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「プラズマ乳酸菌」ってふつうの乳酸菌とどこが違うの?

2018-05-08 18:30:23


執筆:山本 ともよ(管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー)
医療監修:株式会社とらうべ

感染症などから身を守る「免疫」。その力を高めるには腸内環境を良好に保つことが重要です。
発酵食品や食物繊維、オリゴ糖や酪酸菌などが腸内バランスを整えたり免疫機能を高めるとされています。
そんな中で今注目されているのが「プラズマ乳酸菌」です。
風邪やインフルエンザなどのウィルス感染症を防ぐのに、他の乳酸菌より優れていると言われています。

プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)


細菌やウィルスなどの病原体が身体に侵入してきたときに、これに対抗していくのが免疫ですが、免疫細胞と呼ばれる細胞のグループが免疫を担当しています。
中でもNK(ナチュラルキラー)細胞、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、B細胞といった複数の免疫細胞のいわば司令役として、ウィルスへの感染防御を統括しているのが「プラズマサイトイド樹状細胞(plasmacytoid dendritc cell:pDC )」です。
感染には結核や大腸菌など細菌性のものと、インフルエンザなどのウィルス性のものとがありますが、ウィルスが侵入するとpDCが活性化して、インターフェロンαなどのサイトカイン(※)を放出し、これらサイトカインの情報伝達によって複数の免疫細胞がウィルス感染細胞を分解・駆除していきます。
(※サイトカインは免疫細胞から放出されるたんぱく質で、免疫情報の伝達を免疫細胞に行います)

プラズマ乳酸菌


2012年に発表された「プラズマ乳酸菌」。
ラクトコッカス・ラクティス(Lactcoccus lactis )(※)に属する乳酸菌で、チーズ製造などに使われています。
キリンホールディングスのフロンティア技術研究所と小岩井乳業(株)との共同研究で発見されました。
正式には「Lactcoccus lactis JCM5805」と呼ばれますが、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化することができる乳酸菌という意味から、一般的な名称として「プラズマ乳酸菌」と名づけられたそうです。
プラズマ乳酸菌(JCM5805株)はpDCを活性化することでサイトカインの産生を誘導してウィルスの感染防御に働くことになります。
具体的には、食品に含まれたプラズマ乳酸菌が小腸でpDCに食べられてpDCが活性化し、ウィルスを攻撃するサイトカイン(インターフェロンαなど)を放出します。
すると、サイトカインは体細胞に抗ウィルス反応をするよう直接に働きかけるとともに、複数の免疫細胞に指令を行って、これらがウィルスを攻撃するといった、総合的なウィルス防御能力の向上が起こるとされています。
(※ラクトコッカス・ラクティスは生乳・チーズ・バターなど発酵食品から検出される乳酸球菌です。酸素の有無にかかわらず生育できる「通性嫌気性」です。原料乳を発酵させる最初の乳酸菌として、昔から広く使用されてきています)

乳酸菌とプラズマ乳酸菌の違い


一般的に乳酸菌と言われる細菌とプラズマ乳酸菌にはどんな違いがあるのでしょうか。
乳酸菌には免疫力を高める働きがあることがわかっています。そのメカニズムは大きく分けて次のふたつです。

腸内環境をととのえる


乳酸菌は乳酸を産生する細菌の総称ですが、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整えるよう働くことは有名です。
腸内環境が良くなると栄養素の吸収が良くなり、免疫力の高い健康的な身体が作られます。

NK細胞を活性化する


先にも出てきましたが、外から侵入したウィルスや細菌に対抗NK細胞を活性化する乳酸菌は数種類確認されており、市場では「強さひきだす」「守る力」などと謳われています。
これに対して複数の免疫細胞の司令塔役であるpDCに働きかけるのがプラズマ乳酸菌です。
ほとんどの乳酸菌はpDCに働きかけることが確認できず、市販のヨーグルトにおいても反応はなく、pDCに働きかける乳酸菌をプラズマ乳酸菌と呼んでいるのです。

プラズマ乳酸菌の効果


プラズマ乳酸菌は研究の結果、次のような効果が期待できるとのことです。
・インフルエンザの予防:プラズマ乳酸菌がpDCを活性化させるので、ウィルス防御能力が高まってインフルエンザの発症予防が期待できる
・風邪症候群やインフルエンザの症状を和らげる:咳や熱っぽさ、のどの痛みなどを軽減することが期待できる
・ロタウィルス感染症の症状を和らげる:下痢症状を軽減する可能性がある
こういった可能性が人間を被験者とした比較研究や動物実験によって確かめられてきています。

プラズマ乳酸菌が入っている製品


プラズマ乳酸菌が入った製品には次のようなものがあります。
・ヨーグルト
・ソフトドリンク
・サプリメント
  …など
現在、腸内環境を整えるのに、生きた乳酸菌を摂るプロバイオティックスが注目されていますが、プラズマ乳酸菌の場合は菌体が生きていなくても、免疫を活性化する効果に変わりはないとされています。
ですから、加熱処理をしても問題ないと言われています。
ウィルスや細菌に負けない身体は毎日の健康的な食生活によって作られます。
その食生活のひとつとして、プラズマ乳酸菌を取り入れるのもよいのではないでしょうか。
【参考】
キリン株式会社『プラズマ乳酸菌 研究ライブラリー』(http://health.kirin.co.jp/library/result/)

<執筆者プロフィール>
山本 ともよ(やまもと・ともよ)
管理栄養士・サプリメントアドバイザー・食生活アドバイザー。
株式会社 とらうべ 社員。企業で働く人の食と健康指導。糖尿病など疾病をもった人の食生活指導など活動中

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku

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