
超人たちが34年ぶりに東京へ!今年9月に開幕する「東京2025世界陸上」を前に、これまで歴史に名を刻んだ伝説のアスリートたちを紹介する。
【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手
女子100mと200mの日本記録保持者・福島千里は2022年1月の現役引退まで、長きに渡り日本女子短距離界を牽引したエースだ。オリンピック™には2008年北京大会から3大会連続で出場。世界陸上は2009年ベルリン大会から2015年北京大会まで4大会連続で出場し、2度目の出場となったテグ大会では、日本女子初となる100m、200mでの準決勝出場を成し遂げている。彼女の魅力は柔らかな笑顔とふんわりした話し方から生まれるギャップ。圧倒的な成績と親しみやすい人柄で日本女子短距離界を支え続けた唯一無二の存在である福島の、79年ぶりの快挙、その夢舞台を振り返る。
世界の舞台での挑戦と歴史的快挙
テグ大会の100m予選は一発勝負で準決勝進出が決まるシビアな戦いだった。福島は追い風参考ながら11秒16という好タイムをこのシーズンに出しており、期待が集まった。福島は4組の第3レーンからのスタート。自己ベスト10秒84を持つトリニダード・トバコのケリー=アン・バプティステ、ライバルのオノーラ(イギリス)やサントス(ブラジル)といった強豪が並んだ。
福島は軽く両手で腰と両足を叩いて気合いを入れた。
この組で3着に入ると準決勝進出が決まる。号砲が鳴ると、福島は抜群の反応で飛び出し、序盤はトップを快走。後半バプティステに抜かれるものの、スピードを維持して2着でフィニッシュし、11秒35という好タイムで準決勝進出を決めた。
日本女子の100m準決勝進出は世界陸上では初、五輪も含めると1932年ロサンゼルス大会での渡辺すみ子選手以来の快挙。79年間、閉ざされていた重い扉を福島がついにこじ開けた瞬間だった。レース後、不安そうな表情を見せていた福島は、順位を確認すると両手を突き上げ、満面の笑みで喜びを爆発させた。観客も日の丸や横断幕を掲げ、この歴史的快挙を祝った。
夢の準決勝 世界の壁とさらなる高みへ
迎えた準決勝には、予選同組1位のバプティステに加え、自己ベスト10秒77のイベット・ラロヴァ(ブルガリア)、当時世界ランキング1位で世界歴代4位(現在)の10秒64を持つ、優勝候補筆頭のカルメリタ・ジーター(アメリカ)など世界のトップスプリンターたちが顔を揃えた。
福島は一番外側の8レーン。名前をコールされ、緊張した面持ちで右手を挙げ軽くジャンプした。世界のベスト24に入った福島にとってまさに夢の舞台が始まった。
スタートは良い飛び出しで、30m手前まではトップとほぼ遜色なく走った。しかし徐々に差を広げられ、中盤から隣を走るアナ・クラウディア・シルバ(ブラジル)と併走するも最後は競り負け8着でのフィニッシュとなった。
観客席に向かって頭を下げる福島。この組の全ての選手が福島のシーズンベスト・自己ベストを上回るタイムを持っていた。結果は最下位だったが、福島が世界陸上の準決勝という夢舞台に立ったのは確かだった。
「ちょっとガックシ」悔しさを力に変え、前へ
「これが今の精一杯なのかもしれないんですけど、もっともっといけるはずだったので、ちょっとガックシしています。今終わった段階でガックシしたところと、ワクワクだったり、今後の楽しみっていうのも多少あるかなというのはあります」
レース後、福島は「ガックシ」という言葉を重ね、おっとりとした口調の中に悔しさを滲ませた。
福島はこの大会の200mでも日本選手初となる準決勝進出、2015年北京大会の100mでは着順で準決勝に駒を進めるなど、日本女子短距離界のトップを走り続けた。2016年に日本選手権の100mで7連覇を成し遂げてからも「達成感を味わったことがない」と語るほどストイックなアスリートだった。
8連覇を逃した後に故郷の北海道を離れて企業チームへ所属を変え、後に男子100m日本記録保持者となる山縣亮太と練習を共にしフォームの改善に取り組むなど必死に再起を図った。しかし脚のけいれんやアキレス腱痛など度重なる怪我に苦しみ、2018年の日本選手権200m優勝を最後に再び頂点に返り咲くことは叶わなかった。
現在は、順天堂大学スポーツ健康科学部の特任助教として同大学の陸上部でコーチを務めながら、TBSで開催されたランニング教室に3年連続で出演するなど陸上ファンの裾野を広げる活動も積極的に行っている。福島が自ら更新し続けた2つの日本記録100m11秒21(2010年)、200m22秒88(2016年)はいまだ破られていない。
■福島千里
1988年6月27日生まれ、北海道出身。
100m(2010年4月)、200m(2016年6月)の日本記録保持者。日本選手権100m、200mでそれぞれ8回優勝。五輪3大会連続(2008北京、2012ロンドン、2016リオ)出場。アジア大会に3大会連続(10広州、14仁川、18ジャカルタ)出場し、広州大会では日本人初の100m・200m2冠達成。世界陸上は09年ベルリン大会から15年北京大会まで4大会連続出場し、11年テグ大会で日本女子初の100m準決勝進出。
東京2025世界陸上 女子100m「この選手に注目!」
◆S-A.フレイザープライス(38、ジャマイカ)10秒60
09、13、15、19、22年世界陸上・金
08年・12年五輪・金
◆シャカリ・リチャードソン(25、アメリカ)10秒65
23年世界陸上・金 ※ワイルドカード
◆シェリカ・ジャクソン(30、ジャマイカ)10秒65
22、23年世界陸上・銀
◆ジュリアン・アルフレッド(24、セントルシア)10秒72
24年パリ五輪・金
※東京世界陸上への出場は未確定です。
※名前の後ろは自己ベスト
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