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たくさん食べても痩せられる? 話題の「ケトジェニックダイエット」について

2018-03-09 18:30:04


執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ
ここ数年「糖質制限」や「低炭水化物」という言葉が注目されました…。今やすっかり定着した感があります。
そんななか、いま新たに注目されているダイエット、「ケトジェニックダイエット」をご存知ですか?
脂肪を消費しやすい体質をめざすダイエット法ですが、低糖質の食品が制限されませんので「肉を食べて痩せるダイエット」のキャッチコピーで知られます。
テレビCMでもお馴染みのスポーツジム『ライザップ』が取り入れていることでも話題になりました。
今回はこの「ケトジェニックダイエット」がどのようなダイエット法なのか、リサーチしてみました。

ケトン体とケトーシス


私たちの身体はブドウ糖をエネルギー源として活動しています。
ブドウ糖が不足すると代わりに体内に蓄積されていた脂肪が燃焼されます。
このとき生成される脂肪の燃えカスが「ケトン体」で、おもに肝臓で作られます。
ケトン体は、アセトン、アセト酢酸、β‐ヒドロキシ酪酸の総称で、血管から細胞に送られてエネルギーを産生します。
血液中のケトン体の濃度が通常よりも上昇した状態を「ケトーシス」といいます。
このケトーシス体質ができると、身体は積極的に体脂肪を燃焼するようになり、ダイエットにつながると考えられています。

ケトジェニックダイエット


ケトジェニックダイエットの狙いは、脂肪を燃焼してケトン体を作り出し、ケトン体のエネルギーを利用する体質をつくる点にあります。
糖質をエネルギーに利用しないような体質にして、代わりに脂肪酸をエネルギーにして体脂肪を燃焼させるのです。
この体質を作るため、糖質の摂取は厳しく制限されます。
そんなケトジェニックダイエットには明確な規定はありません。
参考までに、ケトン体量が増加する効果を得られた…とされる食事療法の事例からいくつかポイントをご紹介しましょう。

糖質の制限


⇒摂ってもよい炭水化物量は1日40~60g(1食20g以下)

たんぱく質をしっかり摂る


⇒体重1kgあたり1.2~1.6g目安

適正カロリーを超えないようにする


⇒活動量の少ない成人男性は1日2100~2300kcal、女性は1650~1750kcal

食物繊維やミネラルをしっかりと摂る


⇒1日の食物繊維は男性20g以上、女性18g以上、ミネラルはとくにカルシウム650mg以上、鉄は男性7.5g、女性6.5g

脂質はオメガ3脂肪酸や中鎖脂肪酸を積極的に摂る


⇒オメガ3脂肪酸は魚介類、えごま油、亜麻仁油、クルミなど、中鎖脂肪酸はココナッツオイル、母乳、中鎖脂肪酸含有製品など
このようなポイントを押さえると、エネルギー産生栄養素バランス(PFCバランス=総摂取カロリーにおける3大栄養素のエネルギー比率)は、脂質50%、炭水化物30%、たんぱく質20%ほどになります。
このバランスはかなり変則的といえます。
炭水化物量を制限できなかったり、脂質の摂取量が少なかったりするとケトン体は生成できません。

もし実践したらどんな食事になるの?


通常のバランスの良い食事と比べると、かなり特徴があるケトジェニックダイエットの食事。
実際に試すとどのような内容になるか、もう少し詳しく見てみましょう。

主食(ご飯、パン、麺類など)


1日の糖質40~60gを実践するためには、主食を摂るのは難しいといえます。
なぜなら、たんぱく質や脂質でのエネルギー源、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素を必要量摂取した場合、味付けや素材自体に含まれる糖質で補えてしまうからです。

メインのおかず(肉、魚介類、大豆製品、卵など)


魚介類を中心に、さまざまな食材を摂る必要があります。
糖質が少ない分、ある程度エネルギー源を摂取しなくてはなりません。
揚げ物や炒め物なども取り入れる方が良いです。

サブのおかず(野菜、海藻、きのこ類)


1食で両手一杯になるくらいたっぷり、彩り良く種類を豊富に摂取します。
調理や味付けに、えごま油や亜麻仁油を使う、くるみなどのトッピングも良いです。

その他


乳製品はカルシウム源として優秀です。
ただし糖質も含みますので、1日あたり牛乳コップ1杯程度が目安です。
糖質の多い果物は避けます。
また、炭水化物の摂取量が少ないと水分摂取量が減り脱水症状を起こしやすくなります。
十分に水分を補給します。
いかがですか…少しイメージが沸いたでしょうか?

ケトーシス体質のメリットとデメリット


ケトーシス体質になると次のようなメリットがあるといわれます。
・ダイエット効果       ・空腹を感じにくくなる
・頭がさえ、眠気がなくなる  ・肌荒れ防止になる
また、デメリットとしては
・ケトン臭(獣臭さ)    ・イライラや脱力感が起こる
・筋力が落ちる       ・炭水化物が増えると元の体質に戻る
また、ケトーシス体質になるまでは炭水化物の摂取量が少ないことによる低血糖状態が続きます。
空腹感やめまい、便秘や膨満感を招くこともあります。
目新しいイメージのケトジェニックダイエットですが、その起源は古く、なんと古代ギリシアや古代インドにまで遡るといいます。
当時はてんかんの治療法として用いられていたそうです。
それが昨今ダイエット法として脚光を浴びることになったのです。
また、てんかんや糖尿病の治療食として見直す向きもあるようです。
しかし、副作用をはじめケトジェニックダイエットのメカニズムについては未解明なことが多く、長期的な安全性は確かめられていないのが現状です。
ダイエット法として興味をお持ちの方は、こうした現状を十分に理解したうえで、検討するべきでしょう。
【参考】
・公益社団法人 日本農芸化学会『ケトジェニックダイエットがヒトの健康に及ぼす影響について』(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kagakutoseibutsu/54/9/54_650/_pdf)
・厚生労働省『日本人の食事摂取基準2015年度版』(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html)
<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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