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2025-07-04 08:40

昨年、注目を集めた“おじさんドラマ”の一角、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系)。昭和の価値観で生きる中年男・沖田誠が、ゲイの青年に出会いアップデートしていく様子が大きな反響を生んだ。主演は、おじさんをチャーミングに演じることに定評のある原田泰造。SPドラマ放送を経て、いよいよ劇場版も公開。原田泰造ら出演者と、原作マンガ著者による対談で、本作に込められた“世のおじさんたちへのメッセージ”を探る。
【漫画】令和じゃ絶対NG…昭和おじさんの強烈偏見ワードとは?
■「誠の姿に共感」 おじさん会社員とゲイの青年の交流を通じた心の成長物語
原作マンガ『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』は、2021年3月よりLINEマンガで連載がスタート。世間の常識と偏見で凝り固まった会社員の沖田誠が、ゲイの青年・五十嵐大地との出会いを経て、人間的に成長していく姿を描いたハートフルストーリーだ。ドラマで誠を演じるのは、トリオ・ネプチューンの原田泰造。そして大地に扮するのが、FANTASTICSの中島颯太だ。連続ドラマは大好評のうちに放送が終了したが、6月28日にはスペシャルドラマが放送され、7月4日には映画が公開される。
――“最近の若者”が理解できないおじさん・誠、それをアップデートさせるゲイの青年・大地を演じてみて、どう思われましたか。
【原田泰造】 ものすごく気持ちが分かりましたね。誠は、これまで彼なりに一生懸命生きてきたけれど、時代の変化についていけず、半ば諦めていた。そこに大地くんという存在が現れて、彼自身も進化していく。その姿にはすごく共感しました。
【中島颯太】 大地くんという役については、僕自身が「こういう人になりたい」と思いながら生きてきたので、彼が誰に対しても肯定的な姿勢で接するところや、「好き」という気持ちに対する力強い意志を持っているところに強く惹かれました。
――誠や大地を演じたことで、ご自身のなかで変化したことは?
【中島颯太】 すごくあります。大地くんが発する言葉から学ぶことが本当にたくさんあって、演じながらも彼に刺激をもらっていました。ドラマでは清々しい大地くんでしたが、映画では少し人間味のある、寂しさを抱えた一面も描かれています。それを見て、大地くんも人間なんだなと思いました。だからこそ「好きっていいんだな」と思えるし、それを乗り越えた大地くんの姿にまた勇気をもらえます。
【原田泰造】 僕も、沖田誠がすごく色々なことを吸収して頑張っている姿を見て、少なからず影響を受けています。映画では、より家族のことを理解しようとしたり、大地くんたちを心から応援するようになったり。過去の自分を反省する場面もあって、本当に成長したなと感じます。
■LGBTQを“暗く”描くのは失礼、“アップデート”に作者が込めた思い
――改めて、原作マンガが誕生した経緯を教えてください。LGBTQなど多様性に触れる作品で、おじさんが主人公というのは珍しいですよね。
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 作品を書き始めた頃、自分たちもLGBTQという言葉をメディアなどで少しずつ耳にするようになってきたのが、一つのきっかけです。ただ、私自身がLGBTQフレンドリーだと声高に主張できるほどの知識があるわけではありません。かといって、否定したいわけでもない。そういう「いい意味で、どっちでもいいんじゃないかな」と思っている人って、実は結構いるんじゃないかと思ったんです。
でも、そういう人たちの「主張」って、なかなか表に出しづらいですよね。「人のセクシュアリティは別にどっちでもいいと思うよ。偏見もないです」というスタンスのマンガって、あまり見かけないなと思いまして。おじさんを主人公にしたのは…単純に私が一番おじさんを描きやすいからです(笑)。
【練馬ジム先生(作画担当)】 おじさんというキャラクターが一番コミカルに、面白く動いてくれると思ったんです。LGBTQを扱うということで、テーマ自体は重くなりがちですが、登場する方々が、みんな暗い気持ちで生きているわけではないですよね。私たちはギャグが得意なので、コメディタッチで、コミカルなキャラクターを描くことで、そういったメッセージも伝えられるのではと考えました。
――こうした題材を描くうえで意識したことはありましたか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 LGBTQだからといって、ことさらに暗く描く必要はないんじゃないかと思ったんです。だって、誰にだってそれぞれ悩みはあるじゃないですか。LGBTQの方たちだけが、特別に暗いわけではないと。
【練馬ジム先生(作画担当)】 それに、私たち自身は当事者ではないので、もし暗く描いてしまったら、それはすごく失礼にあたるんじゃないかという気持ちもありました。当事者の方がご自身の経験を元に描かれるのとは訳が違いますし、私たちにはそれはできません。だからこそ、自分たちの視点を通して、それぞれのキャラクターとどう向き合っていくか、ということを大切にしました。
■「特に意識せずとも自然とにじみ出る」原田泰造が演じる“チャーミングなおじさん”の魅力
――誠は最初は嫌なおじさんですが、だんだんチャーミングに見えてきます。演じる上で意識したことは?
【原田泰造】 特に意識したことはないんですが(笑)、原作のマンガを読んだり、ドラマに出てくる古池正則(渡辺哲)さんという先輩がいるんですが、彼もすごくチャーミングで、一生懸命なんです。そういう姿を見ていると、自分も真似したくなります。
――原作者のお二人はどう見ていましたか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 もう、原田さんご本人がチャーミングなので(笑)。でも、映画の中で、誠が佐藤さん(曽田陵介)に説教するシーンがあるんですが、その時の迫力には驚きました。普段のおじさんの怖い部分というのはあまり描いてこなかったので、改めて男性が怒ると迫力があるんだなと。でも、そのギャップがまた魅力的ですよね。
【練馬ジム先生(作画担当)】 だからこそ、チャーミングな部分が際立つんだと思います。少し素直になって相手の話を聞く姿勢を見せるだけで、すごく話しやすくなるんだなと感じました。
――視聴者の方も、きっとそうして引き込まれていったのでしょうね。
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 もともと、誠と同い年ぐらいの人、40代~50代の人に、1番読んでもらいたいなって気持ちはあったんです。一方で、たぶん読んでもらえないだろうな、という思いもありました。でも、原田さんが演じてくださったおかげで、私たちが届けられなかった世代の方に届いているのが、すごく嬉しかったです。
■世のおじさんたちへ「変わりたいと思ったら、今何でもできる時代」
――この作品は、価値観が変わることの難しさや大切さを描いていますが、ご自身がこれまでの人生で、価値観を変えられずにもがいたり、逆にそれを乗り越えたりした経験はありますか?
【原田泰造】 僕は本当にずっと逃げ回ってきた性格なので、あんまりもがいた経験はないんですよね(笑)。この仕事だけは続いていますが、それも多分好きだからだと思います。
【中島颯太】 僕は昔から両親にポジティブに育てられてきたので、好きなことだからこそ全部乗り越えてきたという感じです。落ち込むことよりも、どうやったら好きなことを続けられるかを考えてきました。だからこそ、ずっと夢を追いかけ続けられているんだと思います。今は、それを伝えたいという気持ちで活動しています。
――世のおじさんたちへ、何かメッセージはありますか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 私の知り合いのおじさんに「お茶入れろ!」という人がいたのですが、ある時「もっと可愛く言ってくれたらお茶入れるよ」って言ってみたら、本当に可愛くお願いしてくれたんです(笑)。そしたら私も素直にお茶を入れられたし、彼も嬉しそうでした。だから、おじさんたちも、ちょっとだけ工夫して、可愛くお願いしてみると、周りとの関係が良くなるかもしれません。
【練馬ジム先生(作画担当)】 おじさんって、周りからの期待とかプレッシャーとか、自分が先頭に立たなきゃいけないっていう使命感とか、色々抱えていると思うんです。でも、失敗しても大丈夫だし、周りは意外と許してくれるものです。だから、気負わずに、素直に怖い時は怖い、嫌な時は嫌だって相談してほしいです。
【原田泰造】 まずは自分がおじさんだということを自覚することですかね(笑)。どうすればいいか分からなかったら、AIとかChatGPTに聞けばいいんですよ。本当にその通りにやってみたら、意外と世界が変わるかもしれない。もちろん、今のままでいいと思うならそれでもいいし。でも、変わりたいと思ったら、今何でもできる時代ですから。
【中島颯太】 本当に、正解も不正解もない世の中なので、自分が好きなものを自分らしく突き進んでほしいです。『おっパン』を見て、何が好きであっても、安心して好きでいてほしいなと思います。
取材・文/磯部正和 撮影/草刈雅之
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――“最近の若者”が理解できないおじさん・誠、それをアップデートさせるゲイの青年・大地を演じてみて、どう思われましたか。
【原田泰造】 ものすごく気持ちが分かりましたね。誠は、これまで彼なりに一生懸命生きてきたけれど、時代の変化についていけず、半ば諦めていた。そこに大地くんという存在が現れて、彼自身も進化していく。その姿にはすごく共感しました。
【中島颯太】 大地くんという役については、僕自身が「こういう人になりたい」と思いながら生きてきたので、彼が誰に対しても肯定的な姿勢で接するところや、「好き」という気持ちに対する力強い意志を持っているところに強く惹かれました。
――誠や大地を演じたことで、ご自身のなかで変化したことは?
【中島颯太】 すごくあります。大地くんが発する言葉から学ぶことが本当にたくさんあって、演じながらも彼に刺激をもらっていました。ドラマでは清々しい大地くんでしたが、映画では少し人間味のある、寂しさを抱えた一面も描かれています。それを見て、大地くんも人間なんだなと思いました。だからこそ「好きっていいんだな」と思えるし、それを乗り越えた大地くんの姿にまた勇気をもらえます。
【原田泰造】 僕も、沖田誠がすごく色々なことを吸収して頑張っている姿を見て、少なからず影響を受けています。映画では、より家族のことを理解しようとしたり、大地くんたちを心から応援するようになったり。過去の自分を反省する場面もあって、本当に成長したなと感じます。
■LGBTQを“暗く”描くのは失礼、“アップデート”に作者が込めた思い
――改めて、原作マンガが誕生した経緯を教えてください。LGBTQなど多様性に触れる作品で、おじさんが主人公というのは珍しいですよね。
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 作品を書き始めた頃、自分たちもLGBTQという言葉をメディアなどで少しずつ耳にするようになってきたのが、一つのきっかけです。ただ、私自身がLGBTQフレンドリーだと声高に主張できるほどの知識があるわけではありません。かといって、否定したいわけでもない。そういう「いい意味で、どっちでもいいんじゃないかな」と思っている人って、実は結構いるんじゃないかと思ったんです。
でも、そういう人たちの「主張」って、なかなか表に出しづらいですよね。「人のセクシュアリティは別にどっちでもいいと思うよ。偏見もないです」というスタンスのマンガって、あまり見かけないなと思いまして。おじさんを主人公にしたのは…単純に私が一番おじさんを描きやすいからです(笑)。
【練馬ジム先生(作画担当)】 おじさんというキャラクターが一番コミカルに、面白く動いてくれると思ったんです。LGBTQを扱うということで、テーマ自体は重くなりがちですが、登場する方々が、みんな暗い気持ちで生きているわけではないですよね。私たちはギャグが得意なので、コメディタッチで、コミカルなキャラクターを描くことで、そういったメッセージも伝えられるのではと考えました。
――こうした題材を描くうえで意識したことはありましたか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 LGBTQだからといって、ことさらに暗く描く必要はないんじゃないかと思ったんです。だって、誰にだってそれぞれ悩みはあるじゃないですか。LGBTQの方たちだけが、特別に暗いわけではないと。
【練馬ジム先生(作画担当)】 それに、私たち自身は当事者ではないので、もし暗く描いてしまったら、それはすごく失礼にあたるんじゃないかという気持ちもありました。当事者の方がご自身の経験を元に描かれるのとは訳が違いますし、私たちにはそれはできません。だからこそ、自分たちの視点を通して、それぞれのキャラクターとどう向き合っていくか、ということを大切にしました。
■「特に意識せずとも自然とにじみ出る」原田泰造が演じる“チャーミングなおじさん”の魅力
――誠は最初は嫌なおじさんですが、だんだんチャーミングに見えてきます。演じる上で意識したことは?
【原田泰造】 特に意識したことはないんですが(笑)、原作のマンガを読んだり、ドラマに出てくる古池正則(渡辺哲)さんという先輩がいるんですが、彼もすごくチャーミングで、一生懸命なんです。そういう姿を見ていると、自分も真似したくなります。
――原作者のお二人はどう見ていましたか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 もう、原田さんご本人がチャーミングなので(笑)。でも、映画の中で、誠が佐藤さん(曽田陵介)に説教するシーンがあるんですが、その時の迫力には驚きました。普段のおじさんの怖い部分というのはあまり描いてこなかったので、改めて男性が怒ると迫力があるんだなと。でも、そのギャップがまた魅力的ですよね。
【練馬ジム先生(作画担当)】 だからこそ、チャーミングな部分が際立つんだと思います。少し素直になって相手の話を聞く姿勢を見せるだけで、すごく話しやすくなるんだなと感じました。
――視聴者の方も、きっとそうして引き込まれていったのでしょうね。
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 もともと、誠と同い年ぐらいの人、40代~50代の人に、1番読んでもらいたいなって気持ちはあったんです。一方で、たぶん読んでもらえないだろうな、という思いもありました。でも、原田さんが演じてくださったおかげで、私たちが届けられなかった世代の方に届いているのが、すごく嬉しかったです。
■世のおじさんたちへ「変わりたいと思ったら、今何でもできる時代」
――この作品は、価値観が変わることの難しさや大切さを描いていますが、ご自身がこれまでの人生で、価値観を変えられずにもがいたり、逆にそれを乗り越えたりした経験はありますか?
【原田泰造】 僕は本当にずっと逃げ回ってきた性格なので、あんまりもがいた経験はないんですよね(笑)。この仕事だけは続いていますが、それも多分好きだからだと思います。
【中島颯太】 僕は昔から両親にポジティブに育てられてきたので、好きなことだからこそ全部乗り越えてきたという感じです。落ち込むことよりも、どうやったら好きなことを続けられるかを考えてきました。だからこそ、ずっと夢を追いかけ続けられているんだと思います。今は、それを伝えたいという気持ちで活動しています。
――世のおじさんたちへ、何かメッセージはありますか?
【練馬ジム先生(ネーム担当)】 私の知り合いのおじさんに「お茶入れろ!」という人がいたのですが、ある時「もっと可愛く言ってくれたらお茶入れるよ」って言ってみたら、本当に可愛くお願いしてくれたんです(笑)。そしたら私も素直にお茶を入れられたし、彼も嬉しそうでした。だから、おじさんたちも、ちょっとだけ工夫して、可愛くお願いしてみると、周りとの関係が良くなるかもしれません。
【練馬ジム先生(作画担当)】 おじさんって、周りからの期待とかプレッシャーとか、自分が先頭に立たなきゃいけないっていう使命感とか、色々抱えていると思うんです。でも、失敗しても大丈夫だし、周りは意外と許してくれるものです。だから、気負わずに、素直に怖い時は怖い、嫌な時は嫌だって相談してほしいです。
【原田泰造】 まずは自分がおじさんだということを自覚することですかね(笑)。どうすればいいか分からなかったら、AIとかChatGPTに聞けばいいんですよ。本当にその通りにやってみたら、意外と世界が変わるかもしれない。もちろん、今のままでいいと思うならそれでもいいし。でも、変わりたいと思ったら、今何でもできる時代ですから。
【中島颯太】 本当に、正解も不正解もない世の中なので、自分が好きなものを自分らしく突き進んでほしいです。『おっパン』を見て、何が好きであっても、安心して好きでいてほしいなと思います。
取材・文/磯部正和 撮影/草刈雅之
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