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24日でロシアのウクライナ侵攻から丸3年が経過した。母国・ウクライナに平和と希望を…女子走高跳のパリオリンピック™金メダリストで世界記録保持者のヤロスラワ・マフチク(23)の想いに迫った。
【写真を見る】「私は競技場から国を守る」走高跳女王マフチク 侵攻から3年“戦争は終わっていない”ウクライナを代表して声を上げ続ける
他の国の人達は戦争を忘れかけています
去年8月、ウクライナではゼレンスキー大統領が「皆さんがウクライナの強さを世界に示して下さった事に感謝します」とパリ五輪のメダリストを称え、表彰した。そこには、走高跳の女王・マフチクの姿もあった。
21年東京オリンピックで銅メダルを獲得以降の活躍は目覚ましく、23年世界陸上ブダペストで金、24年には“2m10”と37年ぶりに世界記録を塗り替えた。そして、パリ五輪では、悲願の金メダルを獲得し、世界のトップへと駆け上がった。この数年はウクライナがロシアの軍事侵攻で、深刻な被害を受けた時期と重なる中、自らの活躍が世界へのメッセージになると信じて、誰よりも高く跳び続けた。
マフチク:
私は国際大会で国を代表して戦い続けるし、戦争が終わっていない事を世界に思い出して欲しい。他の国の人達は、戦争を忘れかけています。私達の戦いはまだ続いています。
故郷・ドニプロ市に帰る
去年11月、オフシーズンを迎えた彼女は故郷に帰った。首都キーウから390km離れたウクライナ第4の都市、ドニプロ市。街には、ミサイルで破壊されたままのマンションや無人ドローンの銃撃を受けた看板が見られた。傷のない建物もあり、セーフプレースと書かれた鉄筋コンクリート製のシェルターである。バス停など、人が多く集まる場所に作られた現代の防空壕となっている。戦火の母国に帰ることへの恐怖はないのか。彼女の答えに迷いはなかった。
マフチク:
ウクライナは私の故郷であり、家族や大切な友人がいる場所です。本当はもっと家で過ごしたいけど、残念ながら以前のようには帰って来られません。私は砲弾も恐れていません。ここは私の故郷なのですから。本当はウクライナでの生活を続けたいです。
明け方に砲弾の音で目が覚めました
3年前のあの日、当たり前の日常が奪われた。22年2月24日、ロシアによる特別軍事作戦が開始された。あの日の記憶を、あの時の心境を彼女は、こう明かしている。
マフチク:
明け方に砲弾の音で目が覚めました。日常が続けられるのか、将来はどうなるのか、最悪の気持ちでした。
私は競技場から国を守るためにここにいます
国外での避難生活。明日も見えない日々。当初は競技を続けられないと思っていたが…
マフチク:
両親から“大会に行きなさい”と言われました。その時、思ったのです。大会でウクライナの事を発信する事で大きな貢献が出来ると…
彼女は“ウクライナの今を、伝えていこう”“スタジアムから母国の今を伝えよう”と、決意し、軍事侵攻が始まって3週間後の国際大会、22年3月世界室内陸上に出場した。
マフチク:
私もコーチも大会に集中するのは難しい状況でした。ニュースや仲間と連絡を取り合う中で得る情報は良くないものばかりでしたから…
心を痛めながら、彼女は誰よりも高く羽ばたいた。堂々の優勝。だからこそ、届けられる言葉があった。
マフチク:
この金メダルはウクライナの人達のものです。私は競技場から国を守るためにここにいます。ウクライナは強い国で絶対に諦めないし、私達は独立と自由の精神を守り抜きます。
スポーツ等でしか国を明るくする事が出来ませんから
その覚悟が、マフチクを強くした。ウクライナを背負って勝利を世界に、光を母国に。パリ五輪では自身初の五輪金メダルを獲得した。
マフチク:
特別な瞬間だったと思います。私にとって初めての金メダルでしたし、母国への金メダルです。金メダル獲得に多くの人が涙したと帰った時に聞きました。私はウクライナのために競技をしています。彼らに幸せな時間を届けたいです。残念ながらスポーツ等でしか、国を明るくする事が出来ませんから。
競技以外で“出来る事は全てやる”
国のため、競技以外でも力を尽くす。パリ五輪で着用したアイテムはオークションに出し、落札額の全額寄付や、大会の賞金など、これまでに数億円を寄付し、兵士のメンタルケア・車両購入・動物保護等に活用されている。さらに兵士の慰問や慈善イベントに参加した。出来る事は全てやる。
この日は、ドニプロ市の学校を訪問した。子供達は「学校では4階から地下まで走ってよくシェルターに避難しています。爆弾が仕掛けられたと言われた事もありました」「いつも空襲警報が鳴っていて、よく眠れません。爆撃が続いていて胸が苦しいです」と戦争の恐怖と闘いながら暮らす日常であった。そんな彼らにとって、マフチクは、未来への希望を感じさせてくれる存在だ。子供達からの質問に丁寧に彼女も答えた。
Q.あなたにとってスポーツはどんなものなのか?
マフチク:
たくさんのチャンスを与えてくれるだけでなく、私のメンタルも鍛えてくれています。子供の頃は練習を休んだ事もありました。でも11歳までね。そこからは一度もないわ。
“戦争は終わっていない”ウクライナを代表して声を上げ続けます
憧れのヒロインと触れ合い、ひとときの笑顔を取り戻した子供たち。その翌日だった。そのドニプロ市に、新型中距離弾道ミサイルが落とされた。戦争は終わっていない。だから彼女は、誰よりも高く跳び続ける。
マフチク:
ウクライナの事を発信し続ける事が私の使命です。この残酷な戦いが3年も続いている事を世界中の人達が忘れないようにウクライナを代表して声を上げ続けます。
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