エンタメ
2026-04-18 12:00
2日の配信スタート以降、中毒者が続出しているNetflixシリーズ『九条の大罪』。15日に発表された「日本におけるNetflix週間TOP10(シリーズ)」では、初週から引き続き2週連続の第1位を記録。さらに「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」でも、先週の7位から第4位へと大きくランクアップした。この快進撃を記念し、本作の誕生秘話から実写化に込めた想いまでを、日本エンタメ界をけん引するトップクリエイターたちが語り尽くした座談会が公開された。
【写真】距離が縮んでいく九条(柳楽優弥)と烏丸(松村北斗)『九条の大罪』より
参加したのは、100人以上の弁護士への徹底的な取材を経て原作を生み出した真鍋昌平氏(原作者)、数々のヒット作を世に送り出してきた土井裕泰氏(監督)、鋭い人間観察眼で物語を編み上げる根本ノンジ氏(脚本)、そして本作を総括する那須田淳氏(プロデューサー)の4人。ここでしか聞けない、撮影現場での驚きのエピソードや創作の裏話が次々と飛び出した。
「正義とは何か」が曖昧な現代に、なぜ今この物語を世に問うのか。制作陣の並々ならぬこだわりが共鳴し合い、作品への熱い想いが重なり合った、全10話の鑑賞をより深くする貴重な座談会となっている。
――真鍋先生は『闇金ウシジマくん』を長期連載したあと、2020年から『九条の大罪』の連載をスタートさせました。そもそもこの漫画は、どんなアイデアのもと生まれた作品だったのでしょうか。
真鍋:『闇金ウシジマくん』の連載中から、次は弁護士を題材にしたいと思って、いろいろと取材は進めていたんですよね。というのも、『闇金ウシジマくん』に出てくる人たちは、やりたい放題の犯罪者たちが多くて、その善悪は読む人が決めるみたいな感じだった。だったら次は、「法律」という基準の中で、結果を出す人の話にしたいなって。あと、思っていたのは、その人が犯した「罪」と、その人の「感情」って、やっぱり別物。「被害者」が思うことと「加害者」が思うことは、絶対に違うわけで。でも、事件としては、一緒なんですよね。その両側を描くことを次はやってみたいと思い、100人ぐらい、弁護士の方たちに取材をしたんです。
――『ウシジマくん』の連載がスタートした2004年と比べると、世の中的にも大きく変化したように思います。そのあたりのことも意識されていたのでしょうか。
真鍋:そうですね。あのまま『闇金ウシジマくん』の執筆を続けていたら、読む側が耐えられなくなってくるだろうなっていうのは、ちょっと感じていました。『闇金ウシジマくん』で描いたような「格差」の問題は、依然としてあるというか、よりひどくなっている。弱者は弱者のまま、強者の食いものにされるような状況も、相変わらず続いていて。だからこそ、何か「救い」の部分を入れていかないと、読むほうも耐えられないと思ったんです。あと、今の社会のように、犯罪の当事者になってしまう人が多くなると、もうみんなつらくて見ていられなくなるんじゃないかっていうのもあって……。
那須田:本人の意思にかかわらず、犯罪の当事者になってしまう人が増えているのは、実感としてありますよね。今の時代、自分たちが思っているよりも近いところに、その境界線があるんだろうなっていう。それは、『九条の大罪』を読みながら自分も思ったというか、もうどっちに転ぶかわからない世界じゃないですか。塀の上を歩いていて、ふとした拍子にあちら側に落ちてしまうかもしれない。そういう世界に生きていることを、『九条の大罪』は改めて感じさせてくれた。「もしそうなったら、どうしたらいいんだろう?」とか、そういうことを一緒になって考えられるような作品だなと。そういう意味で、今の時代にすごくフィットしている作品だと思いました。
――『ウシジマくん』の例もありますし、真鍋先生としては、実写化の話も早い段階から想定されていたのですか。
真鍋:そうですね。『闇金ウシジマくん』というひとつの成功例があったというか、映像化されると、まったく違う層の人たちが認知してくれることを実感しました。すごい影響力なんですよね。なので『九条の大罪』にしても、そういう広がり方をしてくれたらいいなと思っていました。
――真鍋先生の中で「実写化する際の条件」はありましたか。
真鍋:自分が描いているものの本質をちゃんと押さえてくれたら、細かいところはどう変えてもらってもいいぐらいに思っています。漫画とドラマは別物。映像作品は、役者やスタッフ、皆さんの思いを凝縮しながら作っていただいています。今回の実写化に関わってくれた皆さんは、過去作品で実績のある方たちばかり。「間違いない」というのは、最初から思っていました。
――実写化にあたって、真鍋先生のほうから「クスッと笑える要素があったらうれしい」という話があったとか。
真鍋:重ための話が続いたら、観ているほうが苦痛になるのではと。なので、クスッと笑
える部分があったほうがいいと思ったんですけど、根本先生の脚本を最初に読ませていただいて…会話の中に出てくる言葉尻のやり取りというか、漫才みたいなやり取りが、個人的にはすごくいいなって思いました。そういうのは、結構好きなので(笑)。
根本:ああ、良かったです(笑)。先生のほうから、そういうご希望があったということで、そのあたりはなるべく意識して、ちょっとした小ネタだったりを入れるようにしました。あと、「薬師前」さんまわりのシーンは、わりと柔らかいことができるというか、薬師前さんといるときは、「九条」も「烏丸」も、ちょっとやさしい感じになるじゃないですか。なので、その3人のシーンには、おもしろい感じをなるべく入れるようにしました。ユーモラスな部分は、僕がご指名いただいた理由だと思っていましたが、原作ものを担当するときは、原作の世界観を崩さないこと、それ以前に、その作品に対して完全にリスペクトすることが大事だと思っています。映像作品として、どう広げながら豊かにして、お返しするか。それが自分の使命だと思っているので、最大限に心掛けました。
――今回のドラマの内容は、基本的には原作を踏襲したものになっていますが、いくつか違うところがあって…いちばん大きな違いは、物語の「始まり方」ですよね。
那須田:「入り口」のところと言いますか、「烏丸」が「九条」のところにやって来るところから始めたいというのは、真鍋先生に最初にご相談させていただいたことのひとつでした。
土井:「烏丸」が「九条」のところに来るところから始まることによって、「烏丸」という人の目線で、この物語を描くことができるんですよね。そこは僕自身、すごく意識したところでもあります。実際、「烏丸」の見た「九条」が、視聴者の目線にもすごく近いと思ったし、「壬生」たちのようなアウトロー側の人間は、僕たちが実際に生活していて、できれば関わりたくない人たちじゃないですか。だから、その中に入って、その人たちの目線で描くのは、ちょっと違うと思ったというか、「烏丸」というフィルターを通すことによって、その人たちのこともより理解しやすくなるんじゃないかと思って。「烏丸」って、ある意味とてもニュートラル。「法律」という揺るぎないものをベースにして、ものを考えているから。そういう意味で、「烏丸」をナビゲーターにして、この物語を見ていこうというのは、いちばん最初のアイデアというか、「発明」だったと思います。
――そんな「烏丸」のキャラクターも、母親との関係であったり、原作からさらに掘り下げられているところがありますよね。
根本:そのあたりも、真鍋先生と何度もお話しさせていただいて。「烏丸」の家族の話は、「烏丸」の軸にもなっている部分なので、原作以上の頻度で「烏丸」の母親が登場するという。そのあたりも、皆さんでいろいろと相談しながら、作っていきました。
那須田:「烏丸」に限らず、この作品に登場するキャラクターって、どの人物も、掘り下げていくと、その背景には「家族」というものがある。それはイコール、その人がそれまでどう生きてきたかということにつながっていくんですよね。だから、もちろん「九条」にも「家族」の歴史があって……みんなそれぞれ、形は違うんですけど、その「家族」とか「背景」は、物語を深くしていく上で、自ずと描きたくなってくるところはあったと思います。
――そんな実写版「九条の大罪」を、真鍋先生はどんなふうに観られたのでしょうか。
真鍋:めちゃくちゃおもしろくて、すでに3回も観てしまいました(笑)。
――(笑)。具体的には、どのあたりが良かったのでしょう?
真鍋:映像って、情報処理能力がすごいんですよね。全10話の中に盛り込まれた情報量はものすごく多いのに、まったく説明的なところがなくスッと頭に入ってくる。もともと自分が考えた話なのに、ドラマを観ながら、「次は、どうなるんだろう?」って思ったり。
一同:(笑)。
真鍋:間合いも(よかった)。実際の人間が演じると、その息遣いだったり、目線で感情を語らせることができるんですよね。例えば、「九条」が落ち込んでいるときに、「烏丸」がそっとお酒を2つ頼むシーンがあって。そこで、「僕も付き合いますよ」とせりふで言うのではなく、ちょっとした行動で、その思いを示す。そういうシーンがいっぱい詰まっていました。それによって、2人の距離が、どんどん近づいてくのがわかる。このドラマを観た人は、この2人のやり取りに、多分メロメロになるんじゃないですか(笑)。
――(笑)。今、真鍋先生がおっしゃったように、柳楽さんと松村さんが生み出す空気感は、本作の肝であるように思いますが、そのあたりはどのように演出されていったのでしょうか。
土井:この作品は、通常の地上波ドラマよりも長い時間を掛けて撮っています。最初からそれを意識していたわけではないのですが、10話を撮っているぐらいで、「烏丸」の「九条」に対する愛情というか、「九条」を放っておけない感情が、画面からすごくにじみ出ているように思ったんです。最初は「この人、何考えているんだろう?」という興味だったはずなのに、いつのまにか「九条」のことを放っておけなくなっている(笑)。その一方で、「九条」は、「壬生」たちからも、引っ張られているわけじゃないですか。だから、10話ぐらいを撮っているときに、「あ、これは九条を真ん中にした、壬生と烏丸のせめぎ合いというか、三つ巴のブロマンスだったのかもしれない」って思って。
根本:そうですよね(笑)。ある種、ラブストーリーですよね。
――結局みんな、「九条」のことが気になっているという(笑)。
土井:そうなんですよ。それは、意図していたというよりも、いつの間にかそうなっていったところがありました。撮影を進めながら、「烏丸」の中で育ってきたものがあり、また「九条」の中でも「烏丸」に対する信頼感が芽生えてきて、いつの間にかそこに、共犯関係というか友情みたいなものが生まれているという。そこは実写版ならではのおもしろさというか、実際の人間が演じるからこその魅力だと思います。
――「九条」と「烏丸」のシーンだけではなく、本作はあまりカットを割らず、じっくり人間を撮っているような印象がありました。
土井:この作品は、「壬生」たちアウトロー、市井の人たちと、たくさんのキャラクターが出てきますが、真鍋先生の取材に基づいて描かれている人間たちなので、ひとりひとりがすごく掘りがいのあるキャラクターなんですよね。俳優たちは、原作や脚本上では描かれていない部分の人生を想像し、背負って、現場にきていると感じました。その熱量が高かったというのもあって、なるべく生っぽくその人間たちを見せたかったんです。「曽我部」とか「金本」とか「森田」とかって、そこまで感情移入できるキャラクターではないと思うんですけど、だんだんと、やっぱり自分たちと同じ世界に生きている人間なんだなという気がしてくる。「九条の大罪」の世界は、何か特別な世界じゃなくて、僕らの生活と本当に地続きにいる人たちの話で、もし、そっちに一歩行ってしまったら、会ってしまう人たちなんだなという感じが、すごくします。
那須田:最初に出てくる佐久本(宝)くんの「森田」のムカつく感じとか、すごく良かったですよね根本:黒崎煌代くんの「曽我部」も良かったですよね。
真鍋:彼はもう、「曽我部」にしか見えなかったです。
那須田:あとは、やっぱり「菅原」ですよね。監督のご推薦で、あの役は、後藤(剛範)さんがいいんじゃないかって……。
真鍋:そう、僕がいちばん驚いたのは、漫画の中でヤク中の人が叫んでいる「シャーラ!タンタンたん」っていうせりふを、実写の中で再現していたことで……。
土井:ああ(笑)。あのせりふは、最初答えが全然見つからなかったんですよね。俳優さんも含めて、とりあえずみんな、自分が思う「シャーラ!タンタンたん」をやってみましょうって言いながら、現場で最終的にああいう形になりました。原作に出てくる「ボクテン入れ墨の刑」も、いまいちわからなくて(笑)。そのあたりを読み解くところから、今回の撮影は始まったんですよね(笑)。
――なるほど(笑)。
真鍋:あと、「薬師前」さんの「なんざんしょ」っていうせりふがあるじゃないですか。あれは原作にもあるんですけど、それは『ブラックジャック』のピノコの「アッチョンブリケ」のように、漫画だから成立するせりふであって…文字だったらいいんだけど、あれを実写で言うのは、すごく難しかったんじゃないかと思って。ものすごく自然だったじゃないですか。どっかの方言みたいに、(池田)エライザさんが、すごく自然に言っていて。
那須田:そうそう(笑)。「田舎のおばあちゃんの口癖なんです」みたいな感じでやってみてくださいってお願いして……。
根本:本当にすごくナチュラルでしたよね。狙いにいっている感じが全然しないというか、普通に言っている感じがして。僕も、すごく良かったと思います。
――「九条の大罪」という作品が、今の時代に漫画で描かれ、それが実写化されることの意味や意義について、皆さんは、どのように考えていますか?
根本:今の時代、「正義」というものが、すごく曖昧になっている。そういう中で、この「九条の大罪」という作品は、「正義とは何だろう?」と問いかける話だと思うんですよね。そういう意味で、今の時代にすごく合っている作品だなって思っていて。だからこそ、ドラマでやる意味があると思います。ぜひたくさんの人たちに観てもらいたいなと思います。
那須田:今、根本さんがおっしゃったように、「正義って何だ?」っていうことが明確にわかれば、いろんな判断がつきやすいと思うんですけど、なかなかそうはいかないのが、今の世の中。そういう中で、自分たちは何を基準に、どうやって生きていくのか。そのヒントみたいなものが、この作品の中には、たくさんあるように思います。
土井:今、もはや「善」と「悪」という二元論では、語ることができない時代になっている。僕らだって、いつ被害者になるかわからないわけで。そのことを、改めて思い起こさせてくれるような作品だと思います。
――最後に、真鍋先生は、いかがですか?
真鍋:そうですね……たとえば、SNSの中で何か事件があって。それこそ最近だったら、いじめの動画が拡散され、個人情報がさらされたりしている。あの叩き方って、やはり異常だと思うんです。実はそこに違うストーリーがあるのかもしれないのに、あの動画だけで一方的に判断してしまっていいのかと。最初に言ったように、『九条の大罪』という作品はそうやって起こってしまった出来事の両面を描きたいと思って始めた作品なんです。それぞれの事情があって、それぞれの思いがあって、事件につながっているという。なので、そのことを心のどこかで感じてもらいつつ、それはそれとして、役者さんたちの魅力も相まって、本当におもしろいドラマになったと思っています。一度観始めたら、きっと最後まで一気に観てしまうドラマだから、寝不足にはくれぐれも気を付けて(笑)。たくさんの人に、楽しんでいただけたらと思います。
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「正義とは何か」が曖昧な現代に、なぜ今この物語を世に問うのか。制作陣の並々ならぬこだわりが共鳴し合い、作品への熱い想いが重なり合った、全10話の鑑賞をより深くする貴重な座談会となっている。
――真鍋先生は『闇金ウシジマくん』を長期連載したあと、2020年から『九条の大罪』の連載をスタートさせました。そもそもこの漫画は、どんなアイデアのもと生まれた作品だったのでしょうか。
真鍋:『闇金ウシジマくん』の連載中から、次は弁護士を題材にしたいと思って、いろいろと取材は進めていたんですよね。というのも、『闇金ウシジマくん』に出てくる人たちは、やりたい放題の犯罪者たちが多くて、その善悪は読む人が決めるみたいな感じだった。だったら次は、「法律」という基準の中で、結果を出す人の話にしたいなって。あと、思っていたのは、その人が犯した「罪」と、その人の「感情」って、やっぱり別物。「被害者」が思うことと「加害者」が思うことは、絶対に違うわけで。でも、事件としては、一緒なんですよね。その両側を描くことを次はやってみたいと思い、100人ぐらい、弁護士の方たちに取材をしたんです。
――『ウシジマくん』の連載がスタートした2004年と比べると、世の中的にも大きく変化したように思います。そのあたりのことも意識されていたのでしょうか。
真鍋:そうですね。あのまま『闇金ウシジマくん』の執筆を続けていたら、読む側が耐えられなくなってくるだろうなっていうのは、ちょっと感じていました。『闇金ウシジマくん』で描いたような「格差」の問題は、依然としてあるというか、よりひどくなっている。弱者は弱者のまま、強者の食いものにされるような状況も、相変わらず続いていて。だからこそ、何か「救い」の部分を入れていかないと、読むほうも耐えられないと思ったんです。あと、今の社会のように、犯罪の当事者になってしまう人が多くなると、もうみんなつらくて見ていられなくなるんじゃないかっていうのもあって……。
那須田:本人の意思にかかわらず、犯罪の当事者になってしまう人が増えているのは、実感としてありますよね。今の時代、自分たちが思っているよりも近いところに、その境界線があるんだろうなっていう。それは、『九条の大罪』を読みながら自分も思ったというか、もうどっちに転ぶかわからない世界じゃないですか。塀の上を歩いていて、ふとした拍子にあちら側に落ちてしまうかもしれない。そういう世界に生きていることを、『九条の大罪』は改めて感じさせてくれた。「もしそうなったら、どうしたらいいんだろう?」とか、そういうことを一緒になって考えられるような作品だなと。そういう意味で、今の時代にすごくフィットしている作品だと思いました。
――『ウシジマくん』の例もありますし、真鍋先生としては、実写化の話も早い段階から想定されていたのですか。
真鍋:そうですね。『闇金ウシジマくん』というひとつの成功例があったというか、映像化されると、まったく違う層の人たちが認知してくれることを実感しました。すごい影響力なんですよね。なので『九条の大罪』にしても、そういう広がり方をしてくれたらいいなと思っていました。
――真鍋先生の中で「実写化する際の条件」はありましたか。
真鍋:自分が描いているものの本質をちゃんと押さえてくれたら、細かいところはどう変えてもらってもいいぐらいに思っています。漫画とドラマは別物。映像作品は、役者やスタッフ、皆さんの思いを凝縮しながら作っていただいています。今回の実写化に関わってくれた皆さんは、過去作品で実績のある方たちばかり。「間違いない」というのは、最初から思っていました。
――実写化にあたって、真鍋先生のほうから「クスッと笑える要素があったらうれしい」という話があったとか。
真鍋:重ための話が続いたら、観ているほうが苦痛になるのではと。なので、クスッと笑
える部分があったほうがいいと思ったんですけど、根本先生の脚本を最初に読ませていただいて…会話の中に出てくる言葉尻のやり取りというか、漫才みたいなやり取りが、個人的にはすごくいいなって思いました。そういうのは、結構好きなので(笑)。
根本:ああ、良かったです(笑)。先生のほうから、そういうご希望があったということで、そのあたりはなるべく意識して、ちょっとした小ネタだったりを入れるようにしました。あと、「薬師前」さんまわりのシーンは、わりと柔らかいことができるというか、薬師前さんといるときは、「九条」も「烏丸」も、ちょっとやさしい感じになるじゃないですか。なので、その3人のシーンには、おもしろい感じをなるべく入れるようにしました。ユーモラスな部分は、僕がご指名いただいた理由だと思っていましたが、原作ものを担当するときは、原作の世界観を崩さないこと、それ以前に、その作品に対して完全にリスペクトすることが大事だと思っています。映像作品として、どう広げながら豊かにして、お返しするか。それが自分の使命だと思っているので、最大限に心掛けました。
――今回のドラマの内容は、基本的には原作を踏襲したものになっていますが、いくつか違うところがあって…いちばん大きな違いは、物語の「始まり方」ですよね。
那須田:「入り口」のところと言いますか、「烏丸」が「九条」のところにやって来るところから始めたいというのは、真鍋先生に最初にご相談させていただいたことのひとつでした。
土井:「烏丸」が「九条」のところに来るところから始まることによって、「烏丸」という人の目線で、この物語を描くことができるんですよね。そこは僕自身、すごく意識したところでもあります。実際、「烏丸」の見た「九条」が、視聴者の目線にもすごく近いと思ったし、「壬生」たちのようなアウトロー側の人間は、僕たちが実際に生活していて、できれば関わりたくない人たちじゃないですか。だから、その中に入って、その人たちの目線で描くのは、ちょっと違うと思ったというか、「烏丸」というフィルターを通すことによって、その人たちのこともより理解しやすくなるんじゃないかと思って。「烏丸」って、ある意味とてもニュートラル。「法律」という揺るぎないものをベースにして、ものを考えているから。そういう意味で、「烏丸」をナビゲーターにして、この物語を見ていこうというのは、いちばん最初のアイデアというか、「発明」だったと思います。
――そんな「烏丸」のキャラクターも、母親との関係であったり、原作からさらに掘り下げられているところがありますよね。
根本:そのあたりも、真鍋先生と何度もお話しさせていただいて。「烏丸」の家族の話は、「烏丸」の軸にもなっている部分なので、原作以上の頻度で「烏丸」の母親が登場するという。そのあたりも、皆さんでいろいろと相談しながら、作っていきました。
那須田:「烏丸」に限らず、この作品に登場するキャラクターって、どの人物も、掘り下げていくと、その背景には「家族」というものがある。それはイコール、その人がそれまでどう生きてきたかということにつながっていくんですよね。だから、もちろん「九条」にも「家族」の歴史があって……みんなそれぞれ、形は違うんですけど、その「家族」とか「背景」は、物語を深くしていく上で、自ずと描きたくなってくるところはあったと思います。
――そんな実写版「九条の大罪」を、真鍋先生はどんなふうに観られたのでしょうか。
真鍋:めちゃくちゃおもしろくて、すでに3回も観てしまいました(笑)。
――(笑)。具体的には、どのあたりが良かったのでしょう?
真鍋:映像って、情報処理能力がすごいんですよね。全10話の中に盛り込まれた情報量はものすごく多いのに、まったく説明的なところがなくスッと頭に入ってくる。もともと自分が考えた話なのに、ドラマを観ながら、「次は、どうなるんだろう?」って思ったり。
一同:(笑)。
真鍋:間合いも(よかった)。実際の人間が演じると、その息遣いだったり、目線で感情を語らせることができるんですよね。例えば、「九条」が落ち込んでいるときに、「烏丸」がそっとお酒を2つ頼むシーンがあって。そこで、「僕も付き合いますよ」とせりふで言うのではなく、ちょっとした行動で、その思いを示す。そういうシーンがいっぱい詰まっていました。それによって、2人の距離が、どんどん近づいてくのがわかる。このドラマを観た人は、この2人のやり取りに、多分メロメロになるんじゃないですか(笑)。
――(笑)。今、真鍋先生がおっしゃったように、柳楽さんと松村さんが生み出す空気感は、本作の肝であるように思いますが、そのあたりはどのように演出されていったのでしょうか。
土井:この作品は、通常の地上波ドラマよりも長い時間を掛けて撮っています。最初からそれを意識していたわけではないのですが、10話を撮っているぐらいで、「烏丸」の「九条」に対する愛情というか、「九条」を放っておけない感情が、画面からすごくにじみ出ているように思ったんです。最初は「この人、何考えているんだろう?」という興味だったはずなのに、いつのまにか「九条」のことを放っておけなくなっている(笑)。その一方で、「九条」は、「壬生」たちからも、引っ張られているわけじゃないですか。だから、10話ぐらいを撮っているときに、「あ、これは九条を真ん中にした、壬生と烏丸のせめぎ合いというか、三つ巴のブロマンスだったのかもしれない」って思って。
根本:そうですよね(笑)。ある種、ラブストーリーですよね。
――結局みんな、「九条」のことが気になっているという(笑)。
土井:そうなんですよ。それは、意図していたというよりも、いつの間にかそうなっていったところがありました。撮影を進めながら、「烏丸」の中で育ってきたものがあり、また「九条」の中でも「烏丸」に対する信頼感が芽生えてきて、いつの間にかそこに、共犯関係というか友情みたいなものが生まれているという。そこは実写版ならではのおもしろさというか、実際の人間が演じるからこその魅力だと思います。
――「九条」と「烏丸」のシーンだけではなく、本作はあまりカットを割らず、じっくり人間を撮っているような印象がありました。
土井:この作品は、「壬生」たちアウトロー、市井の人たちと、たくさんのキャラクターが出てきますが、真鍋先生の取材に基づいて描かれている人間たちなので、ひとりひとりがすごく掘りがいのあるキャラクターなんですよね。俳優たちは、原作や脚本上では描かれていない部分の人生を想像し、背負って、現場にきていると感じました。その熱量が高かったというのもあって、なるべく生っぽくその人間たちを見せたかったんです。「曽我部」とか「金本」とか「森田」とかって、そこまで感情移入できるキャラクターではないと思うんですけど、だんだんと、やっぱり自分たちと同じ世界に生きている人間なんだなという気がしてくる。「九条の大罪」の世界は、何か特別な世界じゃなくて、僕らの生活と本当に地続きにいる人たちの話で、もし、そっちに一歩行ってしまったら、会ってしまう人たちなんだなという感じが、すごくします。
那須田:最初に出てくる佐久本(宝)くんの「森田」のムカつく感じとか、すごく良かったですよね根本:黒崎煌代くんの「曽我部」も良かったですよね。
真鍋:彼はもう、「曽我部」にしか見えなかったです。
那須田:あとは、やっぱり「菅原」ですよね。監督のご推薦で、あの役は、後藤(剛範)さんがいいんじゃないかって……。
真鍋:そう、僕がいちばん驚いたのは、漫画の中でヤク中の人が叫んでいる「シャーラ!タンタンたん」っていうせりふを、実写の中で再現していたことで……。
土井:ああ(笑)。あのせりふは、最初答えが全然見つからなかったんですよね。俳優さんも含めて、とりあえずみんな、自分が思う「シャーラ!タンタンたん」をやってみましょうって言いながら、現場で最終的にああいう形になりました。原作に出てくる「ボクテン入れ墨の刑」も、いまいちわからなくて(笑)。そのあたりを読み解くところから、今回の撮影は始まったんですよね(笑)。
――なるほど(笑)。
真鍋:あと、「薬師前」さんの「なんざんしょ」っていうせりふがあるじゃないですか。あれは原作にもあるんですけど、それは『ブラックジャック』のピノコの「アッチョンブリケ」のように、漫画だから成立するせりふであって…文字だったらいいんだけど、あれを実写で言うのは、すごく難しかったんじゃないかと思って。ものすごく自然だったじゃないですか。どっかの方言みたいに、(池田)エライザさんが、すごく自然に言っていて。
那須田:そうそう(笑)。「田舎のおばあちゃんの口癖なんです」みたいな感じでやってみてくださいってお願いして……。
根本:本当にすごくナチュラルでしたよね。狙いにいっている感じが全然しないというか、普通に言っている感じがして。僕も、すごく良かったと思います。
――「九条の大罪」という作品が、今の時代に漫画で描かれ、それが実写化されることの意味や意義について、皆さんは、どのように考えていますか?
根本:今の時代、「正義」というものが、すごく曖昧になっている。そういう中で、この「九条の大罪」という作品は、「正義とは何だろう?」と問いかける話だと思うんですよね。そういう意味で、今の時代にすごく合っている作品だなって思っていて。だからこそ、ドラマでやる意味があると思います。ぜひたくさんの人たちに観てもらいたいなと思います。
那須田:今、根本さんがおっしゃったように、「正義って何だ?」っていうことが明確にわかれば、いろんな判断がつきやすいと思うんですけど、なかなかそうはいかないのが、今の世の中。そういう中で、自分たちは何を基準に、どうやって生きていくのか。そのヒントみたいなものが、この作品の中には、たくさんあるように思います。
土井:今、もはや「善」と「悪」という二元論では、語ることができない時代になっている。僕らだって、いつ被害者になるかわからないわけで。そのことを、改めて思い起こさせてくれるような作品だと思います。
――最後に、真鍋先生は、いかがですか?
真鍋:そうですね……たとえば、SNSの中で何か事件があって。それこそ最近だったら、いじめの動画が拡散され、個人情報がさらされたりしている。あの叩き方って、やはり異常だと思うんです。実はそこに違うストーリーがあるのかもしれないのに、あの動画だけで一方的に判断してしまっていいのかと。最初に言ったように、『九条の大罪』という作品はそうやって起こってしまった出来事の両面を描きたいと思って始めた作品なんです。それぞれの事情があって、それぞれの思いがあって、事件につながっているという。なので、そのことを心のどこかで感じてもらいつつ、それはそれとして、役者さんたちの魅力も相まって、本当におもしろいドラマになったと思っています。一度観始めたら、きっと最後まで一気に観てしまうドラマだから、寝不足にはくれぐれも気を付けて(笑)。たくさんの人に、楽しんでいただけたらと思います。
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