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聖職者から受けた性虐待を告白 日本でも“聖なる場”で続く訴え 新教皇・レオ14世の対応は?【news23】

国内
2025-07-04 12:50

カトリック教会の新たなトップに選ばれたレオ14世。いま、注目されているのが、世界中で問題となってきた聖職者による性虐待への対応です。日本での被害を教皇にも知ってほしいと訴える女性がいます。


【写真を見る】JNNが独自に入手した、日本カトリック司教協議会の内部資料


救いを求めた教会で…傷ついた信仰と沈黙

「ミサに来ることで、何とか今日一日生き延びようと」


田中時枝さん(64)は長年、カトリックの信仰を心の支えに生きてきました。しかし、その信仰を深く傷つける出来事がありました。


田中さん
「恐怖がつきまとって、生きていていいというふうに思えないような感じでずっと生きてきた」


田中さんは、10代のころ受けた性暴力のトラウマを、誰にも話せないままずっと抱えてきました。その苦しみを言葉にできたのは、約10年前。50代だった当時、通っていた長崎県内の教会で、ある外国人の神父に思いを打ち明けます。


田中さん
「そこで自分がまた癒されていくことを期待していた。望みをかけていた、信仰に」


救いを求めて、頼った教会。ところが、話を聞いた神父は“トラウマの治療”と称し、次第に性的な暴力をふるうようになったといいます。


田中さん
「『僕を信じないのか』『従わないのか』と、聖書にもそういう箇所が出てくる。何かおかしいと思っても、相手が神父様と言われる人だったので、従わざるを得ないみたいな感じにだんだんなっていった」


神父は“神の代理人”。行為がエスカレートしても拒むことはできず、その苦しみを誰にも打ち明けることもできませんでした。


田中さん
「信仰の厚い神父とか、シスターとか、その人たちのために何も言えない。自分を犠牲にして、殉教するんだと。恐怖の牢獄の中に、ガス室の中に生きてるような。深い深い絶望の中で、ただ死ななかっただけ


“聖なる場”で続く訴え…40年以上の沈黙も

同じように声をあげられず、苦しみ続けた女性がいます。鈴木ハルミさんは1977年、宮城県内の教会で、日本人の司祭から性的な暴行を受けたといいます。


鈴木ハルミさん
「神聖な教会の中で、不品行なことをしたみたいに思った。自分を罰するような意識がどんどん出てくるので、『毎日死にたい』というものじゃない。一瞬一瞬、死にたい


ひとり苦しみを抱えてきた年月は、40年以上に及びました。


鈴木さん
「(司祭を)神の代理人と思っているから。誰にも相談できずに苦しんだ。40年というのは煉獄のようだった」


世界中で深刻な問題となってきた、聖職者による性虐待。


その転機となったのは、2002年。アメリカ・ボストンで、130人以上の子どもたちが神父から長年にわたり、性虐待を受けていたことが発覚しました。さらに、教会が長年その事実を隠し続けていたことも明らかに。


前教皇のフランシスコが、世界中の教会に虐待の通報を義務付け、隠蔽を禁じる事態にまで発展しました。しかし日本では、問題が明るみに出た後も、その実態が公になるまでに長い時間がかかりました。


JNNが独自に入手した、日本カトリック司教協議会の内部資料には、未成年者に対する性虐待が、国内でも過去に報告されていたことが記されています。


(日本カトリック司教協議会の内部資料より)
「2002・2012年調査 13件」「2019年調査 8件」


こうした実態を協議会が公表したのは、2020年になってからでした。


田中時枝さんも2018年、ようやくの思いで、神父が所属する修道会に被害を訴えましたが...


田中さん
「報告というのは全くない。本当にそんなことあったと言うことでさえ、あまりにもつらすぎる」


修道会からは心のケアはなく、直接の謝罪もないまま、神父は母国へ帰国したといいます。


田中さん
「2年半ぐらい経ったときに『どうなったんでしょうか』という手紙を書いたら、(神父が)逃亡しましたと書いてあって。絶望しかなかった」


今年5月、カトリック教会に大きな節目が訪れます。前教皇・フランシスコの死去を受け、新たな教皇にレオ14世が選ばれました。


新たな教皇の誕生…性虐待への対応は

被害を受けてから約10年が経ち、田中さんにも変化が訪れます。胸の奥に押し込めてきた思いを、長女に打ち明けました。


田中さん
「1人で抱えていると、夜中に悪夢を見て、眠れない日を何年も続けてきた。自分のために喋らざるを得ない。一番つらいことだった」


長女は、その言葉を静かに受け止めました。


田中さんの長女
「夜に家で1人で泣いているところに遭遇したりだとか。私を思うあまりに隠していたというのは、すごく強く感じて」


その一歩が、長く閉ざされていた心を少しづつ開いていきました。


田中さん
「つらいことも、嬉しいことも、わかちあえばいいんだというふうに娘から学んだ。孤独だったら気づけなかった」


そして、2023年に一つの決断を下しました。


神父が所属していた修道会などを相手取り、損害賠償を求める訴訟を起こしたのです。


田中さん
「声も出せないような、苦しみの中にいる人がいっぱいいる。そういう人たちも一緒に立ち上がることができるように頑張りたい」


これまでの裁判で、修道会側は田中さんの訴えに対し、争う姿勢を示しています。
一方、JNNの取材には「係争中の事案のため、回答は控える」としています。


田中さんは自分の思いを伝えようと、ローマ教皇庁にも手紙を送りました。


新たな教会のトップは、この根深い問題にどう向き合うのか。その声が届く日を祈るような思いで待ち続けています。


田中さん
「最後に残るのは自分の生き方、信仰だけ。新しい教皇も、きっと私の訴えを聞き取ってくれると。どうしても信徒ですから信じたい」


新教皇に託される“決断”…二度と絶望を生まないために

藤森祥平キャスター:
田中さんは大きな迷い、葛藤を抱えながらも、実名で語らないと信じてもらえないという思いがあったそうです。同じように苦しむ人が、少しでも声を上げやすくなるようにしたいということで、初めてカメラの前で語る決意をされました。新たに教皇が代わり、教会側がどのような姿勢で臨むのかということです。


上村彩子キャスター:
どう向き合うのか、ということが問われていますね。中村さんはこの問題、どのようにご覧になっていますか。


教育経済学者 中室牧子さん:
今年5月の教皇選挙の際にも、かなりこの話題が持ち上がりました。特に児童に対する性虐待の問題にきちんと向き合うということで、レオ14世が選ばれた経緯を踏まえると、教会側が主導権を持って調査を行い、透明性のある決断をしていただきたいと思います。


藤森祥平キャスター:
田中さんと同じような深い絶望を生まないために、訴える声を封じてはなりません。


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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」


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