「コメは買ったことがない」。この発言により江藤農水大臣が21日、辞任しました。続投の意志を示していた20日から一転しての辞任表明、事実上の更迭です。一体何があったのでしょうか?
【写真を見る】問題が発覚した日、進退を問われ「進退?」と眉をひそめた江藤農水大臣
江藤農水大臣が続投一転“更迭” 3日間で態度・発言に違い
高柳光希キャスター:
「コメは買ったことがない」という発言を巡る江藤農水大臣の進退について、19日から振り返っていきます。
▼19日
江藤農水大臣が発言を全面的に撤回し、謝罪しました。このときには石破総理も更迭しない考えを示していました。
▼20日
江藤農水大臣は備蓄米放出を決断した大臣として「責任を取るところまでやらせていただきたい」と、まだ継続の意思を示しています。石破総理も続投させる意向でした。
▼21日
江藤農水大臣は辞表を提出し、事実上の更迭となりました。
19日から21日にかけて180度意見が変わりましたが、この背景には何があったのでしょうか。
TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
江藤農水大臣から事態の“深刻さ”を感じられず、不信感が官邸の中に渦巻いたということがありました。
問題が発覚してからの石破総理と江藤農水大臣の発言を見ていきたいと思います。
▼19日に問題が発覚した直後の江藤農水大臣
――責任の取り方として進退についてはどのようにお考えでしょうか?
「進退?」
――責任の取り方は?
「責任の取り方?」
▼19日の夕方
石破総理
「任命権者として大変申し訳ないことだと私自身、深くお詫びを申し上げます」
▼20日(2人が会談して石破総理が江藤大臣に厳しく注意した翌日)
江藤農水大臣
「言い訳はしたくないんですが、(地元の)宮崎は物をたくさんいただくと、『売るほどある』とよく言うんですよ。ですから、宮崎弁的な言い方でもあったんですけれども」
高柳光希キャスター:
この3日間で江藤農水大臣のスタンスもかなり変わった感じがします。
料理研究家 浜内千波さん:
妻に叱られたり、ウケを狙ったりなどは言語道断ですよね。一国の大臣がそんなウケを狙って通用するのかとなると、それは即退場になって良いのではないでしょうか。
これだけ国がコメ問題で真剣に戦っているのに、謝ることだけで1日延びている。国の税金で皆さんが頑張っているのに、そういうくだらないことで退場しないといけなくなるぐらい、言葉はとても大事だと思います。
コメの問題の早期解決のために“続投”判断も…続く追及は政権に打撃
井上貴博キャスター:
江藤農水大臣は話せば話すほどボロが出るという感じで、追い込まれた形だと思いますが、石破総理は任命権者としてもう少し早い判断で辞めさせることもできたと思います。今回の判断は遅かったのか、はたまたこのくらいは仕方ないのか、感覚としてはどちらですか。
岩田 政治部長:
問題が起きたときに、すぐ対応するのは大事なやり方です。過去の政権でも、そういった対応が非常に大事だったことがあります。
ただ、石破総理としてはこれだけコメの問題が続いていて、何とか早く値段を下げる対応をしたいという中で、ここで大臣を変えることになると今やろうとしていることが一旦途切れてしまい、時間もかかってしまう。
それを避けたいので最初は続投させたいと判断したけれども、不信感が広がる中で、野党側から大臣の不信任案を出す動きも出てきて、これはもう持たないというところでの判断になったということですね。
出口麻衣キャスター:
20日のどのタイミングで、何をきっかけに態度が180度変わったのでしょうか。
岩田 政治部長:
1つは不信任案を出す動きが野党からあったのが20日の午後。20日の夜のうちに最終的には決めなきゃいけない。21日は党首討論もありましたから、いつまでもこの問題を追及されるのは非常に政権にとって厳しい状況になりますので、20日の夜のうちに判断をして21日に事態が動いたということです。
浜内さん:
我々は1年くらい前から「新米が出たら安定しますよ」「備蓄米が出たら値段が下がりますよ」というところから私たちは口にしませんでしたけれども、「不信感」を持っていたのは事実なのではないでしょうか。
皆さん我慢をしていて、ここに来て驚くような発言をされて、一気にここで爆発したのだと思います。
だから本当の情報を我々は知りたい、それにどう対処していくかということを我々も考えないといけませんが、安易な発言は控えていただければと思います。
「“コメ担当大臣”として…」小泉進次郎氏で就任で国民の信頼は回復するか
高柳キャスター:
そして、江藤大臣の後任となったのが小泉進次郎氏です。
21日小泉氏は、「“コメ担当大臣”という思いで集中して取り組んでいきたい」と話していました。
小泉氏といえば、2015年に自民党の農林部会長に就任し、農協改革に着手していた過去もあります。やはり、こういった経験が農水大臣に起用された理由になるのでしょうか。
岩田 政治部長:
小泉次期農水大臣についてですが、今はコメの価格をめぐり国民の信頼がかなり地に落ちています。この信頼をどう回復するのかということが非常に大きなテーマとなっています。
スーパーにずっとコメがなくなってしまってどうしよう。秋になったら新米が出るから何とかなるんじゃないか。でも値段が高い。値段が高いのは備蓄米が出たらもう少し何とかなるから、もう少し我慢しよう。
このコメ問題は2024年の夏から、ずっと国民は期待と我慢をし続けてきて今の状況ですから、国民への信頼をどう回復するのかというのが、石破総理が小泉次期農水大臣に期待しているところですね。
井上キャスター:
大臣を変えたとて、お米が安くなるわけではありません。備蓄米を放出するだけでは駄目だということもわかった中で、石破総理が21日の党首討論でも「コメ5キロ3000円台でなければならない」と発言しましたが、どこまでのことにメスを入れられるのか。
小泉次期農水大臣として、その入札制度を変えるのか。ルールを変えるのか。どんなことが想定されますか。
岩田 政治部長:
石破総理と小泉次期農水大臣は似たような考えや問題意識を持っています。
石破総理は21日、「一時的な現象ではなく、構造的なものではないか。根本的に変えていくことが私の責任」と、根本的な問題を直さないと変わらないのではないか。また起きるのではないかと発言しました。
小泉次期農水大臣も「今この局面で大事なことは、組織・団体に忖度をしない。判断をすること」と発言し、本当になぜ価格が下がらないのかということを、根本的なところから考えなければいけない。
それをちゃんと国民に説明しなければいけない、そういう問題意識を2人は持っています。調査も含め、その説明をしっかりできるのか、そこが問われてくると思います。
井上キャスター:
農業票が強い自民党にそれができるのかということになりますね。
浜内さん:
確かな情報を定例報告などをしていただければ、安い・安くないよりも私たちは信頼をしたいなと期待をしています。
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<プロフィール>
岩田夏弥
TBS報道局 政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当
浜内千波
食品企業のコンサルをしながら40年以上料理教室を主宰
日々役立つ家庭料理を中心に伝えている
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