NEW【シャチ】始動!彼女たちがファンにクギ刺した“ライブの掟”を知らしめよ
2018-10-26 18:00:46
名古屋を拠点に活動するアイドルグループ「チームしゃちほこ」が、【TEAM SHACHI】(読み:シャチ “TEAM”は読まない)に改名し、新たなスタートを切った。 これは、メンバーの伊藤千由李が、10月22日・愛知・Zepp Nagoya「"TEAM SYACHIHOKO" THE LIVE ~FINAL~」を持ってグループを卒業したため、ここを一つの区切りとしたもので、改名はライブ終了後に会場外で号外を配るという演出で発表された。
「シャチ」は秋本帆華、咲良菜緒、大黒柚姫、坂本遥奈の4人組での新体制となり、翌23日、同Zepp Nagoyaでのフリーライブ『全速前進』で初ステージに挑み、新曲「DREAMER」など全11曲をノンストップで駆け抜けた。
メンバーは「ナゴヤから世界へ、最高の景色を見たいと思っているので、これからも本当によろしくお願いします!」と挨拶し、さらなる飛躍を“タフ民”(ファンの名称)の前で誓った。
菜緒、キレる
単にシャチを紹介する記事を考えていたのだが、ある出来事が強烈だったのでネタを変えることにした。
22日の伊藤千由李卒業ライブでタフ民が凍りつくような事態が起こった。開始から3曲目の途中で、センターで歌う咲良菜緒が歌の途中にもかかわらず前方の一部客を差してブチ切れた。
「おい、おまえらルール守れよ、卒業なの、おい、ルール守れないなら一番後ろ行ってね」
曲が終わり、自己紹介が終わったあと、更に念を押す。
「さっきは怒鳴りましたが、今日は千由の大事な卒業の日ですよ。私達は最後の日にそういう泣き方したくないので、(その客に向けて)わかった? 次やったら一番後ろだからね。いい番号かもしれないけど、一番後ろだからね、…わかった? よろしくお願いします。すみませんでした」
ルールを犯した客から了解を得るまでやりとりした。他の民から拍手が起こった。その後は何事もなく進行したが、しかしアイドルがステージ上であそこまで怒りをあらわにするのはなかなか珍しい。フォローするが菜緒さんはキレキャラでもなんでもない、この日は特別なライブだったので注意せずにいられなかったのだろう。
ライブの模様は「ニコニコ生放送」で生中継されていて、SNSはどよめいた。
客席で何が起こっていたのか?「マサイ」という単語が飛び交っていた。オタ(ク)用語で、アフリカのマサイ族が遠くを見る時にジャンプする動きを例えた言葉で、曲のリズムに関係なく何度もジャンプすると後ろのお客さんが観にくくなる。これが迷惑行為として暗黙の了解だったようだが、あからさまに破った人がいたわけだ。
翌日もライブを控えていたことから、シャチ陣営は即座に“客席での禁止行為”を再確認する内容をまとめ、ブログ配信、当日の会場でビラを配布、更にライブ開演前にスタッフがステージに立ってお願いする事態にまで発展した。
※内容の一部
TEAM SHACHIのライブでは以下を禁止とさせていただきます。
基本として、故意に周囲の方に自ら接触していく行為は迷惑行為とみなします。
その中でも特に以下の行為は固くお断りいたします。
「マサイ」と呼ばれる、タイミングのずれたジャンプをし続ける行為
「モッシュ」と呼ばれる、故意に周囲へ体をぶつける行為
「リフト」と呼ばれる、人に体を持ち上げてもらう行為
「ダイブ」と呼ばれる、人の上に乗る行為
「サークルヘドバン」など周囲の方の迷惑になる行為
柵や人の体を利用して、ジャンプをする行為
飲酒行為、酒気帯びでライブ鑑賞する行為
公式グッズ以外の光物を使用する行為
その他、 迷惑、危険、不快と判断させていただく言動および行為
上記の基準は、主催者または運営側の判断とさせていただきます。
※それらの行為をおこなった場合はスタッフからの注意喚起、またはTEAM SHACHIにおける出入り禁止の対応を取らせていただきます。
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マサイ、モッシュ、リフト、ダイブ、サークルヘドバン…知らない単語が飛び出してきた。調べてみると、いわゆる「オタク用語」で、主にアイドルのライブでファンが盛り上がるパフォーマンスの名称だ。ここでは一括りに『オタ芸』と呼ばせてもらう。シャチはこれらを含め、迷惑行為を今一度明確にしたわけだ。
シャチのライブでは、客と一緒に踊る“振りコピ”がおなじみの曲やメンバーがジャンプを煽る曲などがある。同様にアイドルのライブでは、ファンと一緒に動く定番やお約束があるものなのでシーンによってOKなパフォーマンスはあるはず。そんな例外は別として、おそらく今回シャチが公表した禁止事項は、現在のメジャーなアイドルライブ興行における鑑賞ルールのスタンダードと言えるのではないだろうか。だからこれを広く知らしめて欲しいと思うのだ。
空気を読めるか
シャチから、“アイドルとオタの関係性”へ話を少しスライドする。
“メジャーアイドル”の、その線引きは難しいが、目安で「地下か地上か」という声がある。
オタ芸は、可能なスペースと一緒に行う仲間が必要になるので、スタンディングなど動き回れる会場で見受けられるパフォーマンスとされる。しかしこれが全て迷惑行為かと言うと、そういうわけではない。いわゆる地下アイドルやロコドルが開催する小さなライブ会場においては禁止とするケースは少なく、逆にオタ芸ウェルカムで盛り上げて欲しいとするアイドルもいる。
しかし、このオタ芸をデパートのフリーイベント会場等、コアなファン以外の一般客も集う場所で大っぴらにやられたら、迷惑に思う人もいて店に苦情も入る。実際、アイドル・オタの聖地とされる秋葉原にある某デパートのオープンスペースで派手なオタ芸が禁止になったこともある。
ももクロが家電店の駐車場などでライブをしていた初期の頃には、ステージから離れた後方でペンライトを両手に大きなアクションでオタ芸を踊るファンもいた。しかし、コンサートホールなど指定席がある会場でライブをするレベルに達すると派手なオタ芸も自然になくなったという。場所をわきまえた良識者か、オタ芸が出来なくてファンを辞めたか。
つまりオタ芸禁止が増えたのは、スタンディングで人がぎっしりなのに、指定席があるホールなのに、場の空気や雰囲気を読めなかったオタが目立ったことが大きな原因かもしれない。
余談だが、「禁止と言っても実際に強制退場はないだろう」と思う人がいるかもしれないが、私は、あるロック歌手のライブで、自分の席を離れて通路を走り飛び回る男が警備員から数回注意を受け、それでも続けたので首根っこを掴まれて外に出されたのを見たことがある。脅しじゃない。禁止事項は守ろう。
良いオタ悪いオタ
もう少し掘り下げてみた。
そもそも「オタ芸」は2000年代に入って、ハロプロ系のファンから始まり、声優系、AKB系のライブでも見られた。全力すぎる応援、がなる声援、中には罵声も飛ばすため、うるさいわぶつかるわ危険で不快、他の客の迷惑に(キモくてドン引きの苦情あり)。エスカレートさせないため、特に2010年頃からライブで規制をかけるケースが増えてきた。そのきっかけも多々あった。
アイドリング!!!のライブで一部暴走したオタのせいで中止に。
AKBグループでは、ケミカルライトを振り回し乱暴に扱ったせいで液体が飛散する事故が頻繁に発生。液体式ペンライトの使用を禁止(これは製品側も問題かも)。
2015年、でんぱ組.incのライブで、サイリウムを投げる客がいて、メンバーがSNSを通して「誰かに迷惑をかけるやり方は最低」と苦言を呈した。
2017年8月、神戸のご当地アイドルのコンサートで、過度なオタ芸により歌声や演奏が聴こえなかったとして客の男性が主催者に対しコンサートのやり直しや損害賠償を求める訴訟を起こした。
同じく2017年8月、「アニメロサマーライブ」でオタ芸禁止令が発令される。
ライブ中、関係のない暴言、大声を張り上げる、楽器などで音を鳴らす行為、物を投げる行為、歌唱や演奏の妨げとなる行為を禁止。
両手を激しく振る、広げる、回転させる、上半身を反らす、過激なジャンプ行為など、また脚立や台などの足場の持ち込み、及びそれらに登っての観覧、座席からはみ出した観覧など、周囲のお客様の迷惑となる行為、咲きクラップ、MIX、周囲への迷惑となるコールなど、いわゆるオタ芸と称される応援行為も禁止します。
(・・・脚立や台の持ち込みなんて後ろの人を無視してる。これをやってる人がいたってことだ)
これらはほんの一部。
アイドルのため?誰のため?
「オタ芸」を悪と言いたいかのようだが誤解しないでほしい、オタ芸に助けられて人気が出たアイドルは沢山いる。近くで見るとかなりのハイパフォーマンスだし、アイドルじゃなくオタ芸を観に来る人もいると聞く。それに、オタ芸のコンテストだって数多く開催されているのだ。すっかりカルチャーとして確立しているのだから凄いことだ。
しかし、このオタ芸を、アイドルを応援するために行っているのか微妙な人も出てくる。
ステージに立つアイドルからすれば大切で貴重なファンである。シビアな目線で言えば収入の基だ。目の前で派手なパフォーマンスやジャンプ、大声でコールしてくれるのはとんでもなく嬉しいはず。ただし、それを迷惑に思う客が多いとなると話しは変わってくる。
大好きなアイドルから「嬉しいけど迷惑行為になるからやめて」とお願いされたなら従うのが真のファン。オタと呼ぶとマニアックな感じがするが、ファンと一括りにしてもマサイなどの禁止行為を反逆的にやる者はオタ芸をする自分に陶酔し満足しているだけの悪たれ、アイドルのファンじゃなくオタ芸をやりたいオタ芸のファンといえる。
それは良識あるオタからすれば悲しい存在。ルールを破らない範囲でオタ芸を楽しむのがオタ、オタもプライドを持って欲しいと思うのだ。
楽しみにしていたライブにルール違反者が一人いるだけで、嫌な思い出が残る人がいる。そのことをアイドルが知れば残念に思うのは当然である。お互いに、悲しむことのないハッピーだけが心に刻まれるライブで終わらせたいものである。
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Fujisan.co.jpより
情報提供元: マガジンサミット