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女性に多いがんのひとつ「大腸がん」…今から知っておくべき基礎知識

2019-01-23 18:30:06


執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
女性のがんによる死亡数第一位が「大腸がん」であることを知っていますか?
ライフスタイルの変化などにともない、大腸がんは日本で増加傾向です。
しかし、早期に治療をすれば治りやすいがんの一つでもあります。
女性のがんと言うと、どうしても乳がんや子宮がんに目を向けやすいのですが、大腸がんにも注意が必要です。
基礎知識を持って、予防と早期発見に役立てましょう。

大腸がんの基本情報


「大腸がん」とはその名の通り、大腸に発生するがんを意味します。
小腸から続く大腸は、長さ約1.5~2mの臓器で、結腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)と直腸に分けられ、肛門へと続きます。
大腸にできるがんには、良性のできものであるポリープががん化して発生するケースと、直接粘膜から発生するケースがあります。
また、長い大腸のなかでも、がんができやすい部位は直腸とS状結腸で、全体のおよそ7割以上が発生しています。

大腸がんの症状


大腸がんが怖いのは早期段階で自覚症状がほとんどないことです。
がんの進行にともない、便に血が混じったり、便秘や下痢などを繰り返したりするようになります。
続いて、貧血や腹痛、体重減少、お腹の張り、しこりができる、腸の通り道が塞がり腸閉塞になる、といった症状も現れます。
現れる症状、特徴はがんが発生した場所によって異なります。
小腸側の盲腸や上行・横行結腸にがんが発生すると症状が出づらく、貧血やしこりを詳しく検査してやっと発見に至るケースもあります。
下行結腸やS状結腸、直腸のがんでは、出血や便秘、下痢などの症状が多くなります。
便に血が混じる、出血するなどの症状は、他の病気、たとえば痔のように悪性ではない病気にも見られます。
便秘や下痢も、ちょっとした体調不良として見逃されてしまいやすい症状です。
こうした初期症状を自己判断で様子を見てしまうことが、早期発見の妨げになります。
少しでも気になる症状があるときは、病院に相談をしましょう。

大腸がん増加の背景


このような大腸がん増加の背景には、ライフスタイルの変化が大きく関わっていると指摘されています。
大腸がんの原因となり得る生活習慣については、現在もさまざまな研究が行われている段階ですが、脂肪の多い食事や加工肉の摂取、アルコールやタバコなどによって発生のリスクが高まると考えられています。
なかでも、和食中心の日本人の食事が、動物性脂肪を多く含む欧米型に変化していることは、深い関連性があると言われています。
加えて肥満や運動不足、ストレス、睡眠不足なども、がんの危険性を高める要因の一つです。

大腸がんの検査


大腸がんの早期発見には、定期的な検診が欠かせません。
とくに患者数が増える40代以上は、年に1回大腸がん検診の受診が推奨されています。
ほとんどの市町村で検診費用の多くを負担してくれますので、この機会にぜひ各自治体の広報誌やホームページを確認してみてください。
大腸がん検診では、問診をはじめ便に血が混じっていないかを調べる検査、いわゆる検便を行います。
仮に便検査が陽性でも、必ずがんが見つかるというわけではありません。
痔やポリープなど別の原因も考えられますので、さらに大腸内視鏡検査など精密検査の受診が必要です。
また、便検査でも100%がんを発見することはできません。
ですから、40代以上で大腸がんになった血縁者がいる方などは注意が必要です。
毎年の便検査と併用して3~5年に1度、大腸内視鏡検査などを受けることが理想的です。

大腸がんの治療


大腸内視鏡検査で大腸がんが疑われた場合は、一部またはすべてを切り取って詳しく検査をして診断を確定します。
がんが大腸の浅い位置にとどまっている早期の大腸がんであれば、内視鏡手術のみによる完治も可能です。
しかしながら、がんの進行が認められたときは、進行度合いを考慮して腹腔鏡下での手術や開腹手術、必要に応じて放射線治療や抗がん剤治療などを選択していくことになります。
さらにがんの発生した場所や進行度によっては、「ストーマ」と呼ばれる人工肛門をお腹に作る必要も生じてきます。
手術後の生活を見据え、本人と家族、医師により治療の方針を立てていきます。
このように、大腸がんは早い段階で発見できれば比較的軽い手術で完治を目指すことができますので、前述のような定期的な検診が非常に重要なのです。

大腸がんを予防するために…


それでは、定期的な検診のほか、大腸がんを予防するには、日常でどのような点に気をつければよいのでしょうか。
まず、がん全般の予防という観点からいうと、バランスの良い食事、節度を守ったアルコールの摂取、禁煙、適正体重の維持などが挙げられます。
また、排便のリズムを整えて、老廃物を溜め込まず腸内環境を良好に保つことも大切です。
とくに大腸がんの予防には、食物繊維の摂取が効果的であると認められています。
食物繊維をしっかり摂れるバランスの良い食事を心がけ、加えて適度な運動を継続する、ストレスを溜めない、といった点を生活の中で意識しましょう。
運動は大腸がんのリスクを下げるとされ、研究でも明らかになっています。
ウォーキングなど軽い運動でも効果があると言われていますので、毎日少しずつの積み重ねが、大腸がん予防、ひいては健康維持の鍵となります。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku