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家事、育児、仕事…限界寸前の日常を描く『ワンオペレーション』 ローズ・バーンが“魂の叫び”を体現

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2026-09-21 20:01
家事、育児、仕事…限界寸前の日常を描く『ワンオペレーション』 ローズ・バーンが“魂の叫び”を体現
映画『ワンオペレーション』(公開中) (C) 2025 Legs Film Rights LLC. All Rights Reserved.
 家事育児仕事を一人で抱え、心身ともに追い詰められていく女性を描いたA24製作の映画『ワンオペレーション』が、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで公開されている。スリラー、心理ドラマ、ダークコメディーを横断しながら、“母親”という役割の陰に隠れがちな、ひとりの人間の感情と限界に迫った作品だ。

【動画】予告編やローズ・バーン&監督のインタビュー映像

 主人公は、家事と育児、セラピストの仕事に追われるリンダ。原因不明の病を抱える幼い娘の世話に加え、患者への対応、娘の担当医からの叱責、長期出張中の夫からの電話と、休まる暇のない日々を送っている。

 そんな中、自宅アパートの天井が突然崩落。リンダは娘を連れ、海辺の格安モーテルへ移り住むことになる。誰にも頼れない孤独の中で限界を迎えた彼女は、次々と予期せぬ事態にのみ込まれていく。

 監督と脚本を務めたのは、メアリー・ブロンスタイン。自身が重い病を抱えた娘とモーテルで暮らした経験をもとに脚本を執筆した。家事や育児を一人で担う“ワンオペ”の苦境を題材にしながらも、ブロンスタイン監督は「これは家族の物語ではありません。ひとりの人間の物語です」と強調する。

 リンダを演じるのは、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』や「X-MEN」シリーズなどで知られるローズ・バーン。責任と重圧に押し潰されそうになりながら、どうにか日常をつなぎ止めようとする女性を演じ、「第75回ベルリン国際映画祭」銀熊賞(主演俳優賞)、「第83回ゴールデン・グローブ賞」女優賞(コメディー/ミュージカル部門)を受賞。「第98回米アカデミー賞」主演女優賞にもノミネートされた。

 ローズは「精神的に追い詰められた女性を描く映画は、たくさんありました」とした上で、「今回、それが女性監督の視点で描かれたことに、とてもワクワクしました」と振り返る。

 とりわけ心を引かれたのは、リンダが単に“母親”として描かれていないことだったという。「母親を子どもの付属物ではなく、ひとりの人間として描く映画は初めてでした」と明かし、「こんな役に挑めるなんて、願ってもない機会でした。彼女に強く共感しました」と語っている。

 ブロンスタイン監督も、ローズを「圧倒的な俳優」と絶賛。「この役はどうしても彼女に演じてほしかった。彼女は本当に稀有な俳優で、完璧なコメディーセンスを備えています」と信頼を寄せる。

 本作では、リンダが追い詰められていく過程を緊張感たっぷりに映し出す一方、その極限状態に思わぬ笑いが差し込まれる。ローズは「泣いた直後に笑わせる――その逆も、成立させるのは難しい」と、恐怖とユーモアを行き来する演技の難しさを振り返った。

 ブロンスタイン監督は、その緊張と緩和について「ひとつ問題が起きると、また次の問題が起きる。そこで緊張がふっと解け、観客もようやく笑える」と説明。「大切なのは、観客を信じること。一緒にこの体験へ飛び込んでもらうんです」と演出に込めた考えを語っている。

 リンダをさらに追い詰めるのが、スマートフォンへ繰り返しかかってくる夫チャールズからの電話だ。客船の船長を務めるチャールズは、海の上から妻を心配し、電話越しにあれこれと口を出す。しかし、リンダが今何を求めているのかまでは理解できず、良かれと思って発する言葉が、かえって彼女をいら立たせてしまう。

 チャールズを演じるのは、『トゥルー・ロマンス』『ヘザース/ベロニカの熱い日々』、ドラマ『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』などで知られるクリスチャン・スレイター。大半の場面に声で参加し、離れた場所にいる夫の存在を印象づけている。

 ブロンスタイン監督はチャールズについて、「愛する人が壊れかけているのに、そばにいてあげられず、無力感を抱く。私たちは皆、あの感覚を知っていると思う」と説明する。その一方で、「この男が何を言っても、必ず相手を不快にさせてしまうという感覚もある」と、その人物像を語った。

 さらに、「リンダのように不安にもがいている人は、慰められたいわけではない。『大丈夫だよ』なんて言ってほしくもない」と指摘。「問題の外側にいる人間には――チャールズがそうであるように――どうすれば適切に助けられるのかなんて、分かるはずがない」と話している。

 監督によると、本作を観た男性の多くがチャールズに感情移入したという。妻を心配しているにもかかわらず、何を言っても裏目に出てしまう。単なる“口うるさい夫”ではなく、支えたい相手との距離を測りかねる人間として描かれている。

 「観客の心に、何かが響くと信じています」と語るローズ。日々の責任に追われ、「もう限界」と感じながらも立ち止まれない。そんな経験のある人にとって本作は、自分でも言葉にできなかった感情を、恐怖と笑いの中に見つける一本になりそうだ。


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