
今回の参議院議員選挙では、参政党が大きく議席を伸ばす結果となりました。
一方、選挙後の会見では、参政党を批判的に報じる記者の取材を拒否しました。
公の政党としての、この対応を問います。
【写真を見る】躍進の参政党 “メディア排除”で問われる政党のあり方【報道特集】
“切り抜き動画”拡散を追い風に 国民民主党の戦略
東京選挙区は全国で最も多い7つの議席が争われ、これまで2議席を守ってきた自民党が、武見氏の1議席を失った。
初めて参政党が1議席、国民民主党が2議席を獲得した。選挙の公示前、番組は国民民主党の戦略の一端を取材していた。
国民民主党 伊藤孝恵 広報委員長
「みなさんこんばんは。YouTuber懇談会にお集まりいただきまして、ありがとうございます」
オンラインで向き合っていたのは、全国のYouTuberたち。2024年の衆院選での躍進に続き、切り抜き動画の拡散を追い風にしようと動いていた。
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「切り抜きポイントみたいなものをですね、共有できればなと思って」
国民民主党は、演説動画を話題ごとにAIで切り出した映像素材を配布。自由に使ってもらうことで、切り抜き動画を量産してもらう戦略だ。
伊藤孝恵 広報委員長
「玉木、兵庫、ガソリンと入れたら、AIが切り取った…」
玉木雄一郎 代表
「そんなことできるの?」
伊藤孝恵 広報委員長
「そんなこと挑戦しているんです」
この効果はどうだったのか。
――実際に効果はありましたか?
玉木雄一郎 代表
「ありました。一番回ったのは、私がハッピーターンを食べてる動画で」
国民民主党のYouTubeより
「私がハッピーターン好きなのバレてしまって、差し入れがハッピーターンばっかりなんだよ」
玉木雄一郎 代表
「もうどうでもいいやつなんですけど、それが広がってた。なんでもいいので一つのきっかけになって関心持ってもらえたらなと」
ただ、切り抜き動画は再生回数に応じて収益を得ることができる為、過激化しやすい傾向にある。
――誹謗中傷であったり、分断を煽るような発信ほど見られるという傾向がありますね。
玉木雄一郎 代表
「命に繋がるような誹謗中傷が継続的に行われるようなケースとか、あとは外国勢力が選挙に介入するケース。原則は自由なんですけど、一定の規制を検討する時期に来ている」
同じくSNSや動画を駆使した参政党については、どう見ていたのか。
玉木雄一郎 代表
「失われた30年。なにかふつふつとして閉塞感が漂っていて、なかなか未来が見えない中で、新しい選択肢、新しい政治的な解決のルートを模索した時に、経済を重視している人、現役世代を重視している人が我々に来て、対外的にもっと厳しくやった方がいいのではないかという人が参政党に行った」
参政党さや氏 得票結果に顕著な傾向も
参政党の「最後の訴え」が行われた公園は、支持者で埋め尽くされた。
今回、東京選挙区で“台風の目”になったのが、約67万票を獲得したさや氏だ。勢いを感じた他の陣営幹部は「批判しづらい空気ができていた」と明かした。
東京選挙区・立候補者の陣営幹部
「参政党の主張を表立って批判すると自分達に攻撃の矢が向く。あえて意図的に触れないようにした。参政党の『さ』の字も口にしていない」
支持を集めた一方、選挙戦では「日本人ファースト」などとした主張に、抗議する人と支持者がにらみ合う場面が度々見られた。
参政党 さや氏
「あちらでプラカードみたいなものを作ってきてくれた皆さん。すごく作るのが大変だったと思う。時間も労力もかけて頂いて。その方たちも豊かになりますから」
聴衆のヤジ
「嘘つきー!」
抗議する人に向けた警告だろうか。選挙戦終盤、さや氏の陣営スタッフは聴衆に向けて、あるプラカードを持つようになった。
公職選挙法の「虚偽事項の公表罪」。
当選させない目的で候補者のウソの情報などを公表する行為は、処罰の対象だと示した。
JNNの出口調査では、さや氏の得票結果に顕著な傾向がみられた。
TBS選挙本部デスク 本杉美樹 記者
「若い世代から現役世代にかけて幅広く、さや氏が浸透した。男性が支持した候補者の中でトップがさや氏。世代別に見ると10代~60代の各世代で、男性はさや氏に投票した人がトップだった」
参議院選の“台風の目”参政党 躍進したワケ
参政党にはどんな人たちが票を投じたのか。
神奈川県内の造園会社で働く48歳の男性。
参政党に投票(48)
「既存の政党が持ってない、日本人ファーストっていうところに、すごく刺さった部分があって」
男性は、いわゆる就職氷河期世代。高校卒業後、正社員になることができず、低賃金の非正規雇用が長く続いたという。
参政党に投票(48)
「30年間ずっと景気が低迷している中で、派遣切りにもあって、使い捨てみたいな感覚があったので」
政治に不信感を持ちながら、選挙には行っていたというが、生活への不満が蓄積していく中、目にとまったのが参政党のYouTubeだった。
参政党に投票(48)
「今まで自民、公明が言ってきた公約は、どれぐらい果たしてきたのか。(参政党ユーチューブの)たくさんのコメントの中に、やっぱりその参政党にかける思いを持ってる人がたくさんいる。同じように苦労している人が、自分の支持している党を応援しているとなると、やっぱり共感して」
躍進した参政党。22日に開いた記者会見で参院選を総括した。
参政党 神谷宗幣 代表
「私の発言、候補者の発言に対する批判がメディアにたくさん載った」
「それによって認知度がより高まって、終盤までいい形で持っていけた」
実はこの会見で、参政党が一部メディアの記者の出席を拒むという異例の事態が起きた。いったい何があったのか。
聴衆からは歓声…参政党当選者の「非国民」発言
参政党の会見取材を拒否されたのは神奈川新聞。参院選公示前の7月1日、紙面でこう宣言していた。
神奈川新聞の紙面(7月1日付)
「特定の政党や候補者にとって有利または不利になる可能性がある内容でも、有権者の政治的選択に資すると判断した場合は事実に基づいて積極的に報じます」
神奈川新聞は参政党が外国人差別を煽る主張をしているとして、選挙期間中、批判的なキャンペーン報道を展開した。
神奈川選挙区で初当選した参政党の初鹿野裕樹氏は――
参政党 初鹿野裕樹 氏
「外国人を優遇して、我々日本人がないがしろにされてるのではないか」
選挙戦最終盤、川崎駅の演説会場で初鹿野氏は後ろで抗議のプラカードを掲げる人たちを、こう呼んだ。
初鹿野氏の演説(7月18日)
「うしろでギャーギャーやってる人いますけど、ああいうのは非国民ですから。非国民」
聴衆からは歓声が起こった。
「非国民」とは戦時中、軍や国策に非協力的な人への非難に使われた言葉。差別や言論統制につながった。
現場にいた神奈川新聞の記者は…。
神奈川新聞 矢部真太 記者
「公共の空間で非国民という言葉を聞いたのが、ヘイトスピーチのデモ以外ない。選挙運動に乗じた形で発言するということの怖さのような感情を持ちました」
「非国民」という言葉を使った理由を、初鹿野氏に問うと――
神奈川新聞 矢部真太 記者(7月18日)
「非国民という言葉の根拠。発した理由をおっしゃってください。初鹿野さん答えられないんですかね」
参政党 初鹿野裕樹 氏
「辞書で調べればわかる」
神奈川新聞 矢部真太 記者
「いやいや違いますよ。『非国民』と言った理由を聞いてるんです」
神奈川新聞 矢部真太 記者
「結局最後までその言葉について説明をしてくれなかった。川崎というのは様々な国籍の方もいます、ヘイトスピーチが吹き荒れている現場でもありました。発言に対する重さは考えないといけない」
「非国民発言」について神谷代表は…。
参政党 神谷宗幣 代表(7月21日)
「非国民という言葉は私はよくないと思いますね。初鹿野さんにお会いしたらしっかりと注意をしたい」
参政党が“メディア排除”?会見で記者の取材を拒否
そして、神奈川新聞記者の会見取材拒否は7月22日(火)に起きた。会見が始まる直前…。
参政党スタッフ
「事前登録してなかったらダメですよ」
神奈川新聞記者
「そんな案内来てません」
「趣味で来てるんじゃない。市民の知る権利に応えるため来てる」
参政党のスタッフは「事前登録していない」という理由で記者に退出するよう求めたが、会見の案内状には事前登録が必要との記載はなかった。
参政党スタッフ
「登録されてないので、決まりがあるのでご退出いただけますか」
神奈川新聞記者
「案内をいただいて取材に来て…(記者は)全員登録してるんですか?」
参政党スタッフ
「してるんじゃないですかね」
神奈川新聞記者
「してないと思いますよ。『してるんじゃないですかね』って適当なこと言わないでください。私だけ登録必要とか滅茶苦茶じゃないですか」
神奈川新聞の記者は近くにいた別のメディアの記者に聞いたが事前登録はしていないという。
神奈川新聞記者
「なんで排除されなきゃいけない」
参政党スタッフ
「こちらで判断できるんです、こういうことは」
神奈川新聞記者
「政党としてありえない」
参政党スタッフ
「ありえるかどうかは、こちらが決めますから」
神奈川新聞記者
「あなたが決めることじゃありません」
参政党スタッフ
「いえいえ、私が決めます」
最後は「警備員を呼ぶ」と言われ、記者は退出せざるを得なかったという。
会見を退出させられた神奈川新聞 石橋学 記者
「さすがに出されるとは思わなかった。質問を当ててくれない可能性はあるなって思ってましたけど『(初鹿野氏が)どうして非国民と呼んだのか』責任を問うつもりでいたので、特定の都合の悪い記者を排除する意図が明らかにあったと思う」
参政党の主張を批判する記事を書いてきた石橋記者。会見場でスタッフと押し問答をしているとき、神谷代表は…。
参政党 神谷宗幣 代表
「石橋さん…かな」
石橋記者を認識していたことがうかがえる。
参政党は7月24日、見解を発表。事前登録の件にはまったく触れず、記者をこう非難した。
参政党の見解(7月24日)
「『しばき隊』と呼ばれる団体と行動を共にし、本党の街頭演説で大声による誹謗中傷などの妨害行為に関与していたことが確認されています。今回の会見でも混乱が生じるおそれがあると判断し、主催者として入場をお断りしました」
これに対し、神奈川新聞は7月25日に「明らかな事実の誤りに基づく指摘で、到底容認できません」としたうえで…
神奈川新聞の声明(7月25日)
「『しばき隊』という団体は存在せず、人々を『暴力的な集団』とみなして攻撃するための『ネットスラング』です。公党が市民に対して使うことに、強い違和感を覚えます」
――また参政党の会見があったら行きますか?
会見を退出させられた神奈川新聞 石橋学 記者
「もちろん行きます。権力の側は『いていい記者』と『いけない記者』を分断して排除していく、権力の暴走というものが既に始まっていると感じている」
ジャーナリズムに詳しい澤康臣教授は、公の政党が記者の会見取材を拒否したことについて…。
早稲田大学 澤康臣 教授
「(政党に)票を入れた人も入れてない人も、権力を委ねて預けて行使をしてもらってる。その人たちが本音でどう考えているのか、表向きの公式映像のような宣伝ではなくて、本音でいろいろ質問されたときにどう対応できるのか。(質問に)うまく答えられないと明らかになる場合もある。それも含めて重要な情報。
権力者が『報道してほしい』『こう報道すべきだ』というものに囲まれて、道を誤って破滅に行こうとしたのが、80年前の日本だった。やや大げさに聞こえるかもしれませんけど、気に入らない情報・角度では報道させない、確実にそっち(戦争)と繋がってます」
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