「パーソナリティ障害」とはどういうもの?
2017-07-06 18:30:19
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
考え方、感じ方や行動パターンが偏っているため、学校や職場、家庭などでかなりの支障をきたしている状態のパーソナリティ障害。
はたして、病気なのか偏った性格の傾向なのか。実は精神科医でもその判定は難しいそうです。
今回はそんなパーソナリティ障害について、ご説明していきましょう。
パーソナリティ障害とは
パーソナリティ障害はかつて、「精神病質」「人格障害」と呼ばれていました。
「精神病質」は「性格の偏りのために自分で苦しんだり、周囲を苦しめている」という概念で、犯罪などを起こす異常者のイメージを持たれた用語でもありました。
また、「人格障害」も、人格という日本語に道徳性と結びついた「人格者」といったイメージがあります。ですから、誤解を招かないようにと、現在では「パーソナリティ障害」と呼ばれています。
パーソナリティ障害は、考え方、受け止め方や振るまいが、いちじるしく普通から逸脱した性格です。
つねに同じパタンでトラブルを繰り返すので、本人や周囲が苦痛を感じている場合もあります。
そこで、パーソナリティ障害と診断され、治療を施されることもあります。
パーソナリティ障害の種類:3つのグループと10のタイプ
『DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き:最新版、アメリカ精神医学会)』では、パーソナリティ障害は3つのグループと10のタイプに分類されています。
日本とアメリカでは社会や文化が違うので、そのまま日本人に当てはめることはできません。
また、タイプ分けには、治療が必要ない人を「病人」扱いしたり、不当に恐れて近づかなかったり、異常扱いしてしまうデメリットもあります。
そこにに留意しながら、あくまで理解の目安としてください。
A群パーソナリティ障害:疑り深く風変わりなタイプ
猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害
不信感が強く、根拠もないのに他者が自分をだましていると考える。親密な人間関係を築けず、変人として扱われやすい。
シゾイド・パーソナリティ障害
感情表現に乏しく、親密な人間関係を避け、自分の世界に引きこもる傾向。
統合失調型パーソナリティ障害
奇妙な思考や行動が特徴。現実離れしていて、他人との関係を築くのが苦手。
B群パーソナリティ障害:気まぐれで衝動的なタイプ。周囲が巻き込まれやすい
反社会性パーソナリティ障害
攻撃的・衝動的で、倫理観や道徳観が薄く、問題行動を起こしやすい。人をだます傾向。良心の呵責がなく、犯罪を繰り返し行うことも指摘されている。
境界性パーソナリティ障害
周囲に依存し、周囲が支えきれなくなると激しい反応を示す。感情が不安定で、見捨てられ不安が強く、他者への評価も賞賛と幻滅が入れ替わる。
演技性パーソナリティ障害
自分が悲劇の主人公と思いたがり、他人の注目をひくための行動を繰り返す。化粧や服装に凝ったり、自己中心的で感情的。
自己愛性パーソナリティ障害
他人を思いやることに乏しく、自分を誇示し、賞賛を集めることを求める。共感の欠如も特徴。
C群パーソナリティ障害:不安が強く臆病で、日本的美徳をもったタイプ
回避性パーソナリティ障害
親しい人間関係を求めながら、傷つくことを恐れて、いつも逃げてばかりいる。社会的な引きこもりになりやすい。
依存性パーソナリティ障害
自分で何かを決めたり、判断できず、一人でいられない。不安や無力感が強い。
強迫性パーソナリティ障害
完璧主義で、自分のやり方に固執する頑固なタイプ。他人にも完全を望む。娯楽や友人関係より、仕事を優先する。
パーソナリティ障害の原因は複雑?
1980年代以降パーソナリティ障害は増え始めていると言われます。
核家族化による逃げ場のない密接な親子関係。
手厚い過保護によって、ちやほやされる、叱られないといった、思い通りになる環境。
自分を環境に合わせるのでなく、環境を自分に合わせる技術の発展など、一方でパー&ソナリティ障害の「社会的要因」が指摘されるとともに、双子研究や脳の発達障害の及ぼす影響としての「生物学的要因」も明らかにしつつあるのが、昨今の研究動向です。
「遺伝」「脳の機能障害」「環境・育て方」「社会状況・時代背景」「別離や失敗など急激な変化」が複雑に絡んで、パーソナリティ障害は起きると考えられています。
【参考】
市橋秀夫 監修『パーソナリティ障害のことがよくわかる本』講談社健康ライブラリー、2014.
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku