7月1日で、能登半島地震から1年半がたちました。友だちと離れた人、暮らしに悩む人、なりわいを取り戻したい人…。被災地のいまを、お伝えします。
能登半島地震から1年半 4市町で人口1割以上減少
あの日から、2度目の夏を迎えます。
大きな火災があった石川県輪島市の朝市。焼けた瓦礫が無くなってはいますが...
小西達雄さん
「(まだ解体しているし)何も変わっていないですよ」
朝市で輪島塗を売っていた、小西達雄さん(72)。店を再び始めるための補助金の申請が「複雑でわかりにくい」とこぼします。
小西達雄さん
「簡単に申請できるようにすれば、もっとみんな輪島に残りますよ。制度も簡単に手早く復興できるようにやってほしい」
和菓子店を営む女性(56)
「いろいろ遅いなという気持ちがありますね。地元の方が減っているのは体感でわかりますね。この状態なら致し方ないかなと」
能登にある輪島市、穴水町、珠洲市、能登町の4つの市と町では、人口が1割以上減少。過疎化に地震が追い打ちとなっています。
輪島市民(39)
「出て行った友人もいっぱいいるので、若い人が残れるのかという不安がある」
さらに、2024年9月のような豪雨が再び起きないか、心配も募ります。
輪島市民(46)
「雨が降るたびに思い出すので、怖いですね。ちょっとした雨でもトラウマになっている部分があるので」
物価高の波は、能登の人にも押し寄せています。
仮設住宅で生活している男性(70)
「コメを買うにしても、何を買うにしても、物価が高いから生活できない」
仮設住宅で生活している男性(68)
「地震で腰を痛めたから仕事が出来ない。(Q.何のお仕事?)建設業。だから、今は地震の前の貯蓄を崩して暮らしていくだけ」
幼い子どもを育てるお母さんは…
4歳と5歳の母親(34)
「遊び場もあるにはあるけど、横を見たら工事車両とか仮設住宅という状態なので、さみしいような、何とも言えない気持ちですね。今は家族で家があるので、輪島で生活して仕事は続けられているけど、子どもの将来のことが不安。選択肢が少なくなるのが不安ですね」
お店と自宅全壊 「この先家族をどう養えばいいのか」
輪島市で料亭「のと吉」を営んでいた、坂口竜吉さん(48)。
お店と住まいは、地震で全壊しました。2024年の夏ごろ、ようやく解体が始まり、更地になりました。
1年前に取材した際は、避難所の食事を作っていましたが、今は、復興に携わる作業員に腕をふるっています。でも、作業員たちは輪島を離れるため、この日が最後となりました。
坂口竜吉さん
「料理しているときが一番気持ちが安定しますね」
本来なら、今ごろ仮設の店舗をオープンできるはずでしたが、その通りには進みませんでした。
坂口竜吉さん
「自分のなりわいが整わないと、精神的にも不安定になりますし、この先どう家族を養えばいいのか自問自答する時間が去年に比べて各段に増えて、自問したところで、うまくいくかいかないかわからない」
妻や3人の子どもは金沢で暮らしているため、いまは離れ離れ。子どもたちの心も少し変わり始めたようです。
坂口竜吉さん
「長男・次男が『金沢がいい』と。『輪島に今は戻らなくてもいい』って、今年に入ってハッキリ言うようになった。環境に適応しているのは嬉しいことではあるし、さみしい部分もあったり。二拠点生活もいろいろ大変なので、できるうちは馬車馬のように働いて」
仕事が終わるころ、家族が姿を見せました。妻のしほさん(42)は毎週末、2時間近く車を走らせ、子どもたちと一緒に会いに来ます。
坂口さんの妻・しほさん
「この距離がもどかしいというか。お父さんと一緒にいたいけど、子どもたちのことを考えると、金沢がいいなと思ってしまう。答えが全然でない」
坂口さんとしほさんは、迷いながらも一歩一歩、進んでいます。
坂口竜吉さん
「家族は各々の道を進んでも、帰ってくる場所があれば帰ってきてくれると思いますし、何としてでも輪島でお店を再開して、家族が笑顔で過ごせる時間が増えてきたらいいなと」
地震から1年半 今一番必要なことは「経済的な復興」
Nスタデスク 柏木理沙 記者:
私は地震が起きてから1週間後に初めて被災地に入り、その後、定期的に取材をさせていただいています。1年半経って今一番必要なことは、「経済的な復興」ではないかと思いました。
地震が起きて1年経つまでは、皆さん「住まいはどうするか」など、本当に目まぐるしく駆け抜けていましたが、1年半経って、少し長期的なことを考え始めたように思います。そのときに経済的に循環していく構造がないと、家族を支えていけない、暮らしていけないということが、今大きな課題だと思いました。
今、色々な場所で災害が起きていますが、能登の現状を知るということは、どのエリアに住んでいる人にとっても重要なことだと思います。
今回は輪島市で取材をさせていただきましたが、珠洲市の方からは「珠洲市にもぜひ来て、現状を伝えてください」というような言葉もいただきました。
井上貴博キャスター:
発災当時、被災地の皆さんは生きていくことに必死でしたが、今は現実と向き合っていらっしゃると思います。
2週間ほど前、珠洲市で書店を営んでいる女性から「ようやく自宅のお風呂が完成した」と連絡が来ました。その一方で、「災害公営住宅の予定地がまだ決まらず、無力感がある」とも話していました。
パナソニック社外取締役 ハロルド・ジョージ・メイ:
経済的な復興の形についてコメントしたいと思います。
日本の場合は、災害が起きるとまず復興に走ります。それは当たり前ですが、その後どうするかということが大事。助成金や補助金で復興支援することもわかりますが、海外の場合はそれに加えて、税制を整えています。新しい投資がその地域にまた行くように、法人税を一時的に下げたり、「このぐらいの金額を投資すれば、こうしますよ」といった税制も行ったりしないと、経済的な復興というのはなかなか難しいのではないかと思います。
出水麻衣キャスター:
政府は防災庁を設置することも考えています。防災庁の役割は、そこに対して「大きな寄与になる」と期待する声は聞かれましたか?
Nスタデスク 柏木 記者:
発災当初は、避難所のことなどで大変な状況だったので、そういったものが改善されるということはとても期待していると思います。
一方で、今回取材をしていて、被災をしている状況が今後も長く続いていくものと感じたので、そういったものに寄り添っていける公的な機関があるといいな、という声も聞かれました。
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〈プロフィール〉
柏木理沙
Nスタ デスク
能登半島地震発生時から現場を取材
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック・アース製薬の社外取締役など
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