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2026-06-30 08:40
賛否両論を呼びつつ、いまだ需要が高い「退職代行」。大企業が“ホワイト”に移行する一方で、相変わらずブラック企業が存在することも一因かもしれない。理不尽なパワハラや無理な働き方に直面している人は、「誰かがなんとかしてくれないか」と感じるのも当然。そんななか、「ブラック企業やブラック上司、代わりに“壊”します」と謳う、退職代行ならぬ『壊職代行』という名のマンガが注目を集めている。作者のもちづきひいろ氏に話を聞いた。
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■驕れるパワハラ上司が一気に転落? “退職代行”モチーフにしたダークな復讐劇に反響
もちづきひいろ氏・田田田田氏による『壊職代行』は、コミックシーモアで配信中の青年マンガ。
不動産営業会社フマホームで働く鈴木は、パワハラや労働基準法違反が日常的に行われるブラック企業ぶりに耐え兼ね、退職を決意する。ところがその翌日からいじめ同然の扱いを受け身も心もボロボロに。絶望する鈴木の前に現れたのは、静香という女性。「壊職代行」業者を名乗る彼女は、「ブラック企業やブラック上司、代わりに『壊』します」と宣言する。
静香たち「壊職代行人」は、フマホームと鈴木に嫌がらせをした人々を “壊”すべく動き出す。驕っていたパワハラ上司たちが一気に突き落とされる痛快な内容に魅了される読者が続出。
読者レビューを見てみると、「スッキリする物語です。仕事が頑張れそう」「節々に社会情勢を盛り込んでいる」「現代社会の闇を切ってもらいたい」と社会のダークな部分に切り込む本作への反響が寄せられている。
■「パパ活」「頂き女子」「スメハラ」まで…社会問題で読者の共感呼ぶ
――読者の中には、自身がブラック企業に勤めている方もいらっしゃいますが、寄せられるコメントなどについて、どのように感じられていますか?
「実際にブラック企業に勤めている人が本作を読んだとて、その人の環境は変わらないかもしれません。それでも、読んでいるその時間は、辛い現実から離れてスカッとした気分を味わってもらえる。そんな、『読む清涼剤』、『読む晩酌』のような作品を目指しています。なので『スカッとする』『痛快』というコメントがやはり一番うれしくあります。『あなた(読者)の境遇を根本から解決することはできないけど、面白い作品を届けるので、その瞬間だけ忘れて楽しんでほしい』という風にいつも思って作っています」
――退職代行をモチーフに扱おうとしたきっかけはなんですか?
「本作を企画したのが、2023年の半ば。3年ほど前になります。ちょうどその頃、“退職代行を題材としたとある漫画”を読んで、退職代行の存在を知りました。退職代行のサービス自体は2017年から存在しているようですが、当時はまだそこまで話題になっている印象はありませんでした。この、『煩わしいことや、自分には荷が重いことを代行してくれる存在』を、そのまま復讐の代行業というフォーマットにできるのではないかと思ったのが始まりです。また、復讐代行では、そのジャンルの第一人者のような作品がすでにあったこともあり、対ブラック企業に特化しようと考えました」
――退職代行を題材とした漫画のなかでも、このような斬新な設定に至ったのはなぜでしょうか?
「先に挙げた “退職代行を題材とした漫画” では、『弁護士が正規の手続きで退職代行を行い依頼人を救う』という内容でしたが、同じようなことを後追いでやってもしょうがないし、そもそも私にはちゃんとした法律の知識がありません。であれば、完全な架空の組織にして、ムカつく上司や会社を壊滅させるというフィクション要素強めのエンタメに振り切った内容にしようと思った次第です」
――「壊職代行」と「退職代行」で韻を踏んでいるのもポイントでしょうか。
「自分は、作品の内容やタイトルなどをダジャレや語呂合わせで考える傾向があって、思いついたとき、『これだ!』と思いました(笑)。また、直接的な暴力表現を使わずに読者に爽快感を与えるためには、現実では難しいスケールの大きい復讐にしなければと考え、舞台を用意してハメる劇場型の手法にし、そのために資金や人的リソース、各種パイプなどが必要になるため巨大な裏の組織という輪郭ができあがっていきました」
――本作では、「退職代行」だけでなく、「パパ活」や「頂き女子」、「スメハラ」など、現代社会で話題になっている事象が登場するのも印象的です。
「『社会問題を取り上げよう』としたのではなく、より多くの読者に楽しんでいただく、共感していただくという観点で考えたときに、結果的に、多くの人が関心を抱いている社会問題を題材にするのがマッチしていたということになります。人間の感情の中で”怒り“が人を動かす原動力に直結するため、読者や世間の”怒り”の向き先として適していたということです」
■社会的な歯止めが必要…パワハラ、ブラック企業はどこから生まれる?
――フィクションとリアルのバランスを考えながら描かれているということですが、先生ご自身はブラック企業をどのように捉えていますか?
「個人的には、まずブラック企業は大別して2種類あると思っていて、ひとつは、洗脳や人格否定のような振るまいをしてくるパターンで、これを私は『悪意型ブラック』と分類しました。これは、会社のトップや各セクションの責任者の資質など人的要因が大きいのではないかと感じています。『壊職代行』にて扱うターゲットもこちらを意識しています」
――ブラック企業と聞くとそういったものをイメージします。
「もうひとつ、『低賃金や多忙』などの要因で “ブラック” と称されるケース。これを私は『構造圧迫型ブラック』と分類しました。(※ピンハネや搾取などの悪意によってそうなっている悪意型との混同もあるので一概には言えませんが…)。その会社単体の環境がよくないことももちろんあると思いますが、元請けのシワ寄せやお客様の対応の余波などの自分たちではどうにもならない要因もあるのではないかと思います。だからと言ってそれを容認するわけではなく、被害者を軽視するわけでもありません。理想的な環境に正す努力はするべきだと思うのですが、ただ一企業の努力だけでなく業界や関係各所全体が同時に変わらないと限界もあると考えます」
――確かに根深い問題です。
「ブラック企業を根絶するとしたら一企業や関係企業だけでなく、社会全体が『立場の異なる相手がそこにいる』ことを意識して変わる必要があるのではないかと。本作では、基本的に『一方で被害者の側面も持つ構造的ブラック企業』は取り上げず、あくまでキャラクターがゲスなために生まれる『悪意型ブラック企業』を壊していく方針です」
――パワハラについてはいかがでしょうか?
「こちらも擁護しているわけではないという前置きをしたうえで、世の中って『力があるものがそれを行使したら通ってしまう(ことが多い)』という現実があるんだと思います。パワハラって文字通りパワー、この場合は地位や権力を行使してハラスメント(嫌がらせ)をするってことですが、そのハラスメントについても個々の考え方の差がありますよね(無自覚、善意、価値観の新旧、指導との混同など)。私は、人間とは意識しないとパワハラを起こしやすい存在なのではないかと思います。だからこそ、ルール整備や罰則、監視体制といった社会的な歯止めが必要なのだと思います」
――本作はそういった社会的なテーマを扱っていますが、世の中の関心とも合致していると感じます。
「配信が開始できたのは2025年の2月でした。ちょうどその年の4月に『新入社員が退職代行を使って入社一週間で辞めた』といった話題がXでたくさん上がっており、退職代行サービスの世間的な注目度が高まっていったと記憶しております。4~5月あたりには、おかげさまで『壊職代行』の売上がかなり伸びたのですが、時流とマッチしたというのが大きいと思います」
■「理不尽を壊す勇気与えたい」ブラック企業に立ち向かう人へ作品でエール
――人間の醜い部分を描ききっている本作ですが、壊職でそれらを成敗するシーンではどのようなことを意識していますか?
「構造的な部分では、『自分のしてきた行為が跳ね返ってくる』というのを意識しています。例えば、女という性を悪用している三木は男女関係の罠により地獄を見ました。ただ単に嫌な目、酷い目に遭うのではなく、本人に関連した報いを受けるというところが爽快感に繋がっているのだと思います」
――成敗されるシーンで読者が納得感やリアリティを感じるかも重要なのでしょうか。
「表情や顔芸なんかは、実際に自分がそういう表情をして、ベースにリアルを感じられるようにしています。完全な嘘の描写をしてしまうと、読者が冷めてしまうことに繋がるので…復讐内容も実際には絵空事ではあるのですが、レビューで『実際にはありえないんだろうけど、どこかできそうな雰囲気があるところが好き』と言っていただけることがあり、それがとてもうれしいです」
――「壊職」が終結した際の「壊職完了」の決め台詞は印象的です。このシーンはどのように考えられましたか?
「『壊職』というワードを考えたときに手ごたえはありましたが、それでもやっぱり造語であり、一般への馴染みはない言葉です。そのため、作中でも『壊す』や『壊職』を頻繁に使って読者に定着させたいという狙いがありました。それと、やはり定番のキメ台詞で見得を切るのは大事ですので、その効果と、ワードの定着の相乗効果を狙った結果です。絵や演出的には、とにかくかっこよく見せて、復讐が執行されて読者がスカッとした勢いをそのまま昇華するような締めにしたいという意図があります。また、これまで何度も発していますが、同じようにならないように構図のバリエーションなどに気を使っています」
――ブラック企業に勤める人たちに本作で何を感じてほしいですか?
「まずは、マネしちゃダメですよということ(笑)。あと、現実には残念ながら『壊職代行』のような頼もしい存在こそいませんが、しんどい境遇や思いから救ってくれる存在は、この現実にも絶対にいるということを感じてほしいですね。本作を読んで刹那の癒しを得て、また厳しい現実に立ち向かう…というのも、もちろん立派な選択です。でも、立ち向かいたくなったとき、または離れたくなったとき、勇気を出して目の前の理不尽を『壊』せば、きっと救いの手があるはず。そんな勇気を感じさせるような作品にできればと思っています」
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静香たち「壊職代行人」は、フマホームと鈴木に嫌がらせをした人々を “壊”すべく動き出す。驕っていたパワハラ上司たちが一気に突き落とされる痛快な内容に魅了される読者が続出。
読者レビューを見てみると、「スッキリする物語です。仕事が頑張れそう」「節々に社会情勢を盛り込んでいる」「現代社会の闇を切ってもらいたい」と社会のダークな部分に切り込む本作への反響が寄せられている。
■「パパ活」「頂き女子」「スメハラ」まで…社会問題で読者の共感呼ぶ
――読者の中には、自身がブラック企業に勤めている方もいらっしゃいますが、寄せられるコメントなどについて、どのように感じられていますか?
「実際にブラック企業に勤めている人が本作を読んだとて、その人の環境は変わらないかもしれません。それでも、読んでいるその時間は、辛い現実から離れてスカッとした気分を味わってもらえる。そんな、『読む清涼剤』、『読む晩酌』のような作品を目指しています。なので『スカッとする』『痛快』というコメントがやはり一番うれしくあります。『あなた(読者)の境遇を根本から解決することはできないけど、面白い作品を届けるので、その瞬間だけ忘れて楽しんでほしい』という風にいつも思って作っています」
――退職代行をモチーフに扱おうとしたきっかけはなんですか?
「本作を企画したのが、2023年の半ば。3年ほど前になります。ちょうどその頃、“退職代行を題材としたとある漫画”を読んで、退職代行の存在を知りました。退職代行のサービス自体は2017年から存在しているようですが、当時はまだそこまで話題になっている印象はありませんでした。この、『煩わしいことや、自分には荷が重いことを代行してくれる存在』を、そのまま復讐の代行業というフォーマットにできるのではないかと思ったのが始まりです。また、復讐代行では、そのジャンルの第一人者のような作品がすでにあったこともあり、対ブラック企業に特化しようと考えました」
――退職代行を題材とした漫画のなかでも、このような斬新な設定に至ったのはなぜでしょうか?
「先に挙げた “退職代行を題材とした漫画” では、『弁護士が正規の手続きで退職代行を行い依頼人を救う』という内容でしたが、同じようなことを後追いでやってもしょうがないし、そもそも私にはちゃんとした法律の知識がありません。であれば、完全な架空の組織にして、ムカつく上司や会社を壊滅させるというフィクション要素強めのエンタメに振り切った内容にしようと思った次第です」
――「壊職代行」と「退職代行」で韻を踏んでいるのもポイントでしょうか。
「自分は、作品の内容やタイトルなどをダジャレや語呂合わせで考える傾向があって、思いついたとき、『これだ!』と思いました(笑)。また、直接的な暴力表現を使わずに読者に爽快感を与えるためには、現実では難しいスケールの大きい復讐にしなければと考え、舞台を用意してハメる劇場型の手法にし、そのために資金や人的リソース、各種パイプなどが必要になるため巨大な裏の組織という輪郭ができあがっていきました」
――本作では、「退職代行」だけでなく、「パパ活」や「頂き女子」、「スメハラ」など、現代社会で話題になっている事象が登場するのも印象的です。
「『社会問題を取り上げよう』としたのではなく、より多くの読者に楽しんでいただく、共感していただくという観点で考えたときに、結果的に、多くの人が関心を抱いている社会問題を題材にするのがマッチしていたということになります。人間の感情の中で”怒り“が人を動かす原動力に直結するため、読者や世間の”怒り”の向き先として適していたということです」
■社会的な歯止めが必要…パワハラ、ブラック企業はどこから生まれる?
――フィクションとリアルのバランスを考えながら描かれているということですが、先生ご自身はブラック企業をどのように捉えていますか?
「個人的には、まずブラック企業は大別して2種類あると思っていて、ひとつは、洗脳や人格否定のような振るまいをしてくるパターンで、これを私は『悪意型ブラック』と分類しました。これは、会社のトップや各セクションの責任者の資質など人的要因が大きいのではないかと感じています。『壊職代行』にて扱うターゲットもこちらを意識しています」
――ブラック企業と聞くとそういったものをイメージします。
「もうひとつ、『低賃金や多忙』などの要因で “ブラック” と称されるケース。これを私は『構造圧迫型ブラック』と分類しました。(※ピンハネや搾取などの悪意によってそうなっている悪意型との混同もあるので一概には言えませんが…)。その会社単体の環境がよくないことももちろんあると思いますが、元請けのシワ寄せやお客様の対応の余波などの自分たちではどうにもならない要因もあるのではないかと思います。だからと言ってそれを容認するわけではなく、被害者を軽視するわけでもありません。理想的な環境に正す努力はするべきだと思うのですが、ただ一企業の努力だけでなく業界や関係各所全体が同時に変わらないと限界もあると考えます」
――確かに根深い問題です。
「ブラック企業を根絶するとしたら一企業や関係企業だけでなく、社会全体が『立場の異なる相手がそこにいる』ことを意識して変わる必要があるのではないかと。本作では、基本的に『一方で被害者の側面も持つ構造的ブラック企業』は取り上げず、あくまでキャラクターがゲスなために生まれる『悪意型ブラック企業』を壊していく方針です」
――パワハラについてはいかがでしょうか?
「こちらも擁護しているわけではないという前置きをしたうえで、世の中って『力があるものがそれを行使したら通ってしまう(ことが多い)』という現実があるんだと思います。パワハラって文字通りパワー、この場合は地位や権力を行使してハラスメント(嫌がらせ)をするってことですが、そのハラスメントについても個々の考え方の差がありますよね(無自覚、善意、価値観の新旧、指導との混同など)。私は、人間とは意識しないとパワハラを起こしやすい存在なのではないかと思います。だからこそ、ルール整備や罰則、監視体制といった社会的な歯止めが必要なのだと思います」
――本作はそういった社会的なテーマを扱っていますが、世の中の関心とも合致していると感じます。
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――成敗されるシーンで読者が納得感やリアリティを感じるかも重要なのでしょうか。
「表情や顔芸なんかは、実際に自分がそういう表情をして、ベースにリアルを感じられるようにしています。完全な嘘の描写をしてしまうと、読者が冷めてしまうことに繋がるので…復讐内容も実際には絵空事ではあるのですが、レビューで『実際にはありえないんだろうけど、どこかできそうな雰囲気があるところが好き』と言っていただけることがあり、それがとてもうれしいです」
――「壊職」が終結した際の「壊職完了」の決め台詞は印象的です。このシーンはどのように考えられましたか?
「『壊職』というワードを考えたときに手ごたえはありましたが、それでもやっぱり造語であり、一般への馴染みはない言葉です。そのため、作中でも『壊す』や『壊職』を頻繁に使って読者に定着させたいという狙いがありました。それと、やはり定番のキメ台詞で見得を切るのは大事ですので、その効果と、ワードの定着の相乗効果を狙った結果です。絵や演出的には、とにかくかっこよく見せて、復讐が執行されて読者がスカッとした勢いをそのまま昇華するような締めにしたいという意図があります。また、これまで何度も発していますが、同じようにならないように構図のバリエーションなどに気を使っています」
――ブラック企業に勤める人たちに本作で何を感じてほしいですか?
「まずは、マネしちゃダメですよということ(笑)。あと、現実には残念ながら『壊職代行』のような頼もしい存在こそいませんが、しんどい境遇や思いから救ってくれる存在は、この現実にも絶対にいるということを感じてほしいですね。本作を読んで刹那の癒しを得て、また厳しい現実に立ち向かう…というのも、もちろん立派な選択です。でも、立ち向かいたくなったとき、または離れたくなったとき、勇気を出して目の前の理不尽を『壊』せば、きっと救いの手があるはず。そんな勇気を感じさせるような作品にできればと思っています」
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