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若い世代に増えている? 「子宮頚がん」を詳しく知ろう

2017-07-20 18:30:11


執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
女性のみなさん、「子宮頸がん検診」は受けていますか?
子宮頸がんは20代後半から30代にかけて発症率が高いがんで、近年、若い世代で患者数の増えていることが指摘されています。
今回は、この子宮頸がんについて解説します。

子宮頸がんとは


子宮の入り口付近にある子宮頸部に発生するがんのことを「子宮頸がん」といいます。
子宮頸がんの90%は、高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が原因です。
子宮頸がんにはいくつかのタイプがありますが、全体のおよそ80%が「扁平上皮がん」です。
子宮頸部は、身体の表面から膣へつながる部分にある「扁平上皮」と、子宮の内膜を覆っている「腺上皮」が接合している部分です。
この接合部分(移行帯)にある細胞がHPVに感染し、がん化することで起こるのが、扁平上皮がんです。
このほかには、「腺扁平上皮がん」や「腺がん」などのタイプがあり、最近では、「腺がん」も増えてきています。
ちなみに、子宮頸がんと併せて「子宮がん」と呼ばれるがんに、「子宮体がん」があります。ただ、子宮体がんは50代以降に発症しやすいがんで、原因やがんができる場所も異なります。
そのため、別の病気としてとらえた方がよいでしょう。

子宮頸がんの原因


HPVは性行為によって感染することがわかっています。
ただ、HPVへの感染自体は珍しいものではなく、50~80%の女性は、一生に一度は感染するともいわれています(※1)。
また、感染してもおよそ90%は2年以内に自然に排除されるため、「HPVへの感染=子宮頸がんの発症」というわけではありません。
しかし、中には高リスク型のHPVに持続感染してしまうことがあり、その場合、異形成(子宮頸部にがんになり得る細胞が増えていくこと)という状態を経て、子宮頸がんの発症に至ることがあります。
また、喫煙も子宮頸がんの発症リスクを高めます。
これまでの研究で、喫煙をしているとHPVの自然な排除が妨げられ、軽度異形成を起こす可能性が上がることがわかっています(※2)。
このほか、ピルの服用も子宮頸がんの発症に関係しているという指摘もあります。
これに関して、ピルに含まれるエストロゲンやプロゲステロンが発がんを促すのではないか、という説もありますが、まだはっきりしたことがわかっていません。
ただ、ピルを服用している場合、コンドームなどによる避妊が行われないことも少なくなく、このことも発症率を高める理由であるといわれています。
(※1:東京逓信病院『子宮がん』http://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/gan/gan_fujin/gan_fujin01.html)
(※2:藤田 宏行『子宮頸がんとその疫学』http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/123/123-5/fujita05.pdf)

子宮頸がんが若い世代に増えている理由


かつて子宮頸がんの好発年齢は、40~50代といわれていました。
しかし、近年は20~30代の若い女性の間で患者数が増えています。
この背景にあるのが、性交渉の低年齢化です。
若いうちに性交渉を経験するということは、それだけヒトパピローマウイルスに感染する機会も増えるということを意味します。
また日本は、先進国に比べて子宮頸がんの受診率が低く、このことも若年患者の増加に関係しています。
厚生労働省のデータ(※3)によると、2013年の子宮頸がん検診の受診率(20~69歳)は42.1%でした。
これに対して、アメリカは84.5%、イギリスは78.1%、ニュージーランドは77%と、日本に比べて受診率が倍近く高いのです。実際、検診率が高い先進国では、子宮頸がんの発症率が下がっています。
このことからも、検診を受けることがいかに重要かお分かりいただけるでしょう。
(※3:厚生労働省『平成28年度 がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン』http://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/campaign_28/outline/low.html)

子宮頸がん検診と治療


子宮頸がんは、早期発見することで治療がしやすく、病気の経過も良いがんのひとつです。
しかし、自覚症状はほとんどないため、自分で異変に気がついて受診することが難しい病気でもあります。
だからこそ、検診を受けることが非常に重要なのです。
検診では、問診や視診(器具を使って子宮頸部の炎症やおりものの状態を診る検査)に加えて、細胞診を行います。
細胞診ではブラシなどを用いて子宮頸部を採取しますが、痛みはほとんどありません。
これらの検診の結果、異常がある場合には精密検査が行われます。そして、そこでも異常が発見されたなら、個人の状態や妊娠希望の有無などを踏まえて、放射線治療や手術が行われます。
なお、精密検査の結果、「軽度異形成」や「中度異形成」であった場合には、主治医の指示のもと、定期的な精密検査が行われます。

子宮頸がんワクチンについて


子宮頸がんを予防する方法として注目されているのが、子宮頸がん予防ワクチンです。
子宮頸がん予防ワクチンは、WHO(世界保健機関)で推奨され、先進国でも公的接種としている国が多くあります。
日本でも2013年から定期接種となりました。
ところが、その後、ワクチン接種後の副反応が問題視されています。
副反応の症状としては、注射部の痛みや腫れ、疲労感などの比較的軽いものから、持続的な痛み、アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎など重篤なものまであります。重度な副反応は、まれなものだといわれていますが、その発生頻度については現在も調査が続けられています。
このような事態を受け、現在、厚生労働省では積極的な接種勧奨を差し控えています。
ただ、副反応が起こる頻度と、子宮頸がん予防ワクチンを受けることのメリットを比較した場合、ワクチンを受けるメリットの方が大きいことから、定期接種自体は現在も続けられています。
定期接種を受ける際は、副反応のリスクがあることを理解し、接種後に異変を感じた場合には、すぐに病院を受診するようにしましょう。
また、子宮頸がん予防ワクチンを受けた場合でも、定期的に子宮頸がん検診を受けることは必要です。
お伝えしたように、子宮頸がんは早期発見ができれば、治療が可能な病気です。
ただ、状態によっては妊娠や出産をあきらめなければいけないこともありますし、最悪の場合、死に至ることもあります。
自分の身体を自分で守るためにも、子宮頸がん検診をきちんと受診しましょう。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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