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“高台”か“屋上”か…宮城県山元町の中浜小学校に「巨大津波」90人の命を救った“ある決断”

国内
2025-03-11 22:31

児童が学校にいる最中に襲ってきた巨大津波。宮城・山元町の中浜小学校にいた児童90人は全員無事でした。なぜ、みなさんの命が助かったのか、そこには「避難マニュアル」に捉われない現場の判断・決断がありました。


【写真で見る】「今からあれに飲み込まれてしまうんだ」校舎の2階天井まで達した巨大津波


児童らを救った「垂直避難」 迫る校長の決断

記者
「冠水している地域が、激しく見てとれるようになってきました」


海沿いにあった小さな町に、14年前、津波が押し寄せました。


かつて、小学校の周りには緑があふれていましたが、見る影もなくなりました。


海からわずか400メートル。当時、巨大な津波は校舎の2階天井まで達しました。


これは震災直後の様子です。木材や流木が流れ着き、天井も大きく壊れています。児童ら90人は、どのようにして「いのち」を救われたのでしょうか?


被災した児童のひとり、千尋真璃亜さん。当時、小学3年生でした。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「(Q.地震が起きた瞬間は、何を記憶されていますか?)今まで経験したことのない揺れ。机を押さえながら潜っているんですけど、机ごと動いてしまって。もう、早く収まってという、その一心で揺れを耐えていた」


このとき、校庭でも多くの子どもたちが遊んでいました。

地震から、わずか3分後。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「はじめ、津波警報が出ていて、5メートル、6メートルぐらいと言われていたのが、10メートル以上の大津波警報に切り替わって、その5分後くらいには停電してしまって、情報も得ることができなくなっていたので」


巨大津波の到達予想時刻は、10分後。無我夢中で屋上に避難し、目にしたのは「豹変した海」の姿でした。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「黒い壁のようなものが防潮林の隙間から上がってきているのが見えて、それを見て初めて、『これが津波なんだ』という風に」


海の町で育った千尋さん。「津波」を知らないわけではありませんでした。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「『津波』という言葉は知っていたんですけど、普段のこの穏やかな海の様子しか私は知らなかったので。今からあれに飲み込まれてしまうんだって、ここで命を落とすんだって、正直、思ってました」


屋上ぎりぎりにまで迫った津波。それでも、児童ら90人の命が救われました。そこには…


中浜小学校 井上剛 元校長
「ギリギリの判断です。もう、ここにはいられないということでした」


当時の先生らが葛藤しながら下した、ある決断がありました。


小道具・毛布そのまま…倉庫に避難“2人で毛布を”

これは震災前の中浜小学校の避難ルートです。本来は、歩いて20分かかる、坂元中学校を目指すべきでした。しかし…


中浜小学校 井上剛 元校長
「10分後に、ここに津波が来るということが言われていまして。津波って、突然来て、あっという間に襲ってくるので、垂直避難しかないと判断」


井上さんが懸念したのは、避難場所へ向かう途中に津波に飲み込まれるリスクです。


中浜小学校 井上剛 元校長
「時間があれば内陸に行く。ただし、後ろから(津波に)追われるリスクと、それを天秤にかけなきゃならない」


内陸の高台に逃げるか、屋上に逃げるか。結果、“避難マニュアル”にはなかった垂直避難を決断しました。


中浜小学校 井上剛 元校長
「助かったとしても、これが『正解だったか』ということは、なかなか分からない。ですから、また同じ事が起きたら、また悩むんだと思います」


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「この辺だったような記憶があります。児童は2~3人で、毛布を分け合いながら。この毛布があったお陰で少し寒さをしのげたのかなと」


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「(Q.津波が来ているときの音とかは?)地鳴りのような、『ごー』というのが、ずっと続いてる。(先生が)津波が来ると言ったときは、鉄骨の柱の上に上がれって言われて。(Q.ちょっとでも高いところに?)少しでも高いところにということだと思うんですけど。ここまで来ないでくれって思いながら、みんなでへばりついてしのいでました」


助けが来たのは、一夜明けた翌朝でした。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「朝までここで頑張ったんだなと、そこで安心しました」


つながった「いのち」。だからこそ伝えたいことがあります。


当時この場所で被災 千尋真璃亜さん(23)
「あの時の記憶は忘れられないもので、辛くなる部分はやっぱりまだあって。こういう経験をした身として、次は守る側になれるようにと常に思っています」


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