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出産の自己負担“無償化”へ どこまで“標準的出産”に含まれる? 保険適用で“分べん中止検討”の施設が半数以上に…【Nスタ解説】

国内
2025-05-15 20:40

東京で出産する際にかかる費用は平均「62万5000円」と、ここ5年間で8万円ほど高騰しています。増え続けている妊婦の負担を軽減するため、政府は出産費用を無償化する方針を決めましたが、課題もあるようです。


【写真を見る】「お祝い膳」に「エステ」…どこまでが“標準的出産”に?


出産費用の自己負担“無償化”へ 具体的な方法は?

井上貴博キャスター:
これまで出産は“病気ではない”という考え方から、保険適用外の自由診療となっていました。その代わりに、出産育児一時金として50万円が設定されていました。


TBS報道局 社会部 岡村仁美記者:
出産育児一時金は1994年に導入され、出産費用の高騰とともに段階的に引き上げられてきました。


しかし、病院側も少子化で分べん数が減少していることや、物価高や人件費高騰の背景もあり、一時金を引き上げると出産費用も引き上がるという、いわゆる“いたちごっこ”が続いてきました。


2023年4月、一時金が現在の50万円に引き上げられましたが、その翌年の2024年度上半期の出産費用は約51.8万円で、一時金をすでに上回っています。


全国で行われた出産の約45%が、一時金を上回っているという状況にあります。


また出産費用については、地域によって金額のバラつきがあるといった課題もあります。


2023年度の正常分べんの出産費用の平均(厚労省資料より)は、最も高い東京では62万5372円、最も低い熊本では38万8796円と20万円以上もの差があります。


井上キャスター:
海外を見てみると、アメリカなどでは出産費用は約200万円ほどかかり大変高いですが、他のG7各国を見てみると、基本的に自己負担はゼロになっています。


日本もぜひとは思いますが、どんなかたちで自己負担をゼロにしていくのでしょうか。


TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
少子化対策で出産費用の面倒を見ることは当然のことになりますが、それにあたって色々な問題が起きています。高額の出産場所を選べる人と選べない人、大都会と地方といった格差の問題をどのように解消していくのかとリンクしてきていると思います。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
こうした状況を受け、妊婦の負担を軽減しようと議論が行われてきました。


14日の厚労省の検討会では、「標準的な出産費用の自己負担の無償化に向けて、具体的な制度設計を進める」という方針が決まりました。


具体的な方法としては、保険適用や出産育児一時金の増額などが考えられます。


保険適用で“分べん中止検討”の施設が半数以上に…

TBS報道局 社会部 岡村記者:
政府はすでに、2023年の段階で保険適用の導入を含めて出産に関する支援を強化することを閣議決定しています。保険適用により全国一律の料金を決めることで、出産費用の上昇に歯止めをかけたいといった思いがありました。


しかし、保険適用には慎重な意見も多くあります。


分べんを扱う診療所の4割が赤字経営という状況もあり、保険適用により自由に費用を設定することができなくなると、さらに経営が悪化するという懸念もあります。


日本産婦人科医会の調査によると、保険適用となった場合には、分べんの取り扱いをやめるという施設が4.9%、制度の内容によっては中止を考えるという施設が53.5%と半分を超えています。


「松田母子クリニック」の松田秀雄院長によると、「値上げが出来なくなると、今のような質の高いケアが維持できなくなる可能性がある」と保険適用には慎重な立場をとっています。


また厚労省幹部からは、「地方の産院が立ち行かなくなる。普通の医療と全く同じにするのは現実的には難しい」といった声も聞かれています。


井上キャスター:
出産対応は24時間体制にもなりますからね。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
分べん数が減少しても、人件費を減らすことはできないという状況もあります。


産前・出産・産後…どこまで“標準的出産”に?

井上キャスター:
無償化されることはとても良いことだと思いますが、それはどこまでが“標準的出産”に含まれる範囲なのでしょうか。実際に退院してから「こんなに費用がかかっていたんだ」とびっくりしたという話はよく聞きます。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
出産してみないと、その費用がどのぐらいかかるのかわからないという部分もあり、入院日数が増えれば、それだけ費用も増えることになります。出産における、分べんや新生児の管理保育はもちろん標準的な費用に含まれると思います。


しかし、お祝い膳やエステといったものが入院料に含まれている場合もあります。これらは標準的な費用ではないとする考え方になるのではないかと思います。


井上キャスター:
産前でいうと、妊婦検診や出生前診断、出産準備品など、どこまでを標準的な費用に含めるのかということですね。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
妊婦健診も自治体によって補助のバラつきがありますので、その差を可視化したうえで、基本的な部分は無償化していくという方針です。


出水麻衣キャスター:
出産はもちろん、そのあとの子育てにもお金がかかることから「出産を少し躊躇する」という声は私の周りでも聞きます。出産という行為だけでも不安になるので、金銭的な不安だけでもせめて取り払ってあげたいと思います。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
早ければ2026年度にも開始するよう制度設計を進めていくということですが、なかなか難しい部分もあると思います。


井上キャスター:
どこまで無償化するのかということはもちろんですが、何にいくらかかるのかという部分の透明化も同時に図ってほしいと思います。


TBS報道局 社会部 岡村記者:
自由診療ということもあり不透明な部分が多いので、基本的な部分を無償化した上で、それ以外の部分は、出産する側がかかる費用もわかった上で、選択できることが大事だと思います。


井上キャスター:
そして少子化を本当に止めたいのならば、出産だけではなく、女性が長く働きやすくするためにはどうするのか、休みやすくするためにはどうするのか、並行して考えていく必要がありますよね。


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〈プロフィール〉
岡村仁美 記者
TBS報道局社会部
厚生労働省・こども家庭庁担当

星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年


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