「難聴」とはどいう状態? ミュージシャンの職業病なの?
2018-04-14 18:30:30
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
「難聴」とは音や話し声が耳で聞こえにくくなっている状態です。
難聴は誰にでも起こりうるのものですが、種類があり原因や対策も違ってきます。
また、ミュージシャンに難聴の人が少なからずいるのはなぜでしょうか。
今回は「難聴」を取り上げ、さまざまな角度からご説明します。
難聴とは
聞こえが悪くなる「難聴」には、女性や子どもの声など高い音域が聞こえにくくなる、反対に低い音域が聞き取れない、あるいは、複数の音や声から特定のものを選んで聞き取れないなどケースは多々あります。
難聴のレベルは軽度から重度まで、次の4段階に区分されています。
軽 度:小さい声や騒がしいところでの会話が聞き取りにくい
中程度:普通の会話で不自由を感じる。相手と距離が近づかないと聞き取りにくい
高 度:耳元に口を近づけないと大声でも聞き取りにくい
重 度:ほとんど聞き取れない
耳のしくみ
耳は外耳・中耳・内耳の3つから構成されています。
外耳は耳の外側部で、耳介(じかい)、外耳道、鼓膜などが主なパーツです。
中耳は外耳と内耳との中間部分で、耳小骨(じしょうこつ)や耳管(じかん)などが主なパーツです。
通常は空気で満たされています。
内耳は細胞と神経が音を処理して脳に送る部分です。
蝸牛(かぎゅう)と聴神経があります。
音が聞こえる経路のどこかに障害が起これば、聴力障害がでてきます。
次項では、障害部位ごとに難聴の種類をみていきます。
難聴の種類
難聴は基本的に次の3つのタイプに分けて考えられています。
伝音難聴(でんおんなんちょう)
外耳または中耳に何らかの問題があり難聴が生じています。
もっとも一般的なタイプで、音の内耳への到達を妨げる障害により聞こえにくくなります。
よくある原因は次のようなものですが、多くの場合適切な治療で聴力の回復が見込まれるといわれています。
◆外耳炎
◆外耳道に過度な耳垢が溜まっている
◆大音量によって鼓膜に孔が開いている(穿孔)
◆外耳炎(スイマーズ・イヤーとも呼ばれます)
感音難聴(かんおんなんちょう)
内耳や脳と内耳間の神経経路に障害が起こります。
蝸牛のなかにある、音を伝える繊細な毛や、脳に音を伝える神経が損傷すると感音難聴になります。
次のような原因が考えられます。
◆加齢(老化)
◆おたふく風邪、髄膜炎、多発性硬化症などの病気による影響
◆うるさい場所に長期滞在したこと
◆強大音や大音量の中に居続ける
◆頭部外傷
◆妊娠中の母親が風疹に罹ったことの胎児への影響
感音難聴は治りにくいとされ、たいていは聴力を取り戻すことは出来ないといわれています。
かわりに補聴器や人工内耳といった代替方法が施されます。
混合性難聴
伝音系と感音系の両方に障害が起こる難聴です。
難聴を引き起こす日常生活の原因
加齢による耳の機能の老化は、それ自体が難聴を引き起こす要因になります。
ほかにも日常生活において難聴をまねく原因として、次のようなことが挙げられます。
耳への異物や耳垢
水やゴミ・ダニなどが耳に入ると聞こえにくくなります。
また、外耳道がふさがるほど耳垢が溜まると難聴を招きます。
どちらも原因を除去すれば治ります。
耳元での大音量
絶え間のない騒音、耳元での爆発音、大音量のヘッドフォンなどでは、直後から聞こえが悪くなったり難聴になったりします。
できるだけ早く治療する必要があるケースです。
鼓膜の損傷
耳かきで突いた、何かに耳をぶつけた、耳を強く打たれたといった衝撃で鼓膜が破れることがあります。
小さければ自然と傷がふさがる場合もあるようですが、痛みを感じていたら耳鼻咽喉科を受診しましょう。
気圧の急激な変化
急激な気圧の変化から鼓膜が内側に押し出され、痛みや耳鳴り、しばらくの間耳が聞こえない…といった症状が出ることがあります。
通常耳のなかの気圧は外気圧と同じに保たれていますが、急激な気圧の変化が起こるとこの均衡がくずれるのです。
飛行機の離着陸、スキューバーダイビングなどでも同様の症状が現れます。
ストレスの影響
心身のストレスが慢性的に昂じると、自律神経が乱れやすくなり難聴につながる場合があります。
そして、難聴がまた新たなストレスになります。
病気や薬の副作用
老人性難聴、突発性難聴、メニエール病、化膿性中耳炎、聴神経腫瘍など、難聴を引き起こす病気は多くあります。
また、リウマチや結核の治療薬、抗がん剤や利尿剤は、副作用で難聴を引き起こすものもあります。
ミュージシャンの難聴:職業性難聴
難聴で苦しむ人を職種別に見ると、ミュージシャンが多いといわれています。
フィル・コリンズ、ニール・ヤング、オジー・オズボーンなど、難聴であるとカミングアウトした著名なミュージシャンもいます。
音楽ジャンルは大音量が響き渡るロックミュージックなどに限られません。
クラシックでもオーケストラの音量は130デシベル(一般的に130デシベルを超える音を長時間聞いていると聴覚に支障をきたすといわれている)余りに及ぶこともあるそうですから、ジャンルは問わないといえそうです。
大きな音を長時間聞いているうちに、耳鳴りがして周囲の音が聞こえにくくなる「一時的聴覚疲労」という症状があります。
この疲労が取れないまま長期間うるさい環境に置かれると「騒音性難聴」にエスカレートしていきます。
この、騒音性難聴のうち職場による騒音で発症するケースを「職業性難聴」と呼んでいます。
ミュージシャンは職業病として難聴になる可能性が高いといえるでしょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
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情報提供元: mocosuku