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日韓の枠を越えて 『愛の不時着』の制作会社が目撃した日本ドラマの撮影現場と魅力

エンタメ
2025-08-11 11:00

『愛の不時着』(2019年)や『ヴィンチェンツォ』(2021年)など数々のヒット作を手がけ、近年ではApple TV+の米国ドラマ『ビッグ・ドア・プライズ〜人生の可能性、教えます』シリーズでも注目を集める韓国の制作会社「STUDIO DRAGON(以下、スタジオドラゴン)」。彼らが日本のTBSと手を組み、連続ドラマ『初恋DOGs』を制作した。日本でも韓国でもリメイク作品が人気を博す中で、今回、オリジナル脚本かつ日韓共同制作という、新たな挑戦に踏み出した。


【写真をみる】国境を越えたドラマ制作の発見と共鳴とは?


国境を越えて“良い物語”を届ける制作現場にはどのような発見と共鳴があったのか。制作を担ったキム・ギョレ氏と演出のノ・ヨンソプ氏が語る、現場のリアルな声とは。


言語や文化の違いより大きな共通点

日本との共同制作に参加したのは、スタジオドラゴンのプロデューサー・キム・ギョレ氏と演出家・ノ・ヨンソプ氏。ノ氏は、韓国の有料チャンネル「tvN」のドラマ『無駄なウソ-誰にも言えない秘密-』(原題:소용없어 거짓말)を演出し、tvN短幕劇『散歩』(2023年)では米ヒューストン国際映画祭のシルバーレミー賞を受賞した経歴を持つ実力派だ。


『初恋DOGs』では、『散歩』と同様に“犬”が重要な役割を担うこともあり、ノ氏は「懐かしさとワクワクする気持ちになりました」と企画段階から親しみを抱いていたという。「犬と一緒に撮影するのが簡単ではないと知っていたので心配でもありましたが、作品が伝えようとするテーマには合う設定だったので、期待も膨らみました」とも語る。


文化や言語の違いを乗り越えて撮影現場に入った2人が強く感じたのは、どの国でも“視聴者のために良い作品を作る”という制作陣の根本的な姿勢は変わらないということだった。


ノ氏は「今回は私とキム・ギョレプロデューサーを除いて、ほとんどのスタッフが日本人だったので、日本の制作現場をしっかり経験することができました。似ているようで実は多くの違いがありましたが、不慣れさや負担よりも、新鮮さや面白さのほうが勝っていて、現場の雰囲気を楽しめました」と振り返る。


キム氏も「今回は違いよりも共通点に集中しようと努力しました」と続ける。「それはドラマ産業で最も重要なこと、つまり視聴者のために良質なコンテンツを作るということです。それだけはどの国の制作陣であっても変わらない」と強調する。


スピンオフドラマという切り口に感心

韓国ドラマに比べ、比較的短い話数で構成される日本の連続ドラマ。その特性を踏まえ、『初恋DOGs』でも物語は主人公たちの心情に焦点を当て、密度の高い展開を目指した。


ノ氏は「ランニングタイムもエピソード数も韓国ドラマより短かったため、ストーリーは主人公たちの叙事に集中し、濃密に進んでいく感覚でした」と語る。その中で、登場人物の魅力をより深く描く手段としてスピンオフ企画が生まれた点に注目したという。


「本編では描き切れない魅力的なキャラクターが多く、それをスピンオフドラマという形で広げていく点が印象的でした」と話し、「個人的には、主人公が勤める弁護士事務所の所長を主人公にしたスピンオフも見たかった。演じている岸谷五朗さんへのファン心も込めてですが」と、キャストや設定への愛着をのぞかせた。


世界が注目するKドラマの裏にある“視聴者”の力

2020年頃からの日本における第4次韓国ドラマブームの火付け役ともいえる『愛の不時着』をはじめ、スタジオドラゴンが手がけた韓国ドラマは、世界的ヒットを連発している。その理由について、キム氏は「韓国の視聴者たちが私たちの先生です」と明快に答える。


「もちろん優れたクリエイターが多く在籍していることや、会社としての戦略が功を奏した面もあると思いますが、それ以上に韓国の視聴者の方々がくださる良いインサイトを素直に受け入れ、それを糧に発展してきた面が明らかにあります」と、視聴者の声を制作の“土台”としている姿勢を明かす。「その基準に合わせるうちに、いつの間にか世界に通用する作品になっていたという実感があります」とも。


その上で、キム氏は「グローバル経験が増えたことで、社内に蓄積された経験やデータもあります。それをもとに研究や学習を継続して行っていることで、所属するクリエイターたちの能力も自然と成長しているのだと思います」と、組織的な成長サイクルにも言及した。


ノ氏も「韓国の視聴者は、面白いドラマであれば国を問わず本当に多くの作品を見ています。日本ドラマも、ほぼ現地放映と同時に視聴するほど」と、その鑑賞量と視野の広さを強調。「そうした経験値が積み重なった視聴者たちから寄せられる鋭いフィードバックを受け入れていくうちに、作品の内容が自然とグローバル基準にも合ってきたのではないか」と分析する。


さらに、スタジオドラゴンの社内文化についても「本当に激しい内部評価と検討が印象的でした。絶えず企画やアイデアへのフィードバックを受けながら、良い物語を探し出し、開発する努力が続けられています」と述べ、ヒットの裏には“視聴者”と“組織”の両面から磨き続ける努力があることを強調した。


日本との共同制作に込めた思い

韓国で『深夜食堂』(2015年/TBS系)のように日本ドラマがリメイクされるケースもある中、TBSという制作パートナーに対して、2人は特別な思いを抱いていた。


キム氏は「TBSは日本のテレビドラマ史の中でも特に豊富な実績を持つ、歴史ある放送局です」と切り出す。「スタジオドラゴンのプロデューサーの中には、幼い頃から日本のドラマ、とりわけTBS作品を見て育った者も多く、それはおそらく当社だけでなく、韓国の多くのクリエイターにも共通していることだと思います」と加える。


日本ドラマが韓国の制作陣に与えてきた長年の影響を振り返りつつ、「一緒に制作をすると決まった時には、周りからうらやましがられました」と明かすように、韓国の現場でもTBSとの連携は特別な意味を持っていたようだ。


ノ氏も「TBSドラマは、多様な年齢層の視聴者を満足させる、多彩な色を持った魅力的な作品が多いと感じます」と語り、「偶然かもしれませんが、日本のドラマの中に面白いと思って見たTBSの作品がたくさんあります」と、自身の好みに合う番組が多かったと明かす。


さらに「好きな作品を作ったTBSの監督たちと時々すれ違ったことがあり、そのたびに胸が高鳴りました。通り過ぎたあとで『あいさつすればよかった』と悔やんだ場面もありました」と振り返り、日本作品への憧れと親しみを口にした。


日本ドラマと俳優へのリスペクト

日本のドラマや俳優に対してどのような関心を抱いているのか。2人の口からは次々と作品名や俳優名が挙がる。


キム氏は、直近では2024年に放送された『Eye Love You』(TBS系)に強い思い入れを持っているという。出演していたチェ・ジョンヒョプとは、かつて『魔女食堂にいらっしゃい』(原題:마녀식당으로 오세요/2021年)で共に仕事をした縁があり、「出演されていてうれしかったですし、ソウルロケ撮影の際、第10話にエキストラで出演したので切っても切れない作品になりました」と意外なエピソードも披露してくれた。


俳優については「『初恋DOGs』に出演した俳優全員を含めて、柳楽優弥さん、安藤サクラさん、リリー・フランキーさん、役所広司さん、宮沢りえさん、妻夫木聡さんなど…挙げればキリがありません。いつか一緒に作品を作りたいです」と話し、日本の実力派俳優陣への尊敬をにじませる。


ノ氏も「本当にたくさんありますが…」と前置きしつつ、『流星の絆』(2009年)、『凪のお暇』(2019年)、『アンナチュラル』(2018年)といったTBSドラマの作品名を次々と挙げる。特に『半沢直樹』シリーズについては「本当に一気に見てしまうほど面白かった」と振り返り、他にも『それでも、生きてゆく』(2011年/フジテレビ)や、お笑いタレントのバカリズムが脚本を手がけた『ブラッシュアップライフ』(2023年/日本テレビ)など、ジャンルを問わず幅広く日本の作品名が挙がった。


日本の俳優の演技についても触れ、中でも印象に残っているのは、『天国と地獄〜サイコな2人〜』での綾瀬はるかと高橋一生による男女入れ替わりの演技や、『最愛』(いずれも2021年/TBS系)で見せた吉高由里子の繊細な感情表現だったという。


「日本のドラマは、人の感情に深く入り込むという特徴があります。だから見ていると、自分自身の心と向き合うことも多く、見終わると『また頑張ろう』という気持ちになる。励まされる感覚があるから好きなんです」。ノ氏の言葉からは、日本作品が持つ繊細な演出力への実感が伝わってくる。


韓国で培った創作力と、日本のドラマへの理解。その両輪を携えて参加した今回の経験はスタジオドラゴンの今後の創作においても、確かな手応えを残したはずだ。国や文化を越えて映像制作の可能性が広がる今、こうした協働の積み重ねが次代の物語を育んでいく。


印象的だったのは、2人の語りからにじみ出る、日本ドラマへの深い親しみと知識の量だ。作品や俳優の名を惜しげもなく挙げるその様子には、プロデューサーや演出家としての目線を超え、1人の視聴者としての情熱が感じられた。その目線の確かさが、文化の違いを超えて“面白い”を共に追い求める原動力になっているのだろう。


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