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2026-10-13 09:40
作家の原田マハと撮影監督の北川喜雄が11日、韓国で開催中の「第31回釜山国際映画祭」(10月6日~15日)で、映画『無用の人』(2027年1月29日公開)のアジアプレミア上映後のQ&Aに登壇した。初めて長編映画の監督・脚本も務めた原田は本作を「階段を降りていく映画」と表現し、成功を目指して上り続けることだけに価値を置く風潮への思いを語った。
【動画】映画『無用の人』予告編
本作は、原田の短編集『あなたは、誰かの大切な人』(講談社文庫)に収録された一編を、蒼井優主演で映画化。スペインの「第74回サン・セバスチャン国際映画祭」では国際批評家連盟賞とアテネオ・ギプスコアノ賞を受賞し、釜山ではアジア映画の窓部門に出品された。
会場となったロッテシネマ・センタムシティの上映チケットは完売。若い観客も多く訪れ、エンドクレジットが終わって場内が明るくなると拍手が起こり、登壇した二人を迎えた。
原田は、劇中に李朝の茶器や韓国人作家のアート作品が登場するほか、聡美の母・柊子が韓流アイドルに夢中になっていることなど、韓国にまつわるモチーフに言及。「皆さんがどのようなリアクションをされるかずっとドキドキしてました」と明かし、「映画というギフトを韓国の皆さんにプレゼントするような気持ちでこの作品を持ってきました。見ていただき本当にうれしく思います」とあいさつした。
続けて北川も「このような国際的な舞台で、たくさんの映画ファンの皆様と一緒に作品を見ることができ、大変うれしく思っています」と感謝の言葉を述べた。
韓国でも多くの作品が翻訳・発売されるなど、作家として活動を重ねてきた原田が、なぜ映画に挑戦したのかという質問も。原田は、小説を書く時から、頭の中で追いかけてきた映像を文章にしている感覚があったと説明。「その映像を、映像として表現したいという思いをずいぶん早い段階から抱いていたので、映画への挑戦は私にとって自然のなりゆきでした」と語った。
脚本化はスムーズに進んだ一方、映像制作の技術を持っていなかったことから、撮影監督の重要性を実感したという。「憧れの濱口竜介監督作品の撮影監督をされている北川さんを本作にお迎えできると決まったとき、本作の映像の方向性が初めて決まった」と振り返った。
北川は撮影前、原田と茶会に参加したり、マーク・ロスコの絵画を一緒に鑑賞したりしながら、話し合いを重ねたと説明。劇中に登場する詩集『あえかなる光』にも触れ、「この言葉に引っ張られるように映像の光量や露出を調整していきました」と、映像作りの手がかりを明かした。
音の演出について、原田は「日常の中に茶の湯の世界を表現したかった」と説明した。茶の湯では静寂の中に聞こえるかすかな音が大切にされ、釜の湯がたぎる音を「松風」と呼ぶという。本作も、湯が沸く音や炭がはぜる音で始まり、茶会の始まりをイメージしていると語った。
北川も「撮影は目で見えることを観察する作業だと思われがちだが、耳で聞くことも大切」と応じた。「カメラを向けているフレーム外の世界に耳を傾けるのが大切な仕事です。映像でどうやって松風を表現すればいいのか考え、耳を澄まさないと聞こえない状態を映像で作ることにチャレンジしました」と語った。
Q&Aの最後に、原田は「上り詰めて成功することだけに価値があるというような風潮が強い世の中ですが、この映画はそれに対するアンチテーゼなのです」と作品への思いを語った。
「階段というのは上るだけでなく降りることもでき、降りたところに窓があるかもしれない。皆さんの目の前に窓があったらぜひ開けてほしいのです。本作を作ることによって、まず私が窓を開けました」と、自身の映画への挑戦を重ねながら観客に呼びかけた。
上映後には、観客と大画面で作品を観たことで、日本と韓国の共通点や、アジアの国々から受け取っているアイデアの多さを改めて感じたとコメント。「温かい拍手もいただいてとても感動的でした!」と喜びを伝えた。
『無用の人』は、「第27回東京フィルメックス」(11月20日~29日)のオープニング作品として上映されることが決定している。
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本作は、原田の短編集『あなたは、誰かの大切な人』(講談社文庫)に収録された一編を、蒼井優主演で映画化。スペインの「第74回サン・セバスチャン国際映画祭」では国際批評家連盟賞とアテネオ・ギプスコアノ賞を受賞し、釜山ではアジア映画の窓部門に出品された。
会場となったロッテシネマ・センタムシティの上映チケットは完売。若い観客も多く訪れ、エンドクレジットが終わって場内が明るくなると拍手が起こり、登壇した二人を迎えた。
原田は、劇中に李朝の茶器や韓国人作家のアート作品が登場するほか、聡美の母・柊子が韓流アイドルに夢中になっていることなど、韓国にまつわるモチーフに言及。「皆さんがどのようなリアクションをされるかずっとドキドキしてました」と明かし、「映画というギフトを韓国の皆さんにプレゼントするような気持ちでこの作品を持ってきました。見ていただき本当にうれしく思います」とあいさつした。
続けて北川も「このような国際的な舞台で、たくさんの映画ファンの皆様と一緒に作品を見ることができ、大変うれしく思っています」と感謝の言葉を述べた。
韓国でも多くの作品が翻訳・発売されるなど、作家として活動を重ねてきた原田が、なぜ映画に挑戦したのかという質問も。原田は、小説を書く時から、頭の中で追いかけてきた映像を文章にしている感覚があったと説明。「その映像を、映像として表現したいという思いをずいぶん早い段階から抱いていたので、映画への挑戦は私にとって自然のなりゆきでした」と語った。
脚本化はスムーズに進んだ一方、映像制作の技術を持っていなかったことから、撮影監督の重要性を実感したという。「憧れの濱口竜介監督作品の撮影監督をされている北川さんを本作にお迎えできると決まったとき、本作の映像の方向性が初めて決まった」と振り返った。
北川は撮影前、原田と茶会に参加したり、マーク・ロスコの絵画を一緒に鑑賞したりしながら、話し合いを重ねたと説明。劇中に登場する詩集『あえかなる光』にも触れ、「この言葉に引っ張られるように映像の光量や露出を調整していきました」と、映像作りの手がかりを明かした。
音の演出について、原田は「日常の中に茶の湯の世界を表現したかった」と説明した。茶の湯では静寂の中に聞こえるかすかな音が大切にされ、釜の湯がたぎる音を「松風」と呼ぶという。本作も、湯が沸く音や炭がはぜる音で始まり、茶会の始まりをイメージしていると語った。
北川も「撮影は目で見えることを観察する作業だと思われがちだが、耳で聞くことも大切」と応じた。「カメラを向けているフレーム外の世界に耳を傾けるのが大切な仕事です。映像でどうやって松風を表現すればいいのか考え、耳を澄まさないと聞こえない状態を映像で作ることにチャレンジしました」と語った。
Q&Aの最後に、原田は「上り詰めて成功することだけに価値があるというような風潮が強い世の中ですが、この映画はそれに対するアンチテーゼなのです」と作品への思いを語った。
「階段というのは上るだけでなく降りることもでき、降りたところに窓があるかもしれない。皆さんの目の前に窓があったらぜひ開けてほしいのです。本作を作ることによって、まず私が窓を開けました」と、自身の映画への挑戦を重ねながら観客に呼びかけた。
上映後には、観客と大画面で作品を観たことで、日本と韓国の共通点や、アジアの国々から受け取っているアイデアの多さを改めて感じたとコメント。「温かい拍手もいただいてとても感動的でした!」と喜びを伝えた。
『無用の人』は、「第27回東京フィルメックス」(11月20日~29日)のオープニング作品として上映されることが決定している。
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