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「22時~深夜2時はお肌のゴールデンタイム」の信憑性

2019-02-08 18:30:53


執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
睡眠中の午後10時~午前2時は「お肌のゴールデンタイム」…という話を耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」に基づく考え方で、美肌のためにはこの時間帯に睡眠をとるのがよいとされています。
ところで、そもそもこの時間に成長ホルモンの分泌量が増える…ということ自体は事実なのでしょうか?

成長ホルモンの働きとは?


はじめに成長ホルモンの概要をインプットしましょう。
成長ホルモンは、傷ついた細胞を修復し、肌を再生するための鍵となるホルモンです。
身体の中でたんぱく質の合成に働きかけ、疲労の回復や成長を促進する役割を担っています。
脳下垂体から血液中に分泌され、骨端線(骨の成長する部分)の細胞群や筋肉細胞、脂肪細胞や線維芽細胞(せんいがさいぼう)などに作用します。
血中の分泌量は10歳から14歳の頃にピークを迎え、思春期までの子どもの背を伸ばす働きをします。
14歳以降は徐々に血中分泌量が減少し、50歳を超えるとピーク時の5分の1から7分の1にまで減ってしまいます。
とはいえ、成長ホルモンは「成長」にだけ関わっているわけではありません。
成人の体内においては、筋肉のたんぱくの合成や心筋の収縮力の増強、線維芽細胞のコラーゲンやヒアルロン酸を合成する能力の向上、腸周囲のホルモン感受性リパーゼを活性化させ内臓脂肪を減らすなど、脳に対するさまざまな作用を行っています。
また、成長ホルモンは内臓脂肪にも関与しますので、成長ホルモンの分泌が不十分であると肥満になりやすいとされています。
このように、子どもから大人まであらゆる年代に必要な、体内で重要な役割を担っているホルモンなのです。

成長ホルモンはいつ分泌される?


こうした働きを持つ成長ホルモンは、睡眠中に分泌量が増加する代表的なホルモンです。
しかしながら、「お肌のゴールデンタイム」とされる午後10時~午前2時の時間帯に、成長ホルモンが多く分泌されるという科学的根拠はありません。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることはご存知でしょう。
成長ホルモンがしっかりと分泌されるためには、深いノンレム睡眠(徐波睡眠)が必要です。
深い睡眠は、何時に寝たか、何時間寝たか…という要素とは無関係で、睡眠に入ってから最初の3時間のうちに出現します。
成長ホルモンもこれに伴って入眠後に増加し、深い睡眠(徐波睡眠)で最大のピークを示します。
ですから、睡眠の最初の3時間にいかにぐっすり眠るかが大事だと言われています。
そのことから、眠りが浅くて深いノンレム睡眠が現れない場合は、成長ホルモンの分泌量が少なくなる可能性が考えられます。
さらに徹夜をしてしまうと、このピーク自体が消滅してしまいます。
成人では、消えたピークの分は小刻みな分泌パターンによってある程度補われることが報告されていますが、成長期の人に同様の機能が働くかどうかは、今のところ解明に至っていません。

成長ホルモンとお肌の関係


生まれたての赤ちゃんの皮下組織の水分含有率は88%、20歳でも68%ほどです。
このころの肌は弾力とハリを保っています。
皮下組織の水分含有率は年々低下し、60歳を超えると60%以下になります。
これには成長ホルモンが大きく関わっています。
なぜなら、皮下組織に水分を溜め込んで弾力を作る役割は、皮下組織にあるコラーゲンやヒアルロン酸が担っていますが、成長ホルモンは皮下組織の線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸を生合成しているのです。
つまり、皮下組織に水分を集め弾力と膨らみを持たせることに、成長ホルモンは大きく作用しているのです。
ところが、成長ホルモンは10代をピークに急速に低下し、30歳以降は10歳ごとに25%ずつ低下していきます。
加齢に伴いコラーゲンやヒアルロン酸の合成能力も衰えますから、肌は弾力を失いシワが目立ち始めます。
肌のハリを回復させるため、ヒアルロン酸の注射をする美容外科などもありますね。
良質な睡眠によって成長ホルモンがしっかりと分泌されていると、線維芽細胞が活性化し、皮下のヒアルロン酸量も増加します。
その結果、皮下の水分保持量が高まり、肌のハリもよくなるのです。
さらに、成長ホルモンが分泌されることで、肌の新陳代謝もよくなります。
ターンオーバーが促進され、新しい肌がどんどん作られますので、多少ダメージを受けても、肌の新陳代謝が正常に機能していると修復されます。
肌がしっかり生まれ変われば、シミの定着も少なくなります。
年齢を重ねるにつれターンオーバーは乱れますので、質の良い睡眠をとり成長ホルモンをしっかり分泌することはとても大切です。
ちなみに、成長ホルモンがきちんと分泌されるためには、血糖値がしっかり下がっていることも重要です。
食事をすると血糖値が上がりますから、寝る直前に食べるのはお勧めできません。
何か食べるとリラックスして眠くなる…と思うかもしれませんが、質の良い睡眠にとっては逆効果です。
寝る直前の食事はお肌にもダイエットにもよくないことをお忘れなく、寝る2~3時間前までには食事を終わらせるのが理想的です。
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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情報提供元: mocosuku