【狂鹿病】伝染したシカが人里まで降りてきたら!?日本にも危険信号
2018-07-03 06:00:20
「狂牛病」(牛海綿状脳症・BSE)を覚えているだろうか? 牛の脳に空洞ができてスポンジのようになる奇病。1986年に英国で見つかり、後に人間への感染も見つかって変異型クロイツフェルト・ヤコブ病という神経難病を引き起こすことが判明した。2001年には日本国内でも一人の感染が見つかり戦慄が走った。
【狂鹿病】は、そのシカバージョンというべき病気で、正式には「シカ慢性消耗性疾患(CWD)」と呼ぶ。実は昨今、北米・北欧・韓国に生息するシカに増えていて、4月にはフィンランドで感染シカが発見された。「いつ日本に上陸するともわからない」と専門家は恐々としているとのこと。
そこで、何が怖いのか調べてみた。専門的な用語や難しい知識などを極力省いてざっくりと説明する。
シカが狂鹿病になるとどうなる?
CWDに感染するシカは主に成獣でオス・メスは問わない。症状は、“体重が減り、同じところを繰り返し歩行する、他の動物に無関心となる、頭部や耳がうなだれる、軽い運動失調を呈する、両足を広げて立つなどの行動の異常が見られる”という。長ければ1年以上生きるが、末期には嚥下(ものを飲み込むこと)が困難になり、肺炎を引き起こすなどして死んでしまう。
どんなふうに感染する?
牛のBSEは、感染していた牛を肉骨粉飼料にし、それに“異常型プリオン”というタンパク質が含まれていたため、これを食べて感染した牛が多かった。
シカのCWDについては、まだわからないことが多い。ただ、水平感染と言って、唾液、血液、尿、糞、など、体外に排出したものから自然界での感染が確認されている。(とはいえ、伝染の確率は高くないのかもしれない)。研究から、BSEと同様に異常型プリオンを口にしても感染するそうだ。
今のところ、日本の野生シカ、飼育シカへの感染はないが、例えば渡り鳥を介して感染するというケースも考えられなくもない。感染のバリエーションはいくつあるか不明だ。
もし日本のシカに感染してしまったら? 怖いのは、全国の山野に野生のシカが生息していて、しかも近年は人里まで餌を求めて降りてくるようになっていること。
ヒトへの感染は?
一番怖いのは人間への感染だ。CWDの人への感染は確認されていない。が、これもまだわからないことが多い。たとえば、シカの感染が広がって個体数が増え、更に人に感染しやすいようにプリオンが変化する可能性もある。そして、単純に考えて感染し死んだシカの肉を食べたらどうなるか。最近はジビエブームで野生のシカを食べる人もいるのでリスクは伴う。
また、シカはいろんな加工品に使われる。ジャコウジカから取れる香物「ジャコウ」は雄の袋状腺嚢の分泌物である。シカの睾丸などからは「鹿鞭(ろくべん)」、シカの幼角から「鹿茸(ろくじょう)」が摂れ、薬となる。
化粧品ではシカ脂の保湿性を活かしたボディケア、ヘアケア用品などがある。健康食品としては、シカの血や骨、腱、胎盤抽出物のプラセンタなどを配合したサプリメントもある。これらが、どんな影響を人に与えるか、逆に与えないかもわからない状況なのだそうだ。
日本の対策
2001年10月、厚労省が「米国、カナダ、韓国産のシカ原料について医薬品・医療用具等への使用を認めない」旨を通知している。また、今回のフィンランドでの発症確認を受け、農林水産省は「フィンランドからのシカ科動物およびシカ科動物由来の畜産物の輸入を停止」した。なお、過去に同国からの輸入はなかった。なので、ひとまずは安心と言えるかも。
もしも、奈良公園のシカがCWDに感染したら全てが処分されるだろう。まさかと思いつつもあり得ない話ではないのである。
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Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット