野菜1日350g、これすべて野菜ジュースやスムージーで補える?
2017-12-07 18:30:53
執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
生活習慣病を防ぐにはビタミンやミネラル、食物繊維がたっぷり含まれている野菜や果物を摂ることが効果的。
そこで、厚生労働省が定めた「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」では、野菜の目標摂取量を1日に350グラムとしています。
しかしながら、「国民健康・栄養調査」(厚労省、平成28年)によれば、野菜摂取量の全国平均は男性284グラム、女性270グラムと目標に達していないのが現状です。
その不足した分は野菜ジュースやスムージーで補うことはできるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
野菜1日350g、実際はどれくらいの量?
野菜1日350グラムは目分量でどのくらいでしょうか。
1日3回食事を摂るなら、1回の食事で野菜の摂取目標量は約120グラム。
これは、生野菜の場合「両手いっぱいに乗る量」、煮た野菜など加熱野菜の場合「片手にいっぱいの量」といわれています。
これを合わせて3回ですから、結構な量だといえますよね。
「野菜ジュース」にもいろいろ違いが
野菜ジュースとは「野菜が入っている飲み物」を指します。
野菜が100%でも50%でも、呼び名は「野菜ジュース」です。
原材料となる野菜や果物を搾汁し、水分を除いて濃縮します。その際に出た搾りかすは利用されません。
濃縮した食材をブレンドして水分を加えて作られます。その製造の過程では、衛生的な面から加熱や冷凍を行っていて、素材そのものよりは栄養素が減ってしまいます。
そのため、栄養素を添加している製品もあります。
たとえば、野菜ジュースの場合、野菜がどのくらい入っているかは、食品表示の「品名」や「原材料」で知ることができます。
実際に販売されているある野菜ジュースの品名表示を例に、原材料表示例を挙げてみましょう。ちなみに、原材料は使用されている野菜や果物が多い順に記載されています。
果実・野菜ミックスジュース(野菜汁60% + 果汁40% = 100%)
原材料名:野菜(にんじん、トマト、モロヘイヤ、・・・)、果実(ぶどう、レモン、うめ)、香料
品名:トマトミックスジュース(野菜汁100%)
原材料名:トマトジュース、野菜ジュース(にんじん、セロリ、赤ピーマン・・・)、レモン果汁、はちみつ
このように「野菜ジュース」といっても、野菜汁の割合が違ったり、砂糖や塩分などが添加されていたりなど、内容はさまざまです。成分表示をチェックすると、内容の詳細がわかります。
野菜不足を補いたい時には、「野菜100%」で砂糖・塩分不使用のものを選びましょう。
スムージーでも代用可能?
スムージーは野菜や果物などの材料を凍らせて、ヨーグルトや牛乳、氷と一緒にミキサーでシャーベット状にしたものを言います。
しかし、ここ最近ではこれに限らず、生の野菜やナッツ類を利用するものなどバリエーションが増えています。
野菜ジュースとの違いは、素材すべてを利用している点です。
当然、栄養素の減少も少なくなります。
しかし、最近ではその場で作るものだけではなく製品として売られているものもあり、その製造工程には加熱や搾汁があるかもしれませんので、野菜ジュースと同じように食品表示を確認しましょう。
野菜ジュースやスムージーで野菜不足は補えるの?
では、野菜ジュースなどで野菜不足は補えるのでしょうか。
結論としては「完全に補うのは難しい」と言えます。
なぜなら、これらは生の野菜と同じ栄養成分ではないからです。生の野菜には、ビタミンやミネラル、食物繊維、ポリフェノールなど豊富な栄養素が含まれています。
ところが、野菜ジュースやスムージーでは、前述のとおり加工や時間の経過によって少なからず栄養素が減少してしまいます。
したがって、完全に補うのことはできないのです。
ただし「補完的な役割」として活用することはできます。野菜が十分に摂れていない、摂ることが難しい、というときには野菜ジュースやスムージーで補うのもいいでしょう。
注意点は、野菜代わりにするのであれば、1日1回程度にすることです。加工された野菜ジュースに頼りすぎると、栄養素の不足や糖質の過剰摂取につながります。
また、水溶性ビタミンは身体に溜めておけない栄養素です。
ですから、一度に「1日分」の大量のビタミンを摂っても、その時必要とされている量を越えた分は、体外に排泄されてしまいます。そのため、できるだけこまめに、毎食でチャージする必要があります。
このように、基本的には野菜料理から栄養を摂り、野菜ジュースやスムージーは、あくまで補完的に利用することが効果的です。
野菜ジュースを手作りしてみよう!
野菜ジュースやスムージーは、ジューサー、ミキサーやハンドブレンダーのような調理家電も出回っているので、手作りで楽しむこともできます。
どれも生の食材から作り、その場で摂ることができるという点で、野菜摂取の方法としては、おすすめです。
その場合には、カスまで摂り入れると、食物繊維やビタミン・ミネラルが含まれていて、野菜料理として扱えます。
ただし、カスはジュースでは摂りたくない人もいますので、その場合は、料理に活用して、ハンバーグやカレーに入れたり、ツナ缶やゴマ油と和えた1品を作るなど、合わせて摂るのも一つの方法です。
さらに、注意したいのは、飲みやすいように果物を一緒に摂り入れることが多いことです。
果物が多いことで肝心の野菜摂取にならないことのないよう注意しましょう。野菜中心に作ることがポイントです。
また、作り置きは、栄養素の損失の面でも衛生面でもおすすめできません。その場で摂りきるようにしましょう。
野菜摂取のポイントは「よく噛む」こと
野菜を「食べる」ことの効果は「噛む」ことにもあります。
よく噛んで食べると、脳にある満腹中枢が刺激されるので、食べ過ぎを防ぎ、肥満も防止できます。
また、よく噛むと、食べ物が唾液中の酵素と混ぜ合わさって、消化吸収も促進されます。ゆっくりとよく「噛む」ことは、野菜を食べる場合にも重要です。
この点でも、野菜ジュースやスムージーは「栄養補助食品」と考えて、活用してくださいね。
【参考】
農林水産省『みんなの食育』(http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics2_04.html)
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku