担軽減にもつながる点が注目されており、物流2024年問題への対応策の一つとなっています。
そしてネスレ日本は2023年9月、長距離輸送を対象としてきた貨物鉄道による輸送を、より貨物量の多い中距離輸送にも2024年2月より段階的に拡大し、持続可能な物流モデルの構築に向けて日本貨物鉄道株式会社とそのグループ会社である全国通運株式会社、日本運輸倉庫株式会社と共同で取り組みを進めることに合意しました。
2023年 9 月 1 日(金)に実施した、4社による調印式の様子
モーダルシフトへの取り組みについて、ネスレ日本のサプライ・チェーン・マネジメント本部 物流部のプロジェクト マネージャーの坂口治夫さんと物流企画課課長の伊澤雄太さんにお話をうかがいました。
ーモーダルシフトに取り組まれている背景について教えてください。
「世界188ヶ国で事業を展開するネスレが世界各国で事業活動を行う上での根幹にある、皆さま、そして社会や地球にとって有益であることを目指す『共通価値の創造(Creating Shared Value = CSV)』の考えのもと、ネスレ日本は多岐にわたる分野でサステナビリティを推進しています。そのなかで、私たちの所属するサプライ・チェーン・マネジメント本部では、環境負荷の少ない物流の実現を目指して、以前よりさまざまな活動を行っています。
また、将来的な日本の人口動態、世界的な環境課題を考えると『持続可能な物流』に取り組む必要性・必然性については年々危機意識を高めており、迅速な対応により業界をリードしてきたという自負もあります」
ーネスレ日本としてモーダルシフトを進めることは、消費者にとってどのような意味がありますか?
「ネスレ日本では『ネスカフェ』をはじめとしたコーヒーや、チョコレート菓子『キットカット』などを製造・販売していますが、どんなに良い製品を作りたいと思っても、原材料や包装材料を運べないと、製品を作ることができません。また、良い製品・おいしい製品を作っても、お客様にお届けできなければ意味がありません。
物流は、生活に不可欠な物資を運搬するなど社会にとって重要な役割を担っています。日本では、トラックドライバーの人員不足などにより、今後、物が届かなくなるなどの問題が起きると予想されています。モーダルシフトは、トラックなどの車両輸送と比較して環境負荷が少ないだけでなく、トラックドライバーの長距離走行を減らすことができるため、トラックドライバーの負担軽減の一助にもなる点も注目されています。
今回のモーダルシフトをより貨物量の多い中距離輸送にも段階的に拡大する取り組みをはじめとして、今後も、皆様においしい飲料・食品を楽しんでいただけるように持続可能な物流の実現に向けて尽力してまいります」
■消費者ができること
消費者もECの買い物の再配達を減らす、まとめ買いをするなど、物流2024年問題に関して取り組めることがあります。
消費者がどんな取り組みができるのか古谷さんは次の3つを挙げてくれました。
1.持続可能な社会を共につくる認識が必要
「現在、気候変動といった地球の持続可能性のみならず、一人ひとりを大切にするという人権尊重が社会の持続可能性として求められています。安く、便利であるという消費者の利益を追求していくことが、働く人に過重な労働を強いることにならないよう、国、事業者、労働者、消費者が連携してよりよい社会にしていくようにしたいものです」
2.送料無料の表記を理解する
「ECでよく行われている『送料無料』は、運送料が無料という誤認識にもつながります。そのため、EC事業者は商品価格を下げるという表記にすべきだと思われます。消費者としては誤解のないようにとらえておくことが大切です」
3.まとめ注文や再配達を減らす
「消費者自らまとめて注文したり、再配達を防止したりすることで、トラック配送回数が減ります。また国・EC事業者・消費者団体等の消費者への啓発も求められるでしょう」
物流2024年問題への対応策として、物流各社やメーカー、EC事業者はもちろんのこと、消費者も取り組めることはあります。社会貢献のために、自分の買い物を見直してみるのも良いかもしれません。
【取材協力】
ネスレ日本「サステナビリティ | 共通価値の創造」(https://www.nestle.co.jp/csv/whatiscsv)
ネスレ日本、JR 貨物グループとの連携により トラック輸送から貨物鉄道輸送への移行をさらに加速 ~トラックドライバーの負担軽減や、二酸化炭素(CO2)排出削減に貢献~(https://www.nestle.co.jp/sites/g/files/pydnoa331/files/2023-09/20230904_nestle.pdf)
古谷 由紀子さん
博士(総合政策),サステナビリティ消費者会議代表,(一財)CSO ネットワーク代表理事。
消費者庁「消費者志向経営の推進に関する有識者検討会」や経産省・総務省「企業のプライバシーガバナンスモデル検討会」などのほか企業の品質やデジタルなどの委員を務める。専門分野は、CSRや人権などサステナビリティ、消費者志向経営など。主な著作物は、「現代の消費者主権」芙蓉書房出版(2017)、「『責任あるビジネス』における実践と課題」JABES(2020)。
情報提供元: マガジンサミット