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感染症対策の「アルコール消毒」 その有効性と注意すること

2018-04-04 18:30:22


執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
インフルエンザやノロウィルスなどの感染症対策として、アルコール消毒が奨励されています。
昨今はオフィスやトイレ、公共・商業施設の受付などでも、消毒液やスプレーが設置されているのをよく見かけますよね。
そんなアルコール消毒は、石鹸で手を洗うよりも効果が高いのでしょうか?
今回はアルコール消毒の効果や消毒の仕方、注意点などを確認していきましょう。

消毒用アルコール


手指や台所の器具などの消毒用に使われるアルコールは、人への毒性が低い第3類医薬品に分類される「エタノール(エチルアルコール)」「イソプロパノール(イソプロピルアルコール)」です。
「日本薬局方」という、厚生労働大臣が定める医薬品の規格基準書で規定されています。

消毒用エタノール


エタノールはアルコール発酵によって製造されます。
サトウキビなどの糖質とトウモロコシやジャガイモなどのでんぷん質が原料になっています。
イソプロパノールよりも毒性が低いといわれています。
消毒用エタノールは、エタノール約80%、水約20%に調整してあります。
食器など口に入るものも消毒できますが飲用はできません。

消毒用エタノールIP(イソプロパノール)


消毒用エタノールにイソプロパノール液が添加されています。
こちらは口に入るものの消毒や傷口への使用は禁止、もちろん飲用も不可です。

その他


その他、消毒効果があるものとして除菌アルコールスプレー、アルコール除菌シート、ジェルタイプの消毒剤なども挙げられます。

アルコール消毒の効果


アルコール消毒剤には次のようなメリットがあります。

消毒効果が高い:手洗いや石鹸よりも消毒効果が高い


手荒れが少ない:手洗いに比べ、保湿成分が入った消毒剤だと手も荒れにくい


短期間で効果を発揮:揮発性が高いため短時間で済み、水が要らず屋外でも利用できる


感染予防や洗浄などにアルコール消毒はどの程度の効果があるのでしょうか?
アルコールは、細胞への浸透が早いこと、殺菌する速度も速いことがメリットです。
最近の学説では、エタノールと水の比率を1:1にすると、エタノール中の水に混ざりにくい「疎水基:CH3CH2 」が平面状に並んで細菌の細胞膜を破壊し、たんぱく質を溶解させて細菌を死滅させると考えられています。
ちなみに、この場合消毒にもっとも適したアルコール濃度はおよそ70%とされています。

アルコール消毒が効くものとそうでないもの


近年、アルコール消毒剤はインフルエンザなどおもにウィルス対策への効果を期待して使用されますが、ウィルスには多くの種類がありますから効果がないウィルスも存在します。
ウィルスは、外側に「エンベロープ」(脂質でできている膜状の構造)を持っているものとそうでないものとがあり、この違いが効果の有無に関ります。
エンベロープを持つウィルスはおよそ80%といわれていて、インフルエンザ、ヘルペス、風疹、HIV、B型・C型肝炎などです。
これら「エンベロープ」を持つウィルスにはアルコール消毒は有効です。
一方、エンベロープを持たないウィルスや細菌、たとえば、ノロウィルス、エンテロウィルス、ライノウィルス、A型肝炎ウィルスなどにはアルコール消毒は有効ではありません。
なかでもノロウィルスは、冬場の感染性胃腸炎を引き起こし大流行することもあります。
その場合、アルコール消毒薬の代わりに次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系の消毒剤が用いられることがあります。
しかし、皮膚への刺激がきつすぎて人には使用できませんし、金属などは腐食し洋服も色落ちしてしまいます。
ですから、アルコール消毒による二度拭きやアルコール消毒薬を酸性にしたものなどが提起されています。
ウィルスのほかにもブドウ球菌や肺炎球菌などの「グラム陽性菌」、大腸菌などの「グラム陰性菌」、結核菌や真菌にもアルコール消毒は有効とされています。
一方、カビや芽胞形成菌(がほうけいせいきん)には有効ではありません。
芽胞形成菌は一般に土壌に生育しているボツリヌス菌、炭そ菌、破傷風菌などです。

効果的なアルコール消毒のしかた


インフルエンザ


インフルエンザ予防は予防接種とあわせて行いましょう。
アルコール消毒は接触感染の予防にはなりますが、飛沫感染には効きません。

手指の消毒


水と手洗い洗剤があるなら、まずはそれらを使って手指をしっかりと洗います。
そのあとでアルコール消毒ジェルなどを使用します。
この時、手が濡れていると効果がなくなるので、ペーパータオルや清潔なタオルで水気をしっかりと拭いてから消毒をします。

ウィルス汚染の消毒


インフルエンザに罹った家族が触れたドアノブ、クシャミがかかってしまった場所などをアルコール消毒剤で拭いておくことは、ある程度の感染防止になります。

アルコール消毒をするときの注意点


アルコール消毒剤は次のような点に気をつけて使用しましょう。

目や粘膜部分に使わない。アルコール消毒剤がついた手で目をこすらない


経口(飲む)投与はしない


過剰に使用すると皮膚が乾燥しすぎて荒れてしまうことがある


長時間の使用は避ける。エタノール臭の刺激で気分が悪くなることがある


漂白剤と併用すると、塩素ガスが発生する危険がある。漂白剤とは混ぜないこと!


アルコールには引火性があるため、台所など火気のある場所でアルコール消毒剤を使用しないこと!


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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