お酒を飲んだらよく眠れない? よく眠れる方法は?
2017-07-15 18:30:49
執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
昔から「寝酒」「ナイト・キャップ」などのコトバがあります。
世界中で入眠のためにお酒を飲む風習があるということですね。
近頃では睡眠障害がよく話題に上ります。とくに、日本人は睡眠の改善のために睡眠薬やサプリメントより、アルコール飲料を活用している比率が高いといわれます。
今ではNGともいわれるこの方法ですが、それでもメリットはあるのでしょうか。
ご一緒に詳しく見ていきましょう。
お酒と酔い:眠りを誘う効果について
アルコールにはリラックス効果や血行を促す効果もあります。
同時に、高くなった体温が比較的急激に下がるため、寝つきをよくする効果として奨励されるものです。
このあたりが、「寝酒」「ナイト・キャップ」などお酒が安眠を促進するとされた理由かと思われます。
しかし、適量や時間などを間違えると、睡眠の質を落とし、かえって眠りを浅くしてしまう逆効果ともなります。
飲酒量の問題
飲酒をすると、アルコールが胃腸で吸収されて、血液に溶け込み、脳に運ばれてマヒが起こります。これが「酔い」という現象です。マヒの度合いは「飲んだ量」、つまり、血液中のアルコール濃度によります。アルコールの代謝能力には個人差がありますが、「適量」以上になると、体調や睡眠にとってはよくないことが検証されています。
飲酒時間の問題
アルコールが体内に吸収され、分解されるまでにかかる時間は、およそ3時間といわれています。
アルコールが分解されて「アセトアルデヒト」に変化し、排出されるのにかかる時間です。アセトアルデヒトは交感神経を刺激するので、安眠を妨げてしまいます。
ですから、就寝前にはアルコールがしっかりと分解されていないと安眠できません。
耐性や依存性の問題
多量のアルコールを毎日飲み続けていると、催眠効果は次第に弱まり、アルコール耐性ができてしまいます。
結果、量を増やさないと睡眠時間が短くなるという悪循環に陥ります。
最悪、アルコール中毒になってしまうリスクを抱えることになります。
睡眠の質が悪くなること
アルコール量が増えることで睡眠の質が落ちることは、飲酒量によって睡眠前半の深い睡眠は増えるものの、睡眠後半に浅い睡眠が増えて、中途覚醒を促進することが挙げられています。
これに上に挙げた耐性が加わります。
「飲んでいるとそのうち眠りが浅くなる、また、もっと飲まないと眠れないようになっていく」ということですね。
このほかにも、いくつか挙げられています。
ビールの飲みすぎによる頻尿
眠っているあいだは抗利尿ホルモンが分泌され、おしっこが作られにくくなっています。
しかし、アルコールがこのホルモンの働きを妨げます。
とくにビールは、水分を外に排出する作用のあるカリウムがたくさん含まれるため、トイレが近くなりやすいです。
加えて、アルコールの影響で睡眠が浅くなり、夜中にトイレに立つ回数が増えます。
イビキの問題
アルコールは舌の筋肉をマヒさせ、仰向けに眠った時に、舌がのどに落ちやすくしてしまいます。
さらに、鼻の血行をよくするので、粘膜が腫れて鼻が詰まりやすくもなります。
これらの結果、鼻から喉にかけて空気の通りが狭くなり、イビキをかきやすくなるとのこと。
これもまた、中途覚醒を増やし熟睡感を減らしてしまいます。
飲んでも快眠するには?
適量の飲酒と寝る3時間前にはお酒をやめる、ということを前提として、ぐっすり眠るための上手なお酒の飲み方として、次のようなことが挙げられています。
空腹状態でお酒を飲まない
急激なアルコール吸収や血中アルコール濃度を上げないよう、また、胃を刺激しすぎないよう、空腹状態でお酒を飲まないようにしましょう。
食事をしながら飲む
胃腸の負担を軽くするためにも、いっしょにタンパク質や脂質を含んだ料理を食べましょう。
タンパク質はアルコールの分解を促す役目も果たしてくれます。
強いお酒は水で薄め、お酒といっしょに水も飲む
アルコールだけだと却って脱水症状も促進されます。チェイサー(やわらぎ水)は、文字通り、胃腸にやさしい先人の知恵です。
軽めのシャワーを浴びる
お風呂で湯船に浸かると血行を活発にし、酔いが回りやすく危険です。軽めのシャワーだと、身体への負担も少なく、翌朝のスッキリ感につながることも。
抱き枕で横向きに寝る
仰向けのリスクは「イビキ」の項で解説しました。横向きで寝ると、喉がはれたり舌が呼吸の通り道をふさぐことを改善することが可能です。
鼻呼吸をする
イビキや睡眠時無呼吸を避けるためにも、風邪やインフルエンザをひきにくくする意味でも、「口閉じテープ」で鼻呼吸を確保することもおすすめです。
口閉じテープはドラッグストアで売っているそうです。
寝酒よりも晩酌を!
2015年に発表されたロイアルフィリップス社(米国、マサチューセッツ州)の調査によると、750名の日本人対象者への調査結果では、睡眠を改善するために睡眠薬やビタミン剤などを使わず、アルコール飲料を活用するのは、世界中でも日本人がトップだったとのこと。
しかし、寝酒やナイト・キャップを眠るための手段とするのは、以上に述べてきたようなリスクも多くあります。
ですから、「寝酒やナイト・キャップ」としてではなく、「晩酌」として夕食時に適量をたしなむことが、睡眠の質を落とさない飲酒といえるのではないでしょうか。
【参考】
『フィリップス、世界10ヵ国で睡眠に関する調査を実施。経済的なプレッシャーが、何千人もの人々の十分な睡眠に影響を及ぼしていることが判明』
(http://www.philips.co.jp/a-w/about/news/archive/standard/about/news/press/2015/20150320_Philips_world_sleep_day.html)
<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお・かおるこ)
助産師・保健師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku