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『不適切にもほどがある!』の音楽を支えたMAYUKOさん。ミュージカル愛が生んだ緻密な劇伴の裏側【前編】【ドラマTopics】

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2025-12-22 11:00

作品の世界観そのものを音で立ち上げるように、細部までこだわり抜いて楽曲を生み出す作曲家のMAYUKOさん。劇伴の世界で数々の作品を担当してきた彼女だが、今回のインタビューでは、音楽家としての技術以上に、“ミュージカルへの圧倒的な愛”と“研究者のような探究心”が強く印象に残った。


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語り口は穏やかだが、舞台の話題になると一気に熱がこもる。そのエネルギーが、金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系・2024年)や、スペシャルドラマ『新年早々 不適切にもほどがある!~真面目な話、しちゃダメですか?~』(TBS系)の音楽の隅々にまで息づいている。


ミュージカル沼への入口は1本の舞台

MAYUKOさんがミュージカルの深みにハマったのは、2017年。日本初演でありながら、東京と大阪で約4か月間のロングラン上演となったミュージカル「ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~」。初めて観劇した瞬間、「バチーンと稲妻が走ったほど、衝撃を受けた」と語る。


この作品をきっかけに、「自分が知らないいい作品がもっとたくさんあるはずだ」とミュージカルの奥深さに一気に引き込まれた。そこから「ビリー・エリオット」に足しげく通い、ロングランの幕が閉じた時には“ロス”状態に。そのロスを埋めるように、出演者の次の舞台を追いかけた。


現在は、年間70〜80本の観劇が習慣になったという。最近では「もっと知りたいという気持ちが止まらなくて。ついにはミュージカルスクールの講習にも行ってしまったほどです(笑)」と明かすMAYUKOさん。


“作品を深く理解したい”という思いが、観客としての興味を越え、学びへとつながっていった。


求められたものを正確に読み解くために

彼女の創作姿勢を語るうえで欠かせないのが、その“研究熱心さ”だ。


MAYUKOさんが劇伴として参加した『不適切にもほどがある!』では、主人公がタイムスリップすることから、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985年・アメリカ)を3回ほど見直し、使用されているシンセサイザーの音色を分析するところから始めたという。


依頼されたテイストを感覚だけで捉えるのではなく、その背景にある音楽文化をとことん掘り下げる。「“こんな感じ”で済ませるのではなく、可能な限り正確に理解したい。結局、生真面目なだけなんですけど、掘り下げれば掘り下げるほど、楽曲の説得力が増す気がするんです」と話す。


さらにMAYUKOさんは「“尾崎豊さんっぽく”、“ちあきなおみさんっぽく”と言われたら、できるかぎり全曲聴くようにしました。その中で“昭和歌謡っぽさはこのフレーズだな”と、解釈を合わせる作業をしていきました」と、磯山晶プロデューサーのリクエストと一致させていく作業を行った。


取材を通して見えてきたのは、音楽家である前に“研究者”でもある姿だった。


声の魅力を最大化する音作り

MAYUKOさんの音作りには、俳優の声を細かく分析する視点も欠かせない。


第1話にゲスト出演した木下晴香さんについては、ちょうど楽曲を作り始めるタイミングで彼女が出演していたミュージカル「アナスタシア」を観劇。そこで、自然と音域を分析していたという。


「舞台を見ていて、“一番きれいに響くキーはここだ”って分かったんです。その高さで曲を作ったら、本当にぴったりでした」。


この“最良のキーを探す作業”は、主人公を演じる阿部サダヲさんにも徹底された。阿部さんの歌声について、MAYUKOさんは「女性キー(一般的な女性が発声しやすい音の高さ)を楽に出せるほど音域が広い」と語る。その幅を正しく把握するため、阿部さんが参加するバンド・「グループ魂」の楽曲を毎日聴き込み、最も輝く音域を探ったという。


「一番かっこよく歌っていただけるキーを見つけたくて。グループ魂の楽曲を全部聴いて研究しました。今ならほとんど歌えます(笑)」。


俳優が無理なく、そして最も魅力的に歌えるポイントを見極める。その聴覚の鋭さは、長年の観劇経験と、作品ごとに行う綿密な“音の研究”によって磨かれたものだ。


“ミュージカルへの敬意”が生む説得力

『不適切にもほどがある!』では、毎話さまざまなミュージカルシーンが入っていた。作品の大きな特徴の1つだが、こうしたシーンを成立させるためには、音楽面でも細やかな準備が必要になる。


MAYUKOさんは、ミュージカルへの思い入れが強いからこそ、1つ1つの楽曲に“作品としての説得力”を持たせたいと考えていたという。


「ミュージカルって、歌が始まる瞬間にキャラクターの気持ちが一気に開くようなところがありますよね。このドラマのミュージカルシーンも、その流れが自然に伝わるようにしたいと思っていました」。


決して特別に構えたわけではなく、あくまで“ジャンルとして大切にしたい”という姿勢だ。
その丁寧なアプローチは出演者にも伝わった。


歌が物語の一部としてスムーズに流れるように。ミュージカルへの敬意を込めて音を配置したことで、ドラマ全体の空気にも自然に深みが生まれた。


誠実な姿勢が磨く創作の力

取材の終盤、MAYUKOさんは、「好き」が仕事と結びついた喜びを、実感を込めて語ってくれた。


「ただ好きで見ていただけだったものが、気づいたら仕事につながっていたんです。趣味の延長線上に仕事があるなんて、こんな奇跡はないと思います」。


ミュージカルを見る喜びと、作品のために音楽を作る喜び。そのどちらも全力で向き合ってきたからこそ、今回の作品で深みのあるミュージカル曲が生まれたのだろう。


「作品づくりに携わる以上は、観客としても作り手としても、誠実に関わりたい。その姿勢はこれからも変わらないと思います」とMAYUKOさんは語った。


観客としての熱、研究者のような洞察、作曲家としての技術。その全てが合わさって生まれるMAYUKOさんの音楽は、スペシャルドラマ『新年早々 不適切にもほどがある!~真面目な話、しちゃダメですか?~』の世界も力強く支えている。


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