E START

E START トップページ > 国内 > ニュース > 東京大学の女子学生たちがまとめた「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」

東京大学の女子学生たちがまとめた「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」

国内
2025-06-03 11:28

大学進学に存在する「男女格差」「地方格差」

今年2月に発表された「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」。サブタイトルに「平等な学びの機会確保のために」とあるように、進学の意思決定をする際に、学生を取り巻く環境に於いて、男女など性別の固定観念や偏見が与える影響について、データを基に解説した「白書」です。


【写真を見る】東京大学の女子学生たちがまとめた「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」


まとめたのは、NPO法人の「#YourChoiceProject」です。


NPO法人 #YourChoiceProject 代表・古賀晶子さん
「私たちの団体は、始まったのが3年半前の2021年11月で、最初は東京大学の学生を中心とした学生団体として始まりました。創設者の2人が、地方出身の女子学生だったこともあり、身近でそうした地方の女子学生の進路選択が少し偏っていたりだとか、選択肢が狭くなってしまっていたりとかの現状を見ていたからこそ、何かこの課題に対して、解決のために働きかけたいというところで始めてみたのが、出発点になりました」


「#YourChoiceProject」の創設者の2人は静岡県と兵庫県の出身です。東大に於ける女子学生の割合が2割程度に止まり、また自分たちの地元で女子生徒が、他県の難関大学を受験しなかったり、浪人しなかったりという傾向があるということに疑問を抱いて、団体の活動をはじめしました。NPO法人になったのは2024年の春です。


周囲の男子学生などからは、「そんなこと今でもあるのか?」「自分の周囲だけを見ている」などと指摘や非難などされることが多く、それならばと、2023年春に全国27校の高校生3716人を対象にした調査を実施しました。全国から集まったデータを「首都圏男子」「首都圏女子」「地方男子」「地方女子」に分けて比較したということです。


「偏差値の高い大学に行くことは自分の目指す将来にとって有利だと思うか?」という設問では、1から5までの段階で尋ねてみると、「首都圏男子」「地方男子」が平均で4.4前後、「首都圏女子」も4.3を超えた一方で、「地方女子」は4.2台にとどまりました。


また志望校を選ぶ際に、「偏差値の高さ」と「合格しやすさ」では、「合格しやすさ」を重視する人の割合が、「地方女子」では50.8%となっています。「首都圏男子」の24.9%などとは、大きな差があることが明らかになりました。


NPO法人 #YourChoiceProject 代表・古賀晶子さん
「私たちの調査の中でも、まず地方の女子学生ほど、自己評価を低く見積もってしまうというのが出ていて。これは客観的な学力帯が同じであっても、例えば東京大学に行けると思うかといったら、その評価に差が出てきてしまうというものがあります。そしてまたひとつ、その自己評価っていうのが、ロールモデルが多いほど、高くなりがち、というのがあって。ロールモデルが居ないと、やはり自分なんか行けないんじゃないかみたいに思ってしまう問題があります。例えば東京大学というところを見た時に、地方女子学生の割合が7%~9%ぐらいを毎年行き来しているということがあって、地方でなかなか特に女子学生の東大生のロールモデルって見られないんですね」


保護者の意識も、女子学生の進学に影響を及ぼしていた

「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」はこうした調査に加えて、文部科学省の調査や、ベネッセコーポレーションと「#YourChoiceProject」が共同で行った保護者へのアンケート調査等も活用しています。


そうした中で、実は保護者の意識も、地方女子学生の現状に大きな影響を及ぼしていることがわかります。息子と娘では、親からの大学進学への期待が違ったり、娘の方が地元に残ることを望まれたりします。息子の進学塾にはお金を掛けても、娘だと「あなたにそれは必要ない」などと言われてしまったりすることもあるそうです。


31頁に及ぶ「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」では、女子学生の進学に対し、様々な視点から“ジェンダーギャップ”が生じていることを詳らかにしています。受験と生理期間が重なることで特有の体調不良や精神的な負担が生じやすくなる問題や、全国35道府県が東京近郊に設置して、出身の学生に安価な住居を提供する「県人寮」に関しても、男子と女子では受け入れ状況に差がある現状なども提示しています。


この「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」は2月の発表後、多くの自治体や教育機関などから問い合わせがあったということです。また「#YourChoiceProject」の側からは、各地の教育委員会などに送付しており、これまでは当事者しか認識しにくかった“ジェンダーギャップ”解消の政策を考えるためや、社会の意識を変えるための議論の土台にしてもらえればよいなと考えています。


各大学へ広がる「#YourChoiceProject」の取組み

一方で今は東大以外の大学生も居て、男子学生も活動に参加しているという「#YourChoiceProject」では、 地方の女子学生の進路の幅を広げるために、こんな活動をしていると、古賀代表は語ります。


NPO法人 #YourChoiceProject 代表・古賀晶子さん
「地方女子高校生向けのオンラインでのメンタリングコミュニティを運営しております。こちらは高校2年生と3年生の2年間、長期的に伴走するコミュニティとなっておりまして、主にやっていることとしては、一つは月に1回のオンラインでのメンタリング。学習計画を一緒に考えたり、進路計画のサポートをしたりしています。もう一つが、同じような志を持つ高校生同士の交流の場を提供するということ。あと最後に進学だけでなく、キャリアの選択肢も地方だと偏りがちなので、様々なキャリアに進まれた女性の話を聞く機会なども提供しています」


地方に暮らす女子学生が、このようなサポートを必要としていることを、もっと広く知って欲しいと思います。


※「大学進学におけるジェンダーギャップ白書」は、「#YourChoiceProject」のホームページからダウンロードできます。


(TBSラジオ「人権TODAY」担当:松崎まこと(放送作家/映画活動家))


エアコン「1℃下げる」OR「風量を強にする」どっちが節電?誤解の多いエアコン節約術【ひるおび】
スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

ページの先頭へ