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都市部で常態化する『火葬待ち』、遺族に負担ある一方で「むしろ良かった」の声も…葬儀会社が明かす“火葬待機”の実態

国内
2025-07-02 09:10
都市部で常態化する『火葬待ち』、遺族に負担ある一方で「むしろ良かった」の声も…葬儀会社が明かす“火葬待機”の実態
長い時には10日間待機することもあるという「火葬待ち」。その実態は…
 高齢化に伴う死亡者数の増加により、今、都市部を中心に問題となっているのが「火葬待ち」だ。かつては死去から2~3日後に行われていた火葬が4~5日待つのは当たり前、中には6日~10日間など長期間の待機を余儀なくされるケースもでてきている。遺族にとって心理的・金銭的に大きな負担となりうる火葬待ち。その現状と業界の取り組みについて葬儀会社に話を聞いた。

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■今後15年間でさらに深刻化する「火葬待ち」、遺族にかかる負担とは

 ご遺体を葬るために行われる火葬。日本には自治体が運営する公営火葬場と、民間企業が運営する民間火葬場があるが、今、人口の多い都市部を中心に、それら火葬場がひっ迫し、「火葬待ち」が常態化している。

 一都三県で年間2500件以上の葬儀を担うむすびす株式会社によると、東京では郊外の南多摩斎場や瑞穂斎場、神奈川県では横浜市や川崎市や相模原市、千葉県では千葉市や柏市、埼玉県ではさいたま市や所沢市などが比較的待ちが長くなっている状況という。

「4~5日は当たり前で、熱中症やヒートショックなどお亡くなりになる方が増える夏季や冬季、火葬場が休業となる年末年始は1週間くらい待つケースも多くなっています」(むすびす株式会社 葬祭営業部部長・出井翔一朗さん/以下同)

「火葬待ち」は一部エリアで10年ほど前から見られたというが、その一番の理由は、年間死亡者の増加だ。厚生労働省の調べによると、昨年の死亡者数は前年より約3万人増の160万5298人。2003年に100万人を超えてからは年々増加傾向が続き、昨年は過去最多を記録した(※)。

 同省では2040年には年間死亡者が約168万人とピークに達すると推測している。つまり、今後「火葬待ち」はますます深刻化が進み、多くの遺族が直面する問題となる。では「火葬待ち」となったとき、遺族にはどんなことが待ち受けるのか。それは、心理的な負担と金銭的な負担だ。

「多くの方は、なるべく早くお葬式をして、故人を送ってさしあげたいと考えられます。それなのに火葬待ちとなり、なかなか葬儀ができないとなると、遺族にとっては大切な方を亡くした悲しみに加え、お気持ちにひと区切りつけるまでの時間がかかってしまい、精神的な負担が増大してしまいます。また、火葬までの日にちが空けば空くほど、ドライアイス等ご遺体の保全のための費用など金銭的な負担も生じることになります」

 近年はマンションなどの集合住宅に住んでいる人が多いため、火葬まで遺体を安置所に預けることを希望する遺族も多いという。自宅以外で安置する場合には預ける施設の費用も日数分かかる。

 遺族に負担を強いる「火葬待ち」。業界ではどのような取り組みが行われているのだろうか。

■時間枠の拡大、自治区外の利用…求められる火葬場の対応

 公営の火葬場では、遺体を火葬炉に納めてから収骨までだいたい約2時間弱を要する。時間的にも火葬炉の数的にも限度があることを考えると、「火葬待ち」の最も有効な解決策は火葬場を増やすことだろう。ところが、火葬場の新設は「考えにくい」という。

「火葬場の新設のためには法規制や用地の確保、近隣の住民からの反対など課題が多く、ひじょうに難しいのが現状です。しかも少子化が進む日本では、新設できたとしても、今後、人口減少によって必要がなくなることは明らかです」 (むすびす株式会社・出井翔一朗さん/以下同)

 出井さんは現実的な解決策は、今ある火葬場の最大利用ではないか、とみている。

「今後、死亡者数が増加傾向となっている間、とくに死亡者数が多い夏季や冬季には、火葬場が対応できる時間枠を一時的に増やすことがまずひとつできる対策かと思います。あともうひとつは、公営の火葬場が居住地域以外の人たちにも火葬炉を広く開放して、共同で使えるようにすることです。自分の住んでいる所の火葬場は待ち状態だけど、隣の地域は空いているということもあります」

 ただし、公営の火葬場の場合、居住地域以外の人は高額な利用料金を払わないと使えない自治体もある。税金を納めていない分、自治区外の住民は料金が加算されるというわけだが、それに対してはこんな考え方もある。

「私どもの管轄の公営の火葬場では、1週間~10日間待って火葬するのと、3日後に自治区外の火葬場で行った場合、日数分の安置料金やご遺体の保全料金と、火葬場に払う料金がトータルで見るとあまり変わらないところもありますので、そういった情報もきちんとお伝えし、お客様に選択していただけるよう対応しています」

 同社では「火葬待ち」を回避したい遺族に具体的な提案をすると同時に、精神的負担に関してもアプローチをしている。

「『火葬まで待たなければいけない』ということだけを切り取ると、ひじょうにネガティブな印象を抱かれると思います。しかし、逆に考えると、時間があるということは、亡くなられた方とお別れまで最後にゆっくり大切な時間がもてることにつながります。家族が集まって、故人のためにこんなものを作ってお葬式の場を飾ろうとか、何を棺に入れてあげようかと話し合ったり、故人について語り合ったりするなど、日数があるからこそできることはたくさんあります」

 火葬待ちの時間は最後に過ごす尊い時間――。肯定的にとらえるサポートをする中で、近年、遺族心理の変化を感じているという。

■「安置施設でなるべく一緒にいたい」最期に寄り添いたい遺族が増加

「最近では、火葬待ちの葬儀の後、『すぐにお葬式をするのではなく、待ちの時間が少しあってむしろ良かった』と言われることも増えてきました」(むすびす株式会社・出井翔一朗さん/以下同)

 また、「仕事の調整がつき葬儀にしっかり向き合えた」「遠く離れた親族も参列できた」などの声も寄せられているという。長く看病し寄り添えていたとしてもお別れは辛いもの。まして突然の他界で、すぐに葬儀となったら、お別れの時間をゆっくり持つことができず、辛い気持ちをより抱えてしまうことになるのは誰しも想像がつくことだろう。

 それを表すように近年は火葬待ちの間「安置施設でなるべく一緒にいたい」と希望する遺族も増えているという。

「直近、コンタクトがとれていなかったとか、家族で一緒に過ごす時間がなかったというような後悔を抱かれるご家族が増えているのかもしれません。安置所に預けっぱなしにするのではなく、付き添いができる施設を希望されたり、なるべく毎日面会に行ける施設を希望される方が昔に比べて増えている印象です」

 火葬場の状況はじめ葬儀に関する諸々は、ことほどさように専門家の情報やアドバイスが重要となる。最後に葬儀社の選び方についてアドバイスをもらった。

「大切な人を亡くし、動揺している中、葬儀社の薦めるままに従われる方は多いと思います。火葬待ちに関しても、実は火葬場の混雑具合ではなく、業者側の都合に合わせて決められてしまうケースも見聞きしています。そんな状況下、まず、皆さんにお伝えしたいのは、慌てずに落ち着いて葬儀社に相談していただきたいということです。そして、その会社の対応に違和感を抱いたらキャンセルすべきです。1回頼んだらキャンセルできないと思っていらっしゃる方も多いですが、すぐであれば基本的にキャンセル料金も発生しません。その時点で発生している費用(ご搬送料金など)の精算だけで済みます。また、そういったトラブルを避けるために、生前、地域の会館を訪問する、インターネットで調べた会社に問い合わせをしてみる等、葬儀社の実態がどうなっているのかや料金体系等を調べ、ご相談しておくことも重要かと思います」

 先に逝く者にとっては遺族のために何ができるか、遺される者にとっては大切な人とのお別れの時間をどう過ごすか。日頃から考えておく必要がありそうだ。

※令和6年(2024)人口動態統計月報年計より

(取材・文/河上いつ子)

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