砂糖を摂らなければ、虫歯にはならない?
2017-09-03 18:30:10
執筆:影向 美樹(歯科医師)
子供の頃、「甘いものを食べ過ぎると虫歯になるよ!」と注意された経験は誰しもあるでしょう。
甘いものと言えば砂糖、この砂糖こそが虫歯の原因であることも今では周知の事実です。
それでは、砂糖さえ摂らなければ虫歯になることはないのでしょうか?
今回はこの疑問にお答えしながら、虫歯と砂糖との関係についてご紹介したいと思います。
砂糖以外の糖類も虫歯になる可能性はある
「砂糖だけが虫歯の原因になるのか?」という問いに対し、厳密に答えるなら「NO」となります。
そもそも虫歯は、虫歯菌が直接歯に穴を空けて起こるわけではありません。虫歯菌は自身が生きていくうえで必要な栄養素を体に取り込み、その栄養素をエネルギーに変える過程で発生した『酸』を外へ排出しています。
虫歯は虫歯菌が排出したこの『酸』によって、歯が溶かされることで起こります。
その虫歯菌の必要な栄養というのが『糖』です。
糖の代表格と言えば砂糖ですが、そのほかにも水あめやサツマイモに多く含まれる麦芽糖、牛乳やチーズなど含まれる乳糖などがあります。さらに細かく言えば、毎日食べるお米やパン、果物などにも糖は含まれています。
このように虫歯菌が好む糖は砂糖のみならず、私たちが普段から口にするあらゆる食べ物に存在しており、必ずしも砂糖だけが虫歯の原因になるとはかぎりません。
糖類の中で砂糖が1番虫歯になりやすい
多くの食べ物の中に虫歯菌の栄養となる糖は含まれているのに、なぜ砂糖だけが虫歯の大敵のように言われるのか、そこにはきちんとした理由があります。それは数ある糖類の中でも、やはり砂糖が最も虫歯になりやすい糖だからです。
虫歯菌の栄養素となり、酸を排出させる原因になる点においては砂糖も他の糖と変わりませんが、実は砂糖にはもう1つ虫歯菌にとって好都合な役割を果たしています。
虫歯菌は砂糖を利用して『グルカン』という酸とは別の物質を作ります。
このグルカンには粘り気があるため、虫歯菌同士の結びつきを強くし、虫歯菌が密集しやすい環境を作り出します。またグルカンは水に溶けにくいため、虫歯菌の群衆はグルカンに守られた状態で、さらにその中で増殖することができます。
このようにしてできた虫歯菌の塊がプラーク(歯垢)です。
プラーク内に集まった無数の虫歯菌によって、歯はより多くの酸にさらされることになります。さらにプラークは唾液の力やうがい程度では破壊できず、歯ブラシなどによる機械的な力を加えない取り除くことができません。
そしてこのグルカンは糖類の中でも砂糖からでしか作ることができません。
つまり砂糖には虫歯菌の栄養素となる以外にも、虫歯菌が増殖しやすい環境を整える役割があるため、他の糖類よりも虫歯になるリスクが高いのです。
砂糖は量よりも時間に気をつけること
食品に含まれるあらゆる糖は虫歯になる可能性を秘めていますが、その中でもやはり1番虫歯になりやすいのは砂糖です。
その砂糖は1度に沢山の量を摂るよりも、持続して摂り続ける方が虫歯のリスクが高くなります。
先にも述べたように虫歯は虫歯菌が出す酸が原因で起こりますが、通常は唾液によって酸の働きは弱められます。しかし少量であっても砂糖を持続的に摂り続けると唾液の自浄作用が追い付かず、歯は常に酸にさらされてしまい虫歯が発生しやすくなるのです。
したがって甘いお菓子やジュースなどはできるだけ時間を決めてとるようにし、ダラダラ食べたり飲んだりすることは控えましょう。
虫歯を予防するには、砂糖を極力控えたほうがその効果は高いと言えます。
しかし普段の食事から砂糖をすべて取り除くということは難しく、また甘い物が好きな方はストレスの原因にもなります。
虫歯予防に限らず、規則正しい食生活は健康の基本です。
甘い物を好む方は食べるタイミングや時間に注意し、そして食後の歯磨きも忘れないよう心がけましょう。
<執筆者プロフィール>
影向 美樹(ようこう・みき)
歯科医師。歯科医師免許取得後、横浜と京都の歯科医院にて勤務を経て、現在は医療系ライターとして活動中
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情報提供元: mocosuku